職員の働きやすさを良くする補助金を、医師や看護師が個人で申請できるのか。できません。申請するのは病院で、東京都が病院の取組に費用を出す仕組みです。しかも国・独立行政法人・地方独立行政法人・都が設置する病院は対象外なので、都内にあっても申請できない病院があります。
救急医療体制強化事業は単独の補助ではありません。勤務環境改善事業に上乗せされる加算です。
病院勤務者勤務環境改善事業・救急医療体制強化事業の要点まとめ
正式名:病院勤務者勤務環境改善事業・救急医療体制強化事業
だれが
- 申請者
- 病院(都内。国・独法・地方独法・都の設置分を除く)
- 対象業種
- 医療(病院)
- 利用目的
- 医師・看護職員の勤務環境改善、復職支援、チーム医療、施設・設備整備
- 対象地域
- 東京都
- 従業員数
- 公式ページに記載なし(東京都保健医療局へお問い合わせください)
いくら
- 補助上限額
- 区分ごとの基準額。最大1,114万円(復職研修・就労環境改善)
- 補助率
- 1/2(研修・相談・チーム医療)、2/3(施設・設備整備)、救急加算1/4
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年9月16日〜2027年5月31日(Jグランツ掲載)
- 事業の完了
- 交付決定の年度の3月31日まで(令和8年度は2027年3月31日)
うちの病院は対象になる?
次のすべてに当てはまれば、対象になる見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
「独法」は独立行政法人、「地方独法」は地方独立行政法人のことです。公立病院でも設置者によって扱いが分かれるため、設置者の区分は申請前に確かめてください。要綱には「その他知事が定める病院」も除くとあり、その範囲は公式ページに載っていません。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 国・独法・地方独法・都が設置する病院
- ✕ 国や自治体の補助を充てる事業
何が対象で、何が対象外?
線引きは「医師と看護職員の負担を減らし、離職を防ぐ取組か」です。要綱が挙げる事業は医師と看護職員が中心なので、それ以外の職種だけを対象にした取組は、当てはまるかどうかを事前に確かめてください。
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 離職した医師・看護職員の復職研修 | 土地の取得、整地 |
| 短時間正職員制度や交代制勤務の導入など、負担を減らす事業 | 門・さく・塀・造園、通路の敷設 |
| 女性医師等の仕事と家庭の両立を支える相談窓口 | 設計など工事に伴う事務の費用 |
| 医師事務作業補助者・看護補助者の配置に伴う研修 | 既存建物の買収 |
| 院内助産・助産師外来の開設、認定看護師や特定行為研修の受講支援 | 国や自治体の補助を充てた事業 |
| 休憩室・当直室の新築・増改築・改修(単年度) | 設備整備事業での一品30万円未満の備品 |
最後の行は、設備整備事業の対象が「一品の価格が原則30万円以上の備品」だからです。30万円未満の備品は、研修や相談窓口の経費で対象になる場合があります。
よく誤解されるポイント
救急医療体制強化事業だけを申請することはできない
公式ページは、救急医療体制強化事業を勤務環境改善事業の「加算事業」と書いています。まず勤務環境改善事業の経費があり、そのうち救急医療体制の確保に必要な分に1/4が加算されます。加算の条件は、申請年度の前年1月1日から12月31日までの救急車受入が2,000件以上の病院です。
施設整備と設備整備は別の枠
休憩室や当直室を作る工事は「施設整備」、備品の購入は「設備整備」で、基準額も計算の仕方も違います。同じ工事でも、どちらの枠で申請するかで補助額が変わります。
別の年度の資料で準備しない
年度が変わると、申請書の様式や日程が入れ替わります。令和8年度の申請書は、Jグランツに載っている令和8年度の様式(Excel)を使います。要綱と別表も、令和8年度の掲載資料で確認してください。
いくら補助される?
補助額は、次の順で決まります。
- 区分ごとの基準額と、対象経費の実支出額を比べて、少ないほうを選ぶ
- その額と、総事業費から寄附金などの収入を引いた額を比べて、少ないほうを選ぶ
- 補助率をかける(1,000円未満は切り捨て)
病院の実際の支出が基準額より少なければ、実支出が基準です。
| 区分 | 基準額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 復職研修・就労環境改善 | 1,114万円 | 1/2 |
| 相談窓口 | 709.3万円 | 1/2 |
| チーム医療推進 | 670万円 | 1/2 |
| 施設整備 | 30㎡に構造別単価をかけた額 | 2/3 |
| 設備整備 | 381.1万円 | 2/3 |
計算例です。
- 相談窓口の運営に人件費などで600万円かかった:600万円 × 1/2 = 300万円
- 相談窓口の運営に800万円かかった:基準額の709.3万円 × 1/2 = 354.6万円(基準額を超えた分は自己負担)
- 鉄筋コンクリートで休憩室を整備する(実面積30㎡):30㎡ × 16.8万円 = 504万円 → 504万円 × 2/3 = 336万円
- 設備整備で備品に200万円かかった:200万円 × 2/3 = 133.3万円(1,000円未満は切り捨てなので133万3,000円)
施設整備の構造別単価は、鉄筋コンクリートと木造が1平方メートルあたり168,000円、ブロックが146,700円です。実際の面積や単価が基準を下回れば、実際の値で計算します。
救急車の年間受入が2,000件以上の病院は、救急医療体制の確保に必要な経費に1/4が加算されます。加算の対象経費の切り分けは、公式ページに具体例がありません。東京都保健医療局に確かめるのが確実です。
何に使える?
対象にならない経費を先に見てください。
- 土地の取得、整地の費用
- 門・さく・塀・造園、通路の敷設
- 設計など、工事に伴う事務の費用
- 既存建物の買収
- ほかの国・自治体の補助を充てた事業の経費
対象になる経費は、事業ごとに決まっています。
- 復職研修:指導担当医・看護職員・相談員などの給与費、研修の消耗品費、備品購入費(一品30万円未満)。復職後の研修は、復職日から3か月以内に実施するものに限ります
- 就労環境改善の代替職員:代替の医師・看護職員の給与費、旅費、30万円未満の備品。代替として勤務した分だけです
- 相談窓口:担当者の給与費、旅費、委託料、備品購入費(一品30万円未満)
- チーム医療(補助者の研修):医師事務作業補助者・看護補助者が専門研修を受けるときの代替職員の給与費、研修の講師や管理責任者の給与費、教材費、研修参加費
- チーム医療(看護師の活用):認定看護師の資格取得や特定行為研修を受ける看護師の給与費、教材費、研修参加費
- 助産師の活用:院内助産・助産師外来の開設準備期間(6か月まで)の助産師の給与費
- 設備整備:一品30万円以上の備品の購入費
チーム医療の補助者の研修には上限が2つあります。受講の代替職員の給与費は、1病院あたり43.4万円に事業月数をかけた額までです。講師・管理責任者の給与費などは、医師事務作業補助者・看護補助者の1人目が100万円、2人目以降は1人につき67万円までです。
申請の流れ
公式ページは、申請手続を対象施設へのメールで案内すると書いています。令和8年度の申請様式は、Jグランツにも掲載されています。
- 対象施設へのメールを確認する(病院→東京都保健医療局。申請手続はメールで案内される)
- 事業計画を立てる(病院。どの区分で、いくら使うかを決める)
- 交付申請書を出す(病院→東京都知事。知事が指定する日までに。研修・相談・チーム医療は第1号様式、施設・設備は第2号様式)
- 交付決定を待つ(東京都→病院。決定後に条件が通知される)
- 事業を行い、実績報告を出す(病院→東京都。完了から1か月以内か年度末のどちらか早い日まで)
- 補助額が確定し、支払いを受ける(東京都→病院)
交付決定の内容に異議があれば、決定の日から14日以内に申請を撤回できます。事業の実施期間は、交付決定のあった日の属する年度の4月1日から3月31日です。この期間より前に支出した経費の扱いは要綱に書かれていないため、契約や発注の前に東京都へ確認してください。
施設整備を申請するときは、12月末までの実施状況の報告書も求められます。契約手続は、東京都の契約手続基準を守る必要があります。
必要な書類
準備できた 0 / 9
第1号様式は研修・相談窓口・チーム医療向けで、支出予定額明細書と実施計画書も、この様式のExcelに入っています。第2号様式は施設・設備整備向けです。工事仕様書・設計書・図面は施設整備、見積書とカタログは設備整備で付けます。委任状は、開設者ではなく病院の管理者(院長など)が申請するときの書類です。
Excelの入力シートには、医療機関コード(10桁)、職員数、救急車の年間受入件数などを書きます。救急加算を受けるなら、申請の前年1月1日から12月31日の受入件数です。
実施状況報告書(第3号様式)と実績報告書(第4号・第5号様式)は、事業のあとに出す書類です。
補助金を返すことになるのはどんなとき?
- 偽りその他不正の手段で受けた:交付の決定が取り消され、返還を命じられます。受け取った日から返すまで、年10.95%の違約加算金もかかります。
- 他の用途に使った:補助金を他の目的に使うと、決定の全部か一部が取り消されます。
- 許可なく内容を変えた:経費の配分、事業の内容、中止や廃止は、先に知事の承認が要ります。軽微なものは別です。
- 取得した財産を勝手に処分した:補助で買った備品や整備した施設は、耐用年数が過ぎるまで、承認なしに目的外の使用、譲渡、貸付、担保にはできません。
- 消費税の仕入控除額が確定した:申告で控除額が確定したら、速やかに報告します。納付を命じられることがあります。
- 書類を捨てた:収入・支出の書類と帳簿は、事業の年度が終わってから5年間、保管します。
よくある質問
医師や看護師個人は申請できますか?
できません。実施主体は都内の病院です。個人の医師や看護職員が受け取るものではなく、病院が実施する取組の費用に東京都が補助します。院内でこの事業の担当を決めるときは、病院の事務部門や看護部と、どの区分で申請できるかを先に整理しておくとスムーズです。対象施設には、東京都からメールで案内が届きます。
公立病院や独立行政法人の病院は対象になりますか?
国、独立行政法人、地方独立行政法人、都が設置する病院は対象外です。そのほかに「知事が定める病院」も除かれますが、その範囲は公式ページに載っていません。自院の設置者が対象外に当たるかどうか迷う場合は、申請の準備を進める前に東京都保健医療局へ確かめてください。設置者の区分を間違えると、計画の作り直しになります。
救急医療体制強化事業だけ申請できますか?
できません。救急医療体制強化事業は、病院勤務者勤務環境改善事業の加算事業です。勤務環境改善の経費のうち、救急医療体制の確保に必要なものに、1/4が加算されます。加算の対象は、申請年度の前年1月1日から12月31日までの救急車の年間受入が2,000件以上の病院です。受入件数を示す資料は、早めにそろえておくと安心です。
申請の受付期間はいつですか?
令和8年度分は、Jグランツ(国の補助金情報の掲載システム)に、受付期間が2026年9月16日から2027年5月31日までと載っています。東京都の公式ページには期間の記載がなく、申請手続は対象施設へのメールで案内すると書かれています。要綱では、交付申請書は知事が指定する日までに出すとされているので、実際の日付は東京都の案内に従ってください。連絡が来ていない病院は、保健医療局に問い合わせるのが確実です。
補助率はいくらですか?
復職研修・就労環境改善、相談窓口、チーム医療推進は2分の1です。施設整備と設備整備は3分の2です。救急医療体制強化事業の加算は、救急医療体制の確保に必要な経費の4分の1です。補助率をかける元の額は実支出ではなく、基準額と実支出の少ないほうなので、基準額を超えた分は病院の負担になります。
基準額が1,114万円とは、1,114万円もらえるということですか?
違います。1,114万円は復職研修・就労環境改善の基準額で、補助額ではありません。補助率が2分の1なので、基準額いっぱいまで使っても、補助は557万円が目安です。救急加算は別に計算されます。実際の補助額は、実支出、基準額、寄附金などの収入を引いた額のうち少ないほうに、補助率をかけて決まります。
休憩室の改修と備品の購入は一緒に申請できますか?
施設整備と設備整備は別の枠で、基準額も補助率の計算も別です。休憩室の工事は施設整備、そこに入れる一品30万円以上の備品は設備整備になります。同じ事業の中で両方を申請できるかは要綱に書かれていないため、東京都に確認してください。30万円未満の備品は、設備整備の対象外です。
他の補助金と併用できますか?
国、地方公共団体等のほかの補助金を充てて実施する事業は、この事業の対象外です。同じ経費について重ねて受け取ることはできません。別の補助金を受ける予定の事業は、経費を分けられるかどうかを、申請前に両方の窓口に確かめてください。分けられない場合は、どちらか一方で申請することになります。
実績報告はいつまでに出しますか?
補助事業の完了後1か月以内、または補助金に係る都の会計年度が終わったときのどちらか早い日までです。報告書には、収入と支出の資料が必要になります。施設整備の事業は、12月末までの実施状況を別に報告します。完了日から逆算して、領収書や契約書の整理を進めておくと、期限に間に合いやすくなります。
補助金は先にもらえますか?
復職研修・就労環境改善、相談窓口、チーム医療推進の事業は、年1回の概算払ができると要綱にあります。概算払は、事業の完了前に見込みの額を先に受け取る方法です。施設整備と設備整備は、要綱に概算払の定めがありません。資金繰りの計画を立てるときは、支払いの時期を保健医療局に確認してください。
