特定求職者雇用開発助成金の対象は、就職が難しいとされる方を雇う事業主です。高年齢者、障害のある方、母子家庭の母、生活保護を受けている方など。ハローワーク等の紹介で採用した場合に限ります。
現行で稼働しているのは4コースです。対象者の区分と企業規模によって、支給額は1人あたり30万円〜240万円まで幅があります。支給は一括ではなく、半年ごとに区切った分割払いという、他の助成金にはない仕組みです。
特定求職者雇用開発助成金の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース/発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース/中高年層安定雇用支援コース/生活保護受給者等雇用開発コース の現行4コース。「就職氷河期世代安定雇用実現コース」は2025年4月に中高年層安定雇用支援コースへ移行、「成長分野等人材確保・育成コース」は令和7年度限りで廃止) |
| 対象業種 | 全業種 |
| 利用目的 | 雇用・職場環境を改善したい |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 制限なし(中小企業事業主か否かで支給額が変動) |
| 支給上限額 | コース・区分により30万円〜最大240万円(内訳は本文表を参照) |
| 支給率 | 定額支給(対象者区分・企業規模・労働時間により金額が固定) |
| 申請受付 | 通年受付(雇入れ後、支給対象期=6か月ごとに区切った期間ごとに支給申請。各期の申請期限はその期の末日の翌日から2か月以内) |
| 公式サイト | 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)(厚生労働省) |
図: 特定求職者雇用開発助成金の全体像。詳しくは本文で解説します
特定求職者雇用開発助成金にはどんなコースがある?【現行4コース】
現行で稼働しているコースは4つです。対象労働者の属性ごとに分かれています。
特定就職困難者コース(メインのコース)
対象は、高年齢者(60歳以上)、身体・知的・精神障害者、母子家庭の母等をハローワーク等の紹介で継続雇用する事業主です。4コースで最も対象者の幅が広く、支給額も最大240万円と高水準。まずここに当てはまるかを見てください。
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
発達障害者または難治性疾患(難病)患者を、ハローワーク等の紹介により雇用保険一般被保険者として雇い入れる事業主が対象です。
中高年層安定雇用支援コース
対象は、35歳以上60歳未満で、正規雇用の機会を逃すなどして十分なキャリア形成ができなかった方です。過去5年間の正規雇用期間が通算1年以下であることなど、複数の要件をすべて満たす必要があります。
生活保護受給者等雇用開発コース
ハローワークまたは地方公共団体において通算3か月を超えて支援を受けている生活保護受給者・生活困窮者を、ハローワーク等の紹介により雇用する事業主が対象です。
図: 対象者別の4コース早見表。まずは雇い入れたい方がどの区分に近いかを確認しましょう
廃止されたコースを探している方へ
- 成長分野等人材確保・育成コースは、令和7年度限り(2026年3月末)で廃止されました。デジタル・グリーン分野の業務に従事させる形での上乗せ支給メニューでしたが、現在は利用できません。
- 就職氷河期世代安定雇用実現コースは、2025年3月31日で廃止され、2025年4月1日以降は対象を拡大した中高年層安定雇用支援コースに引き継がれています。2025年3月31日までにハローワーク等から紹介・雇用された方については、従来コースの支給要件が適用されます。
- 生涯現役コース(65歳以上の高年齢者を対象としたコース)も既に廃止されており、2023年3月31日までに雇い入れた場合の経過措置のみが残っています。
自社が想定している取り組みがどのコースに当てはまるか、あるいは既に廃止されたコースの要件を見ているだけではないかの判断に迷う場合は、専門家に相談すると確実です。
いくらもらえる?コース別の支給額
支給額は対象労働者の区分・企業規模(中小企業か否か)・労働時間(短時間労働者かどうか)の組み合わせで細かく変わります。金額だけでなく「何期に分けて支給されるか」も押さえておきましょう。
特定就職困難者コースの支給額
| 対象労働者の区分 | 中小企業事業主 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 高年齢者(60歳以上)・母子家庭の母等・ウクライナ避難民等 | 60万円(30万円×2期)/短時間40万円(20万円×2期) | 50万円(25万円×2期)/短時間30万円(15万円×2期) |
| 身体・知的障害者 | 120万円(30万円×4期)/短時間80万円(20万円×4期) | 50万円(25万円×2期)/短時間30万円(15万円×2期) |
| 重度障害者・45歳以上の障害者・精神障害者 | 240万円(40万円×6期、第3期のみ34万円)/短時間80万円(20万円×4期) | 100万円(33万円×3期、第3期のみ34万円)/短時間30万円(15万円×2期) |
※「短時間」は1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者。
そのほか3コースの支給額
| コース | 中小企業事業主 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース | 120万円(30万円×4期、2年間)/短時間80万円(20万円×4期) | 50万円(25万円×2期、1年間)/短時間30万円(15万円×2期) |
| 生活保護受給者等雇用開発コース | 60万円(30万円×2期、1年間)/短時間40万円(20万円×2期) | 50万円(25万円×2期、1年間)/短時間30万円(15万円×2期) |
| 中高年層安定雇用支援コース | 60万円(30万円×2期、1年間) | 50万円(25万円×2期、1年間) |
業種横断・シミュレーション
同じ「特定求職者雇用開発助成金」でも、雇い入れる方の属性によって使うコースも支給額もまったく変わります。3つの業種を例に見てみましょう。
図: 業種別に見る「どのコースで、どれくらい支給されるか」のイメージ
① 小売業(従業員18人・中小企業・高年齢者を雇用) レジ・品出し業務の担い手として、ハローワークの紹介で65歳の方を正社員として採用したい。 → 特定就職困難者コースの対象です。高年齢者(60歳以上)区分として、中小企業事業主なら60万円(30万円×2期)が支給対象。半年後の第1期申請、1年後の第2期申請という流れで、2回に分けて支給されます。
② 製造業(従業員35人・中小企業・身体障害者を雇用) 検品ラインの担当として、ハローワークの紹介で身体障害者の方をフルタイムで雇い入れたい。 → 特定就職困難者コースの対象です。身体・知的障害者区分として、中小企業事業主なら120万円(30万円×4期・2年間)が支給対象。同じ「1人雇う」でも、対象者の区分によって支給額も助成対象期間も変わる点がこの助成金の特徴です。
③ 飲食サービス業(従業員12人・中小企業・生活保護受給者を雇用) ホールスタッフとして、福祉事務所やハローワークで長期に支援を受けていた生活保護受給者の方を雇い入れたい。 → 生活保護受給者等雇用開発コースの対象です。中小企業事業主として60万円(30万円×2期・1年間)が支給対象になります。
まずは、雇い入れたい方がどの区分に当てはまるかを確認してみましょう。
あわせて、他に使える補助金・助成金がないかも探してみてください。
対象者の該当性や、コース選びに迷う場合は、専門家に無料で相談できます。
申請のスケジュール感は?「半年ごとの分割支給」がこの助成金の核心
特定求職者雇用開発助成金は、他のjGrants補助金のような「年◯回の公募締切」という形はありません。対象者を雇い入れた日を起点に、6か月ごとに区切った「支給対象期」ごとに支給申請を行う仕組みです。
まず大前提として、採用より前にハローワーク等からの職業紹介を受けていることが必須です。求人サイトで直接募集した方を後から「対象者だった」と気づいても助成対象にはなりません。先に紹介、その後に雇い入れという順番を絶対に崩さないようにしましょう。
雇い入れ後は、起算日から6か月ごとに支給対象期が区切られます(起算日は原則、雇入れ日。賃金締切日がある場合はその翌賃金締切日の翌日)。申請は各支給対象期の末日の翌日から2か月以内。重度障害者等の区分なら、これを最大6回繰り返します。
図: 申請から支給までのスケジュール。「先に紹介を受けているか」と「各期の申請期限」が最初の分かれ目です
「支給対象期の末日の翌日から2か月以内」という申請期限は、1回だけでなく各期ごとに毎回訪れる点に注意が必要です。うっかり忘れると、その期の助成金を受け取れなくなる可能性があります。
承認までの重要なタイミングと必要書類
「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。
| タイミング | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 採用活動を始める前 | ハローワーク等に求人を提出する(直接募集・求人サイト経由では対象外) | 求人票 |
| ハローワーク等からの紹介後 | 対象者を正規雇用・無期雇用等として雇い入れる | 雇用契約書または雇入れ通知書 |
| 各支給対象期(6か月ごと)の末日の翌日から2か月以内 | 支給対象期ごとに支給申請を行う(第1期〜最終期まで繰り返し) | 支給申請書(様式第3号)、賃金台帳等、出勤簿等、対象者であることを証明する書類、対象労働者雇用状況等申立書(様式第5号)、支給要件確認申立書 |
| 申請後 | 労働局・ハローワークによる審査 | (追加書類を求められる場合あり) |
| 支給決定後 | 指定口座に振り込み | ― |
図: いつ・何が必要になるか。「紹介が雇入れより先」であることが最初の分かれ目です
2026年4月以降の申請分からは、支給申請時の賃金台帳の添付が必須になる予定です。
さらに2026年5月1日以降のハローワーク紹介分からは、高年齢者(60歳以上)の要件に「紹介日時点でハローワーク等の個別支援を受けていること」が加わる見込み。高年齢者の採用を予定しているなら、紹介のタイミングに注意してください。
「うちの会社でも対象?」対象事業主の考え方
対象事業主としての基本要件は、コース共通でおおむね次のとおりです。
- 雇用保険の適用事業主であること
- 対象労働者の賃金を支払っていること
- 労働保険料を滞納していないこと
- 採用日前後6か月間に事業主都合による解雇(勧奨退職を含む)をしていないこと
- 採用日前後6か月間に、倒産・解雇など特定受給資格者となる理由で離職した被保険者の割合が、対象労働者の採用日における被保険者数の6%を超えていないこと(離職者が3人以下の場合を除く)
対象労働者側にも要件があります。職業紹介の時点で在職者でないこと(重度障害者・45歳以上の障害者・精神障害者を週30時間以上で雇い入れる場合を除く)。採用した事業所と過去3年以内に就労等の関係がなかったこと。事業主の3親等以内の親族でないことなどです。
例:従業員18人の小売業(法人・正社員15人+パート3人)が、ハローワーク紹介で65歳の方を正社員として採用する場合 → 雇用保険の適用事業主で、上記の基本要件を満たしていれば、特定就職困難者コースの対象です。高年齢者(60歳以上)区分として、60万円(30万円×2期)が支給対象になります。
対象者の該当性や自社が要件を満たすかの最終判断に迷う場合は、専門家に相談すると確実です。
よくある質問
求人サイトで直接応募してきた人でも対象になりますか?
対象になりません。特定求職者雇用開発助成金は、ハローワーク・地方運輸局・厚生労働大臣に届出のある職業紹介事業者等の職業紹介により雇い入れた場合のみが対象です。求職者を直接募集し、応募後に形式的な職業紹介を挟んだだけの場合も対象外とされています。
支給申請はいつ・何回行うのですか?
雇い入れた日を起点に6か月ごとに区切った「支給対象期」ごとに申請します。回数は対象労働者の区分により2期〜6期です。各期の支給申請期限は、その支給対象期の末日の翌日から2か月以内です。
すでに対象者だと知らずに採用した場合でも助成対象になりますか?
対象になりません。ハローワーク等が助成対象労働者として職業紹介し、事業主も対象労働者だと承知したうえで雇い入れることが必要です。採用後に「対象者だった」と気づいても、さかのぼって申請はできません。
