2026年度に入って、この助成金は書類と対象者の条件が変わりました。令和8年4月以降の申請分からは、賃金台帳が付いていないと不支給になります。60歳以上の人を雇う場合は、令和8年5月1日以降の紹介から、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている人に限られます。
変わらない条件もあります。ハローワーク等の紹介で雇い入れることが大前提で、求人サイトで見つけた人は対象になりません。この記事は、制度の中心にある特定就職困難者コースを扱います。
特定求職者雇用開発助成金の要点まとめ
正式名:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
だれが
- 申請者
- 事業主(法人・個人事業主)
- 対象業種
- 業種の指定なし
- 利用目的
- 高年齢者・障害者・母子家庭の母などの雇い入れ
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規定なし(中小企業事業主かで支給額が変わる)
いくら
- 補助上限額
- 1人あたり30万〜240万円(区分と企業規模で決まる)
- 補助率
- 定額(支給対象期ごと。払った賃金額が上限)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 公募の締切の記載なし。各期の末日の翌日から2か月以内に申請
自分は対象になる?
事業主は、次の7つにすべて当てはまる必要があります。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 7
紹介の際に、対象者として明示された人を雇い入れることが条件です。雇い入れの時点で、65歳以上になるまで続けて雇い、雇用期間が2年以上(重度障害者等は3年以上)になることが確実である必要があります。解雇には勧奨退職を含みます。離職の条件は、採用日の前後6か月に倒産・解雇などで離職した被保険者が採用日の被保険者数の6%以下であることで、離職者が3人以下なら対象です。
「ハローワーク等」には、ハローワークと船員の場合の地方運輸局が入ります。助成金の取扱いに同意した有料・無料の職業紹介事業者も含まれます。事業者の一覧は、厚生労働省のページにあります。
続けて雇うのが確実な雇い方は、正規雇用か無期雇用です。有期雇用でも、本人が望む限り更新できる契約なら対象です。
雇い入れる人は、次のいずれかの区分です。年齢は採用日時点の満年齢で見ます。
- 高年齢者(60歳以上)
- 身体障害者、知的障害者、精神障害者
- 母子家庭の母等(20歳未満の子などを扶養する配偶者のない女性)
- 父子家庭の父・中国残留邦人等永住帰国者・ウクライナ避難民など
60歳以上の区分以外は、採用日時点で65歳未満の人が対象です。60歳以上の区分だけは、65歳以上の人も対象になります。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 求人サイト等の応募後に形式的に紹介
- ✕ 対象者と知らずに雇い、あとで判明
- ✕ 紹介より前に採用選考を始めていた
- ✕ 過去3年以内に自社で働いていた人
- ✕ 事業主や取締役の3親等以内の親族
- ✕ 紹介の時点で在職中だった人
- ✕ 本人が望んでも更新できない有期契約
求人サイトや直接募集で応募を受けたあとの紹介は対象外で、ハローワークのオンライン自主応募も同じです。過去3年以内の働き方には、雇用・請負・委任・派遣などを含みます。在職中だった人でも、重度障害者等を週30時間以上で雇う場合は除きます。
試用期間を設けること自体は、対象外の理由になりません。ただし、第1期の申請の時点で試用期間が続いている場合は対象外です。試用期間と本採用で雇用契約が別になっている場合も同じです。
この制度で紹介が必須なのは、事業主が対象者だと承知したうえで雇い入れを決めることを求めているからです。厚生労働省のQ&Aは、この助成金を「就職困難者の雇入れを決定するためのインセンティブ」としています。採用を決める前に、その紹介が助成金の対象者としての紹介かを、ハローワークに確かめてください。
いくらもらえる?
支給額は、雇い入れる人の区分と、事業主が中小企業事業主かどうかで決まります。中小企業事業主とは、資本金か常時雇用する労働者数が、業種ごとの基準以下の事業主です。どちらか一方を満たせば該当します。基準は次のとおりです。
- 小売業(飲食店を含む):5,000万円以下または50人以下
- サービス業:5,000万円以下または100人以下
- 卸売業:1億円以下または100人以下
- その他:3億円以下または300人以下
短時間労働者は、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人です。重度障害者等は、重度の身体・知的障害者と45歳以上の身体・知的障害者と精神障害者です。
| 区分 | 中小企業事業主 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 高年齢者(60歳以上)・母子家庭の母等 | 60万円(30万円×2期、1年) | 50万円(25万円×2期、1年) |
| 重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 120万円(30万円×4期、2年) | 50万円(25万円×2期、1年) |
| 重度障害者等 | 240万円(40万円×6期、3年) | 100万円(33万円・33万円・34万円の3期、1年6か月) |
| 短時間の高年齢者・母子家庭の母等 | 40万円(20万円×2期、1年) | 30万円(15万円×2期、1年) |
| 短時間の身体・知的・精神障害者 | 80万円(20万円×4期、2年) | 30万円(15万円×2期、1年) |
「期」は支給対象期のことで、雇い入れの日を起点に6か月ごとに区切った期間です。助成金は期ごとに支給されます。上限の240万円に届くのは、中小企業事業主が、重度障害者等をフルタイムで3年雇ったときです。
- 小売業(従業員18人)が65歳の人を正社員で雇う:30万円 × 2期 = 60万円
- 製造業(従業員35人)が身体障害者をフルタイムで雇う:30万円 × 4期 = 120万円
- 製造業(従業員35人)が精神障害者をフルタイムで雇う:40万円 × 6期 = 240万円
- 飲食店(従業員12人)が精神障害者を週25時間で雇う:20万円 × 4期 = 80万円
次の場合は、満額になりません。
- 期ごとの支給額は、その期に払った賃金額が上限です。
- 期を通した週の平均実労働時間が24時間(短時間の区分は16時間)を下回ると、月ごとに計算し直して減額されます。たとえば病気で2か月まるごと休み、残る4か月は週30時間働いた場合、期の平均は週20時間です。24時間以上だった4か月分だけが対象になり、30万円 × 4/6 = 20万円です(高年齢者区分・中小企業の例)。
- 最低賃金の減額特例の許可を受けている場合は、賃金に1/3(重度障害者等は1/2)を掛けた額が上限です。中小企業以外は1/4(重度障害者等は1/3)になります。
申請の流れ
申請は、雇い入れたあと、期ごとに繰り返します。
- 求人をハローワーク等に出す(事業主→ハローワーク等。採用選考は紹介を受けてから始める)
- 紹介を受けた対象者を雇い入れる(事業主。雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として、継続して雇う)
- 起算日から6か月ごとの支給対象期を数える(事業主。賃金締切日があれば雇入れ日の直後の締切日の翌日が起算日)
- 期の末日の翌日から2か月以内に支給申請する(事業主→事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワーク)
- 審査を受け、支給決定の通知を待つ(労働局→事業主。通知のあと、指定した口座に振り込まれる)
支給申請の期限は、各期の末日の翌日から2か月以内で、期ごとに毎回来ます。パンフレットの例では、4月1日に雇い入れて賃金締切日が15日の場合、起算日は4月16日です。第1期は4月16日から10月15日で、申請は10月16日から12月15日までです。第2期の申請は、翌年の4月16日から6月15日です。
期限の末日が土日祝日などの行政機関の休日に当たるときは、翌開庁日が末日になります。天災などやむを得ない理由があるときだけ、その理由がやんだあと1か月以内に、理由を書いた書面を添えて申請できます。
支給決定から振り込みまでの期間は、パンフレットに日数が書かれていません。審査にも一定の期間がかかるとだけあります。資金繰りに組み込む場合は、管轄の労働局に確かめてください。
必要な書類
準備できた 0 / 8
支給申請書は第1期が様式第3号、第2〜6期が様式第4号で、雇い入れた事業主には労働局から送られます。賃金台帳等は労働時間と賃金が手当ごとに分かるもの、出勤簿等は出勤状況が日ごとに分かるものです。いずれも自社で作成・保存しているものを使います。対象者の証明書類は、60歳以上なら住民票の写し・運転免許証の写しなど官公署が出したものです。雇用契約書は雇入れ通知書の写しでも構いません。対象労働者雇用状況等申立書は様式第5号です。支給要件確認申立書は共通要領様式第1号で、厚生労働省「雇用関係助成金の申請にあたって」のページにあります。職業紹介証明書は、民間の職業紹介事業者の紹介の場合に出します。
障害のある人や母子家庭の母等の証明書類は、手帳の写しや児童扶養手当の証書など、区分ごとに決まっています。詳しくは支給要領の表でご確認ください。書類の不備や不足があると、受理されません。
もらえなくなるとき
- 紹介より前に選考を始めた:ハローワーク等の紹介より前に採用に向けた選考を始めていた人を雇った場合は、支給されません。
- 支給対象期の途中で辞めた:その期は原則として支給されません。本人の都合による退職も同じです。
- 賃金を期日までに払っていない:支給対象期の労働に対する賃金を、支払期日を過ぎても払っていない場合は不支給です。
- 申請期限を過ぎた:各期の末日の翌日から2か月を過ぎると、原則として申請できません。例外は、天災などやむを得ない理由があるときだけです。
- 賃金台帳が付いていない:令和8年4月以降の申請分から、賃金台帳の提出が確認できないと不支給です。
- 不正受給をした:支給を受けた額を全額返し、年3%の延滞金と返還額の2割を加えて払います。5年間は各種の助成金を受けられず、悪質な場合は公表されます。
2026年度の変更点と併用・ほかのコース
2026年度の主な変更点は、3つです。
- 令和8年4月以降の申請分から、賃金台帳の提出が必須になりました。
- 令和8年5月1日以降に紹介された60歳以上の人は、紹介の日にハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている必要があります。紹介は、助成金の対象労働者であることを明示して行われたものに限られます。
- 令和8年4月1日付で、支給要領と申請書の様式が新しくなりました。令和8年3月31日までの雇い入れには、旧様式が使えます。
60歳以上の人を雇う予定なら、求人を出す前に、その人がハローワークで個別支援を受けているかを確かめることを勧めます。個別支援とは、就職まで担当者が付く支援や、相談・履歴書の指導・模擬面接などを複数受けている状態を指します。
併用は、同じ賃金や同じ行為を理由に、2つの助成金を同時に受けることができません。支給対象期と重なる時期に雇用調整助成金や労働移動支援助成金や人材開発支援助成金(賃金助成)などを受ける場合は、どちらか一方になります。自治体の補助金は、趣旨が明らかに違う場合などを除いて調整されます。障害者トライアル雇用助成金を使った人を引き続き雇う場合は、第1期が受けられず、第2期から受給できます。
この助成金には、対象者別にほかの3コースがあります。支給額は次のとおりです。
| コース | 対象 | 支給額(中小企業/中小企業以外) |
|---|---|---|
| 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース | 発達障害者、難病の患者 | 120万円(2年)/50万円(1年)。短時間は80万円/30万円 |
| 中高年層安定雇用支援コース | 35歳以上60歳未満で、正規雇用に就くことが困難な人 | 60万円/50万円(ともに1年) |
| 生活保護受給者等雇用開発コース | ハローワークや自治体で通算3か月を超えて支援を受けている生活保護受給者・生活困窮者 | 60万円/50万円(ともに1年)。短時間は40万円/30万円 |
中高年層安定雇用支援コースは、旧「就職氷河期世代安定雇用実現コース」の要件を広げて、令和7年4月に新しくできました。令和7年3月31日までに紹介されて雇い入れた人には、旧コースの要件が適用されます。旧コースの名前で調べて出てきた条件は、令和7年4月以降の紹介には使えません。
よくある質問
求人サイトで応募してきた人でも対象になりますか?
対象になりません。この助成金は、ハローワークや地方運輸局や、助成金の取扱いに同意した職業紹介事業者などの紹介で雇い入れた場合だけが対象です。求人サイトや直接募集で応募を受けたあとに、形式的に紹介を挟んでも対象外です。ハローワークのオンライン自主応募も同じ扱いになります。
対象者だと知らずに雇い入れたあと、対象だと分かった場合は?
対象になりません。ハローワーク等が助成金の対象労働者として紹介し、事業主もそれを承知して雇うことが必要だからです。さかのぼって申請することもできません。採用を決める前に、紹介が助成金の対象者としての紹介かをハローワークに確かめておくと、あとから対象外と分かる事態を防げます。
支給申請はいつ、何回しますか?
雇い入れの日を起点に6か月ごとに区切った支給対象期ごとに、末日の翌日から2か月以内に申請します。回数は区分によって2回から6回です。第1期の申請を出していない場合、第2期以降の申請は、初回に限って第1期の申請書(様式第3号)で出します。期限を過ぎると、原則としてその期の分は受け取れません。
試用期間を設けても対象になりますか?
試用期間を設けただけでは対象外になりません。ただし、第1期の支給申請の時点で試用期間が続いている場合や、試用期間と本採用で雇用契約が別になっている場合は対象外です。試用期間の長さと契約の組み立て方には注意が必要です。雇用契約書の書き方は、申請前にハローワークで確かめてください。
有期雇用で雇っても対象になりますか?
自動更新(本人が望む限り更新できる契約)の場合だけ対象です。雇用契約書に自動更新と書く必要があります。自動更新と書いてあっても、更新の条件に就業規則の解雇要件を超える内容が付いていれば対象外です。勤務成績などで更新するかを決める契約も対象外になります。契約書の文言は、雇い入れる前にハローワークへ問い合わせて確かめておくと安心です。
60歳以上の人を雇う場合の条件は何ですか?
雇い入れ時に60歳以上であることに加えて、令和8年5月1日以降に紹介された人は、紹介の日にハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている必要があります。紹介は、助成金の対象労働者であることを明示して行われたものに限ります。ハローワークは、対象者確認票(様式第12号困)で確認します。
パートタイムでも対象になりますか?
週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者でも対象で、支給額は短時間の区分になります。たとえば中小企業が高年齢者を短時間で雇うと40万円、身体・知的・精神障害者なら80万円です。週20時間に満たない人の区分は、公式ページに載っていません。その場合の扱いは、ハローワークに確かめてください。
賃金台帳は必ず出す必要がありますか?
必要です。令和8年4月以降の申請分からは、賃金台帳の提出が確認できない場合は不支給になります。賃金台帳は、労働基準法で作る決まりのある帳簿です。氏名・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外や休日や深夜の労働時間数・基本給や手当の種類と金額などを記載します。厚生労働省のページに様式例があります。
支給対象期の途中で本人が辞めたらどうなりますか?
その期の助成金は、原則として支給されません。辞めたあとの期も、申請できなくなります。例外として、労働者の責めに帰すべき理由による解雇や本人の死亡などの場合は、離職日の属する月の前月までを対象に支給されることがあります。ただし第1期で、離職日が期の初日から1か月以内なら支給されません。
他の助成金と一緒に使えますか?
同じ賃金や同じ行為を理由とする2つの助成金は、同時に受けられません。雇用調整助成金や人材開発支援助成金(賃金助成)などと支給対象期が重なるときは、一方だけになります。自治体の補助金も原則調整されます。複数の制度を使う予定なら、申請書の「他の助成金の有無」欄に記入し、先に労働局へ相談してください。
1週間の実際の労働時間が短くなると、減額されますか?
減額されることがあります。週30時間以上の所定労働時間で雇った場合、期を通した週の平均実労働時間が24時間を下回ると、月ごとに計算し直します。24時間以上の月は通常の額、16時間以上24時間未満の月は短時間の額で数え、16時間に満たない月は対象外です。入院や産休などで休みが長引いた場合も同じです。
申請はどこにすればいいですか?
事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワークです。郵送や電子申請もできます。郵送や電子申請の場合は、期限内に労働局へ届いている必要があります。電子申請の案内は、厚生労働省の特定求職者雇用開発助成金の電子申請のページにあります。迷ったときは、労働局に先に電話で確かめると、書類の出し直しを避けられます。
書類はいつまで保管しますか?
支給決定の日の翌日から5年間です。申請時に出した書類の原本(原本を出した場合は写し)と、賃金台帳や出勤簿などの書類を保管します。この助成金を受けた事業主は、国の会計検査の対象になることがあります。検査の対象になったときは、協力が求められます。書類の保管場所と担当者を、申請の段階で決めておくと、あとで慌てずに済みます。
