塗料や洗浄剤の溶剤は、石油が原料です。値上がりが続き、設備の更新が後回しになっている工場があります。この補助金は、溶剤の蒸発を抑える設備や、VOCを捕まえる空調・換気設備の費用の3分の2を出します。
対象になるのは、工場内塗装・印刷・ドライクリーニングの3つの作業をしている事業所だけです。VOCとは揮発性有機化合物のことで、塗料やインキ、洗浄剤に含まれる溶剤が空気中に出ると、光化学スモッグの原因になります。実施するのは東京都環境公社(以下、公社)です。
省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業の要点まとめ
正式名:省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業
だれが
- 申請者
- 都内の中小企業者・個人事業主・障害者就労施設を有する社会福祉法人等
- 対象業種
- 工場内塗装・印刷・ドライクリーニング
- 利用目的
- VOC排出削減設備、VOC削減装置付き空調・換気設備の導入
- 対象地域
- 東京都内の事業所
- 従業員数
- 業種別の基準あり(本文で説明)
いくら
- 補助上限額
- 設備1台あたり2,000万円
- 補助率
- 対象経費(税抜)の2/3
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年4月1日〜2027年3月31日17時(先着順・予算の範囲内)
- 事業の完了
- 完了後60日以内(最終期限は2027年11月30日)
うちの事業所は対象になる?
次の6つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
塗装は、工業塗装と自動車板金塗装に限ります。対象の作業は、いずれか1つで足ります。
中小企業者は、中小企業基本法の定義で見ます。業種ごとに資本金と従業員数の上限が決まっていて、どちらか一方を満たせば該当します。中小企業団体や中小企業等協同組合も対象です。社会福祉法人は、障害者就労施設を持つ法人に限ります。大企業の子会社などのみなし大企業も、Q&Aでは対象とされています。
| 業種 | 資本金 | 常時使用する従業員 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
複数の事業をしている場合は、売上高が大きいほうが主たる業種です。個人事業主も対象ですが、申請には青色申告をしていることを示す書類と開業届の写しが要ります。事業所が複数あるときは、事業所ごとに申請します。申請の代行はできず、申請者本人が出します。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 同じ内容で国の補助を受ける
- ✕ 国や自治体の出資を受けている
- ✕ リース・中古の設備を入れる
- ✕ 交付決定前に契約している
国の補助は重ねて受けられません。区市町村の補助は別扱いで、併用の可否は後半で説明します。工場やクリーニング店として必要な許可や届出が済んでいることも条件です。用途地域の制限は、申請前に必ず確かめてください。
いくら補助される?
補助額は、設備1台ごとの対象経費(消費税を除く)の3分の2です。千円未満は切り捨てます。上限の2,000万円は、申請1件ではなく設備1台ごとに当たります。
- 塗装工場が排ガス処理装置を入れる:設備費と工事費で900万円 × 2/3 = 600万円
- クリーニング店が乾燥機1台を更新する:180万円 × 2/3 = 120万円
- 工場が空調・換気設備1台を更新する:3,300万円 × 2/3 = 2,200万円 → 上限の2,000万円
上限に届くのは、1台の対象経費が3,000万円以上のときです。2台入れる場合は、台ごとに上限を当てます。
区市町村からも補助を受ける場合は、両方の合計が対象経費を超えないように調整します。超えた分は、この補助金から差し引かれます。
自社や資本関係のある会社から調達する分は、利益を除いて計算します。これを利益等排除といいます。自社製品なら原価、関係会社なら原価に経費を足した額が対象経費です。
何に使える?
対象にならないものを先に挙げます。
- 中古品や故障中の機器
- 予備や将来用の設備、必要以上に大きな設備
- 原材料や消耗品
- 交付決定の日より前に契約した分
- 安全対策費、土地の取得・賃貸の費用
- 共通仮設費、現場管理費、諸経費
- 申請書類の作成費用(代行費を含む)
対象になるのは、次の4つの経費です。
- 設計費(補助対象設備の導入に必要な設計)
- 設備費(本体、付属機器、搬入・据付、試験調整)
- 工事費(配管・配電、基礎、天井の解体と復旧)
- 処分費(更新で撤去する古い設備の処分)
対象の設備は、2種類です。1つはVOC排出削減設備で、排ガス処理装置、溶剤回収装置、スプレーガン、塗装ブースなどが並びます。もう1つはVOC削減装置付きの空調・換気設備です。VOCを吸着するフィルターを組み合わせたものに限ります。
ドライクリーニングの乾燥機やホットドライ機は、型番が決まっています。ただしVOCが減ると公的機関等が認めた機器は、この限りではありません。
印刷機は、低VOCのインキや溶剤に切り替えるために必要不可欠なものだけです。ソフトウェアや給排紙トレイなど、使い勝手を良くするだけの付属品は対象外です。
一覧にない設備でも、東京都VOC対策アドバイザーから「VOCが減る」と助言を受けて都へ報告すれば、対象にできます。アドバイザーの派遣は、公社の案内ページから依頼できます。
導入の形は、新設・増設・更新の3区分です。更新の場合は、古い設備を撤去・処分した証拠のマニフェスト伝票が要ります。マニフェスト伝票は、産業廃棄物を誰が誰に渡したかを記録する伝票です。更新では、VOCの排出量が減ることも条件です。
空調・換気設備は、更新なら既存設備より原油換算のエネルギー使用量が減っていなければなりません。
申請の流れ
先着順です。交付決定の前に契約や発注をした分は、例外なく補助されません。見積書は取ってよいのですが、契約は決定通知を受けてからにします。
- GビズIDを用意する(事業者。Jグランツのログインに要る。発行に日数がかかるので早めに)
- 工事業者から見積書を2社以上取る(事業者→工事業者。処分費も2社。一式表記は不可)
- Jグランツで交付申請する(事業者→公社。2027年3月31日17時必着、予算が尽きれば停止)
- 交付決定の通知を受ける(公社→事業者。申請から概ね2か月)
- 工事を契約して実施する(事業者→工事業者。発注先は申請時の見積の中から選ぶ)
- 実績報告と請求を出す(事業者→公社。完了から60日以内、最終は2027年11月30日)
- 額の確定通知を受けて入金される(公社→事業者。確定から約1か月)
GビズIDは、国の電子申請に共通で使うIDです。Jグランツは、国の補助金を電子申請するシステムです。
支払いは現金か銀行振込に限ります。クレジット、手形、相殺は認められません。補助金の交付期限は2028年3月31日です。
必要な書類
交付申請のときに出す書類です。提出物チェックリストで、漏れがないかを確かめてから出します。
準備できた 0 / 10
履歴事項全部証明書は、発行後3か月以内のものです。「登記情報提供サービス」で取った電子データは認められません。見積書は、作成日が申請の受付開始日(4月1日)以降で、有効期限内のものを使います。
VOCの資料は、使っている原材料のSDS(安全データシート)で、VOCの含有率が載っているものです。原材料のSDSは全て要り、機器のSDSは要りません。
条件に当たるときだけ出す書類もあります。設置場所が環境確保条例の「工場」に当たるなら、区市町村が出す工場認定書です。設置場所が低層・中高層の住居専用地域なら、建築基準法第48条ただし書の許可証が要ります。社会福祉法人なら設立認可書、自社製品を調達するなら原価などの算定根拠も出します。乾燥機を入れる場合は、冷凍機の写真も出します。空調・換気設備なら、新旧仕様入力表と、フィルターの性能を示す公的な証明書か計量証明の結果です。建物の所有者が自分でなければ、建物の全部事項証明書と賃貸借契約書(または設置承諾書)が要ります。更新や増設でVOCを減らす機器を入れるなら、既存設備の原材料の年間使用量が分かる購入伝票も出します。VOCの含有率が1%以下なら不要です。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に契約した:発注や契約が決定日より前だと、交付されません。決定後に取り消されることもあります。
- 予算が尽きた:受付期間の途中でも、予告なしに受付が止まります。予算を超えた日に申請が重なれば、抽選です。
- 報告が遅れた:実績報告は完了から60日以内です。不備の修正を求められてから60日以内に直さなければ、交付決定が取り消されます。
- 支払いの方法が違う:クレジット、手形、相殺は認められません。現金か銀行振込にします。
- 設備を勝手に手放した:法定耐用年数の期間内は、譲渡や廃棄ができません。取得価格が50万円以上のものは、事前の承認が要ります。
- 計画変更を届けなかった:型式や設置場所を変えるなら、先に変更申請を出します。承認の前に工事を進めてはいけません。
不正や取消しがあると、返還に年10.95%の違約加算金が付きます。
今年度の変更点・併用・税金
令和8年度の申請から、交付申請の窓口がJグランツに変わりました。令和7年度に申請した人の実績報告や変更届は、引き続き電子メールです。旧年度の様式は使えないので、公社の案内ページから最新の様式を取ってください。
区市町村の補助との併用は、公社の資料では「可否を区市町村に確認する」とされています。国など区市町村以外の補助とは重複できません。
この補助金が税金の計算でどう扱われるかは、募集要項に記載がありませんでした。受け取る前に、税理士へ確かめておくことを勧めます。
よくある質問
塗装・印刷・クリーニング以外の工場は対象になりますか?
3つの作業のどれもしていなければ、対象になりません。対象の作業は、工場内塗装(工業塗装と自動車板金塗装に限る)、印刷、ドライクリーニングです。工場の業種で決まるのではなく、事業所でこの作業をしてVOCを出しているかどうかで決まります。自社の作業が当てはまるか迷う場合は、作業の内容が分かる資料を用意して、公社のヘルプデスクに事前に聞いておくと安心です。
個人事業主でも申請できますか?
申請できます。対象者に個人事業主が含まれます。ただし申請には、直近1年分の青色申告を証明する書類の写しと、職業が分かる開業届などの写しが要ります。白色申告の場合の扱いは資料に書かれていないので、ヘルプデスクに確認してください。あわせて、事業所が都内にあることや、工場・店舗として必要な許可を得ていることも条件です。用途地域の制限は、申請の前に必ず確かめておきます。
見積書だけ先に取ってもよいですか?
取ってかまいません。見積書は交付申請に必要な書類で、2社以上から取ります。禁じられているのは、交付決定の前に発注や契約をすることです。見積書の取得は着手に当たりません。ただし見積書の作成日は、申請の受付開始日の4月1日以降でなければなりません。古い見積書は使えない点に注意してください。
印刷機は何でも対象になりますか?
何でもは対象になりません。印刷に使う材料を低VOC製品に変えるために、導入が必要不可欠な印刷機だけです。ソフトウェアや給排紙トレイなど、生産性を上げるために付けるオプションは対象外です。既存設備の構成要素の一部を追加・変更する場合も含まれます。申請前に、材料の切り替え計画を整理しておくと説明しやすくなります。
リースの設備や中古品は使えますか?
どちらも対象外です。補助対象設備は、未使用品であること、リース品でないこと、原材料や消耗品でないことが共通の条件です。中古品や故障中の機器を買う経費も、対象外経費に挙げられています。新品を購入して、自社の資産にする形で導入してください。法定耐用年数の期間は、勝手に処分もできません。
上限2,000万円は1回の申請の上限ですか?
1回の申請ではなく、補助対象設備1台ごとの上限です。補助額は、設備1台ごとの対象経費の3分の2で、それに2,000万円の上限を当てます。台数が複数なら、台ごとに計算した額を足していきます。上限に届くのは、1台の対象経費が3,000万円以上のときです。見積書は、台ごとの内訳が分かる形で取りましょう。
空調・換気設備には、どんな条件がありますか?
換気設備と空調設備に、VOCを吸着捕集するフィルターを組み合わせたものが対象です。本体と別に発注して取り付けた場合も構いません。フィルターの性能は、公的な証明書か計量証明を受けた測定結果で示します。換気設備には比消費電力や熱交換率の基準があり、空調設備にも指定基準があります。更新なら、省エネになっていることも条件です。
更新と増設は、何が違いますか?
増設は、同じ種類の設備がすでにある事業所に、追加で入れることです。更新は、古い設備を撤去・処分して、新しい設備に入れ替えることです。更新の場合は、実績報告のときにマニフェスト伝票を出します。また、導入でVOCの排出量が減ることが条件になります。途中で増設から更新に変えるときは、計画変更の申請が要ります。
申請はどこで、どうやって出しますか?
令和8年度の交付申請は、電子申請システムのJグランツで出します。郵送は受け付けられません。ログインにはGビズIDが必要です。電子申請が難しい場合は、事前に公社のヘルプデスクへ連絡してください。様式は、公社の案内ページか、Jグランツの申請画面から最新のものを取ります。紙で配られることはありません。
補助金はいつ振り込まれますか?
工事が終わり、実績報告を出して審査を通り、額の確定通知が届いてからです。通知の発行後、振込までは約1か月とされています。交付決定までは、申請から概ね2か月かかります。工事代金は先に自分で払うことになります。資金繰りは、補助金が入るまでの期間を見込んで立ててください。交付の期限は2028年3月31日です。
区市町村の補助と併用できますか?
併用の可否は、区市町村に確認する必要があります。この補助金側では、区市町村の補助との合計が対象経費を超えるときに、超えた分を差し引いて交付額を決めます。国など区市町村以外から同じ内容で補助を受けることはできません。申請の前に、お住まいの区市町村の窓口へ、同じ設備に使える補助があるかを聞いてください。
問い合わせ先はどこですか?
東京都環境公社の省エネ型VOC排出削減設備導入促進事業ヘルプデスクです。電話は03-3633-2282で、平日の9時から12時と13時から17時に受け付けます。メールはkaizen-voc@tokyokankyo.jpです。申請前の段階では、原則として申請書類の確認はしてもらえません。募集要項を読んだうえで、要件の疑問点を聞く形になります。
