既存の水力発電所を改造して出力を上げたいとき、費用の何割が補助されるのか。工事等事業の補助率は1/4以内で、発電電力量が5%以上増える計画なら1/3以内です。令和8年度の受付は、2026年9月29日の最終締切で終わりました。
工事等事業に申請できるのは、発電機1台ごとの出力が1,000kW以上で、FITもFIPも受けていない発電所を持つ事業者や自治体です。発電所を壊して建て直す工事は、規模が大きくても対象になりません。
水力発電導入促進支援事業費補助金(既存設備有効活用強化支援事業)の要点まとめ
正式名:水力発電導入促進支援事業費補助金(既存設備有効活用強化支援事業)
だれが
- 申請者
- 事業者(水力発電所を持つ発電事業者・地方公共団体など)
- 対象業種
- 水力発電事業(国内に水力発電所を持つ民間団体等)
- 利用目的
- 既存水力発電所の増出力・増電力量の調査、設備更新・改造、災害復旧
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 公式ページに記載なし(新エネルギー財団へお問い合わせください)
いくら
- 補助上限額
- 上限額の記載なし(公募予算の総額は14億7,435万円)
- 補助率
- 調査2/3以内/工事等1/4以内(5%増で1/3)/復旧1/2以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年4月27日〜2026年9月29日(受付終了)
- 事業の完了
- 2027年3月1日まで(複数年度は原則5年以内)
自分の発電所は対象になるか
次の条件に全部当てはまれば、工事等事業の対象になる見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
次のどれかに当たると、対象外です。
- ✕ 発電所を廃止して新設する
- ✕ 同じ目的の別の補助金を受ける
- ✕ 交付決定の前に発注した工事
補足がいくつかあります。単機1,000kW以上とは、補助の対象にする発電機1台ごとの出力のことです。20年は、運転開始(または対象設備の更新後)から工事の完了時点までの年数で、「原則」と書かれています。FITは固定価格買取制度、FIPは市場価格に一定のプレミアムを上乗せして交付する制度で、事業期間中だけでなく財産処分制限期間中も、どちらの適用も受けられません。逆潮流とは、発電所から系統へ電気が流れることです。
ここを取り違えると申請できません
線引きは次のとおりです。制度の趣旨は、今ある設備の力を引き出して水力の発電量を増やすことなので、増えることが数字で示せない計画と、発電所の新設は外れます。
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 既存設備の更新・改造で出力や電力量を増やす | 既設の発電所を廃止して新設する |
| 技術検討(流れ解析など)で増加分を算出している | 増加分の根拠がない計画 |
| 系統へ送る電力・逆潮流が増える | 増加が自家消費だけで終わる |
| FIT・FIPを受けない | 事業期間中にFIT・FIPの適用を受ける |
| 発電所構内の設備 | 構外の送配電設備、系統連系の費用 |
区分の取り違えにも気をつけてください。この事業には3つの区分があります。
- 調査事業は、増出力・増電力量の可能性を調べる費用が対象です。単機1,000kW以上やFIT・FIP外の条件はありません
- 工事等事業は、設備更新や改造の工事が対象です。上のチェックリストと対象外は、この区分の条件です
- 災害復旧等事業は、災害などで長期故障停止中(原則1年以上)の電源の復旧が対象です。復旧後の出力が既存設備以上で、単機1,000kW以上、FIT・FIP外であることも要ります。離島など代替が難しい場合の補助率は2/3以内です
同じ発電所で調査事業と工事等事業を同時に申し込むことはできません。同じ年度に両方を行うなら、調査事業の確定検査が終わってから工事等事業を申請します。
別の補助事業として「事業性評価支援事業」も同じ財団が公募しています。こちらは本記事の事業とは別の制度で、補助率や対象が異なります。
いくら補助されるか
補助金は、補助対象経費(消費税を除く)に補助率をかけた額です。公募要領に、事業者ごとの上限額は書かれていません。
- 工事等事業で発電電力量が5%以上増える計画:6億円 × 1/3 = 2億円
- 工事等事業で、増加が5%に届かない計画:6億円 × 1/4 = 1.5億円
- 調査事業:3,000万円 × 2/3 = 2,000万円
- 災害復旧等事業:4億円 × 1/2 = 2億円
金額は計算の見本です。5%の線を挟むと補助率が1/3から1/4に落ち、同じ6億円の工事でも補助額が5,000万円変わります。1/3以内で申請しても、申請書から5%以上の増加が読み取れなければ、1/4以内に下げられます。
実際に支払われる額は、完了後の確定検査で決まります。交付決定通知書に書かれた額は上限で、計画変更で経費が増えても補助金は増えません。
何に使えるか
対象にならないもの
- 送配電設備、系統連系の費用
- 総係費(人件費、旅費、消耗品、事務所費用など)
- 借地の費用
- 発電所構内の外にあるもの
- 計測機器(備品の対象に含まれません)
対象になるもの
- 構築物(えん堤、取水口、導水路、沈砂池、水槽、水圧管路、放水路など)
- 機械装置(水車、発電機、主要変圧器、配電盤開閉装置、自動制御装置など)
- 備品(耐用年数1年以上かつ取得価格10万円以上の予備品・付属品)
- 諸経費(既存設備の更新工事に不可欠な調査、試験、実施設計)
- ダム再開発事業に係るダム負担金
- 構築物や機械装置の撤去処分費用、仮設
人件費などの総係費は対象外ですが、ダム負担金だけは総係費の扱いでも対象です。補助対象外の工事を含めて一括で契約するときは、補助対象の部分と金額がはっきり分かるようにしておかないと、補助金が支払われないことがあります。
申請の流れ
令和8年度の公募は終わっているため、以下は次の公募に備えるための手順です。次回の有無と時期は、新エネルギー財団の案内で確かめてください。
- 増加分を算出して接続検討を申し込む(事業者→技術検討を行う担当者・一般送配電事業者。増出力の場合、接続契約か接続検討の申込済みが要件)
- 実施計画書をつくり、Jグランツで申請する(事業者→新エネルギー財団。令和8年度は一次5月25日、二次7月22日、最終9月29日の各17時必着)
- 審査と交付決定を待つ(財団。外部有識者の採択審査委員会が審査し、交付決定通知書をJグランツで出す)
- 交付決定のあとに発注・契約して工事をする(事業者→施工業者。原則、一般競争入札・3者以上の指名競争入札・3者以上の相見積で決める。完了は2027年3月1日まで)
- 実績報告を出す(事業者→財団。完了から30日以内か2027年3月10日のいずれか早い日の12時まで)
- 確定検査を受け、精算払請求をして支払いを受ける(事業者→財団。額は確定検査で決まる)
必要な書類
準備できた 0 / 15
定款、登記簿、役員名簿は、地方公共団体が申請するときは要りません。接続検討の申込書は、増出力を行うときの書類です。ほかに、補助対象設備の銘板の写しや、他の補助金の一覧なども求められます。Jグランツで送れるのは様式第1と様式第2の本文までで、様式第2の別紙1以降はメールか電子媒体(CD-Rなど)で別に出します。Jグランツの利用にはGビズIDプライムが必要で、取得に2〜3週間かかります。
役員等の名簿は、暴力団排除の誓約のために交付申請書へ添付するものです。賃上げの表明書やワーク・ライフ・バランスの認定証の写しは、採点で加点される項目です。出さなくても申請はできますが、採択の優劣に関わります。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に発注した:交付決定前に発注・契約した内容は補助対象外です。入札書の開札や相見積書の開封をした時点で、発注の手続きが始まったとみなされます。
- FITやFIPの適用を受けた:事業期間中と財産処分制限期間中は、適用を受けられません。
- 増加の割合が申請時に届かなかった:事業の終了後、増出力や増電力量の割合が申請時の値を満たさないと、交付決定の取消しと返還を求められることがあります。
- 虚偽の記載や不正があった:交付決定が取り消され、受け取った補助金に年10.95%の加算金を付けて返すことになります。
- 財団に無断で財産を処分した:補助で取得した財産を処分制限期間内に処分するときは、事前の承認が要ります。
令和8年度の公募と次回の見方
最終締切は2026年9月29日で、公募期間は終わりました。公募要領には「公募期間終了後に予算額に達しない場合には追加公募を行うことがある」とありますが、この事業の追加公募の案内は、新エネルギー財団の公募ページと水力補助事業サイトでは確認できませんでした。次の公募が出るまで、要件のうち手を付けられる技術検討と系統の接続検討を進めておくと、準備の時間を短くできます。
よくある質問
FITを使っている発電所は対象になりますか?
工事等事業と災害復旧等事業では対象外です。この2区分は、FITまたはFIPを適用するものを除くと定めています(調査事業にこの条件はありません)。しかも事業期間中だけでなく、財産処分制限期間中もFIT・FIPの適用を受けられません。いまFITで売電している発電所を、補助を受けるためにFITから外せるかどうかは、売電契約の内容に左右されます。公式ページには手続きが書かれていないため、申請の前に新エネルギー財団へ確かめてください。
補助上限額はいくらですか?
事業者ごとの上限額は、公募要領にも交付規程にも書かれていません。公募予算の総額は14億7,435万円で、これは全体の枠であって1件あたりの上限ではありません。補助額は補助対象経費に補助率をかけて決まり、交付決定額が支払いの上限になります。採択は予算の範囲内で行われるため、要件を満たしても不採択になることがあります。
発電電力量の増加が5%未満でも申請できますか?
申請できますが、補助率は1/4以内になります。5%以上増える場合に限って1/3以内が適用され、申請書からその増加が読み取れないときは1/4以内に下げられます。出力や電力量をどれだけ増やせるかは採点でも見られるので、流れ解析などの技術検討で増加分を算出しておくことが前提です。
出力が1,000kW未満の小水力発電は対象ですか?
工事等事業と災害復旧等事業では対象外です。補助の対象にする発電機の出力は、単機で1,000kW以上と決まっています(調査事業にこの条件はありません)。発電所の合計出力ではなく、発電機1台ごとの出力で見ます。複数の号機がある発電所で、効率向上が著しく小さい号機の更新費用まで含めると、採択されない事例にも挙げられています。
古い発電所を壊して新しく建て直す場合は?
対象外です。既設の発電所を廃止して新規に発電所を新設する事業は、交付要件で除かれています。対象になるのは、今ある設備の更新や改造で、出力や発電電力量を増やす工事です。建て直しとの線引きが微妙な計画は、構想の段階で新エネルギー財団に相談しておくと、申請書を作り直す手間を避けられます。
見積依頼や契約は、いつからしてよいですか?
契約・発注は交付決定日以降です。競争入札の開始は交付申請書の提出日以降にできますが、見積依頼による相見積は交付決定日以降でなければなりません。交付決定の前に発注手続き(入札書の開札や相見積書の開封を含む)を行った内容は、補助対象になりません。原則として、一般競争入札、3者以上の指名競争入札、3者以上の相見積のいずれかで契約先を決めます。
調査事業と工事等事業は同時に申請できますか?
同じ発電所で、同時には申請できません。同じ年度に調査事業と工事等事業を行うなら、調査事業の確定検査が終わってから、工事等事業を申請します。調査事業の補助率は2/3以内で、工事等事業の1/4以内(5%以上の増加で1/3以内)より高い代わりに、対象は調査費・試験費・設計費に限られます。
申請はどこから、誰がしますか?
原則として、デジタル庁が運営する電子申請システムのJグランツから申請します。やむを得ない事情がある場合に限り、電子メールでも受け付けます。申請書の作成を他人の依頼を受けて報酬を得て代理できるのは、行政書士法第19条により、行政書士か行政書士法人に限られます。自社で作成するか、行政書士に依頼するかを決めてから準備に入ります。
補助金はいつ支払われますか?
事業が完了して実績報告を出し、財団の確定検査を受けて額が確定したあとに、精算払請求書を出します。支払いはその後です。つまり工事費は、いったん事業者が全額を立て替えます。外注先への支払いは原則、金融機関の振込で行い、クレジット契約、割賦契約、手形による支払いは対象外です。
賃上げの表明やくるみん認定は必須ですか?
必須ではありません。要件審査を通ったあとの採点審査で加点される項目です。賃上げは、給与総額を対前年度比2.5%以上増やす旨を従業員に表明していることが条件で、えるぼし、くるみん、ユースエールなどの認定や、健康経営優良法人の認定も加点の対象に挙がっています。採択の優劣に関わるため、持っているものは申請書に添えます。
複数年度にわたる工事でも申請できますか?
申請できます。事業期間は原則5年以内で、これを超える計画は採択審査委員会が個別に審査します。ただし各年度の交付決定は、その年度に行う事業についてのもので、次年度以降の補助金を保証するものではありません。補助金が0円になる年度がある申請は認められず、2年目以降に事業をやめると、すでに交付した補助金の返還が必要になるのが原則です。
問い合わせ先はどこですか?
一般財団法人新エネルギー財団 水力地熱本部 水力業務部が窓口で、問い合わせは極力メールでと案内されています。メールアドレスは kisetsukatsuyou[at]nef.or.jp で、[at]は@に読み換えます。個別の審査に関わる内容は案内してもらえません。水力発電の開発全般の相談は、財団が設けている水力相談窓口が受けつけています。
