予約管理や顧客管理のツールを入れたいと考えて見積書を開くと、初期設定費と1年分の利用料で数十万円になっていた。こうした場面で導入を先送りにする会社は、少なくないはずです。
和歌山市の「生産性向上ツール導入補助金」は、市内の中小企業者を対象に、AI・IT・IoTツールの導入費の1/2(上限50万円)を補助します。申請の受付は2026年10月1日に始まり、予算枠に達した時点で終わります。導入と支払いは2027年2月26日までに済ませる必要があります。
申請書を書く前に、順番で押さえておくことが1つあります。支援機関で事業計画書の確認をもらうのが先で、見積書を取ってすぐ申請、とはいきません。
和歌山市 生産性向上ツール導入補助金の要点まとめ
正式名:和歌山市生産性向上ツール導入補助金
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・個人事業主)
- 対象業種
- 業種の指定なし(中小企業者に限る)
- 利用目的
- AI・IT・IoTツールの導入による生産性向上
- 対象地域
- 和歌山県和歌山市
- 従業員数
- 業種ごとに上限あり(製造業等は300人以下、小売業は50人以下など)
いくら
- 補助上限額
- 50万円
- 補助率
- 対象経費の1/2(1,000円未満切り捨て)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年10月1日から(予算枠に達し次第終了)
- 事業の完了
- 2027年2月26日まで
うちの会社は対象になる?
次のすべてに当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 7
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 医療法人・社会福祉法人・NPO法人
- ✕ 文書作成やメールだけのツール導入
- ✕ 令和7年度にデジタルツール補助を受けた
個人事業主は、市内に住所と事業所の両方が要ります。法人は事業所が市内にあれば足ります。
「中小企業者」は、中小企業等経営強化法の定義です。株式会社、有限会社、合同会社、個人事業主、事業協同組合などが入ります。業種ごとに、資本金か従業員数のどちらか一方が基準以下なら該当します。
| 主たる事業 | 資本金 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
| ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
「支援機関」は、中小企業の相談に乗る機関のことです。募集要項には、和歌山県よろず支援拠点と和歌山商工会議所が例に挙がっています。
令和7年度の「和歌山市デジタルツール導入支援補助金」を受けた事業者は、令和8年度のこの補助金を使えません。募集要項には、当年度か前年度に同じ要綱の補助金を受けていないことも条件とあります。令和8年度に交付を受けた事業者は、翌年度に同じ補助金を申請できない読み方になります。
いくら戻ってくる?
対象経費の半分です。消費税は経費に入らないので、税抜の金額で考えます。上限の50万円に届くのは、対象経費が100万円以上のときです。
- 飲食店が予約・顧客管理のクラウドツールを入れる(初期設定費と利用料で36万円):36万円 × 1/2 = 18万円
- 小売店が販売管理ソフトと専用のレジ用タブレットを入れる(55万円):55万円 × 1/2 = 27.5万円
- 製造業が生産管理システムの構築を外注する(120万円):120万円 × 1/2 = 60万円 → 上限の50万円
金額は計算の仕方を見せるための仮の数字です。補助額は1,000円未満が切り捨てになります。たとえば対象経費が33万3,333円なら、半分の16万6,666円が16万6,000円になります。
市の案内ページには、予算枠3,000,000円に対する申請額が載っています。上限の50万円で申請が続けば、6件分ほどで埋まる大きさです。早めに支援機関へ相談するのがよさそうです。
何に使える?
対象にならないものを先に挙げます。
- 一般的な文章生成・情報検索・対話が主なAIツール(特定の業務への導入やシステム連携を伴うものを除く)
- 文書作成・メール・情報共有・表計算・決済手段の提供が主なソフト(同上)
- ソフト以外の用途にも使えるタブレットなどの機械器具(ソフトは対象)
- 売上に応じた決済手数料、振込手数料
- 消費税、特許印紙税などの税金
- 交付決定の前に支払った費用
対象になるのは、ツールの導入に直接必要な次の6つです。
- ソフトウェア購入費(運搬・宅配・郵送の費用を含む)
- 機械器具購入費(そのソフト専用のものに限る)
- 保守・サービス費
- 外注費・委託費(システムの設計・開発・構築に限る)
- クラウド利用費(通信費を含む)
- 研修費(操作技術や知識を身につける費用)
ツールの種類は2つに分かれます。AIツールは、データから規則性を学び、課題に推論や回答を返す機能を持つものです。IT・IoTツールは、予約管理、コミュニケーション、販売管理、決済管理、顧客管理、人事・給与管理、受発注管理、生産業務管理、財務・会計管理、電子商取引のどれかの機能を持つものです。
機械器具の例が募集要項に出ています。ほかの用途にも使えるタブレットは対象外、そのソフト専用で他に使えないタブレットは対象です。
月額課金のツールは、支払いを2月末までに終えた分だけが対象になります。年額払いにできるか、何か月分まで入るかは公式ページに書かれていないので、申請前に商工振興課へ聞くのが確実です。
申請までの順番と流れ
動く順に並べると、次のとおりです。
- 支援機関に相談する(事業者→和歌山県よろず支援拠点・和歌山商工会議所など)
- 事業計画書を作り、確認欄に確認をもらう(事業者→支援機関。目標は労働生産性の2%以上の伸び)
- 申請書類を出す(事業者→商工振興課。郵送か窓口持参。2026年10月1日から、予算枠に達するまで)
- 交付決定を待つ(和歌山市→事業者。決定の前に発注・契約をしない)
- ツールを導入し、支払いまで終える(事業者。2027年2月26日まで)
- 実績報告を出す(事業者→商工振興課。完了日から30日以内、かつ2月26日まで)
- 交付額の確定通知を受け、請求書を出す(事業者→商工振興課)
その後も手続きが1つ残ります。事業経過報告書は、令和8年度の補助事業者の場合、令和12年4月に提出します。
「労働生産性」は、売上総利益(売上高−売上原価)を労働投入量(従業員数×1人あたりの年間平均勤務時間)で割った値です。計画期間の終わりに、申請時の直近決算期より2%以上伸びる見込みが要ります。
たとえば、従業員5人で1人あたりの年間勤務時間が1,800時間なら、労働投入量は9,000時間です。売上総利益が3,600万円なら、労働生産性は1時間あたり4,000円です。2%伸びると4,080円になります。予約の電話対応や手書きの台帳づくりが減って、同じ人数・時間で売上総利益が増える、あるいは同じ利益を少ない時間でつくる、という変化を計画に書きます。数字は仮の例です。
「交付決定」は、市が補助の対象と認めて出す通知です。ここより前に発注・契約・支払いをした経費は、対象外になります。見積書を取るのはかまいませんが、契約は通知のあとです。
必要な書類
準備できた 0 / 14
- 口座振替申出書は、和歌山市に口座が未登録か、登録口座に変更があるときだけです。個人事業主は本人名義の口座で、通帳の写しなど口座番号が分かるものを添えます。
- 配置図・見取図は、導入する製品に機械器具が含まれるときです。設置予定の場所が分かるものを出します。
- 履歴事項全部証明書から法人事業概況説明書までは法人、住民票から青色申告決算書までは個人の書類です。
- 証明書は発行日から3か月以内のものに限ります。完納証明書が出せないと案内されたら、直近年度の非課税証明書を使います。
- 見積書は概算ではなく、工数や仕様が書かれたものが要ります。
- 事業計画書は、支援機関の確認欄に確認をもらってから出します。
実績報告では、収支決算書、領収書の写し、納品書や契約書の写し、導入したツールの画面や設定、利用状況が分かる書類も出します。領収書は支払者が申請者のものに限られます。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に動いた:発注、契約、支払いのどれかが決定より前だと、その経費は対象外です。
- 2月26日に間に合わなかった:期間内に事業が完了しないと、どんな理由でも交付されません。完了は、導入が終わった日と支払いが済んだ日の遅いほうです。
- 予算枠が埋まった:予算枠に達し次第、受付が終わります。早い者勝ちの面があります。
- 同じ経費で他の補助金を受けた:国や市など他の補助金と、同じ経費で重ねて受けられません。
- 導入したツールを目的外に使った:耐用年数のあいだに市長の承認なく譲渡や貸付をすると、収入の一部を納めることがあります。
交付決定のあとに対象経費が増えても、補助額は交付決定額を超えません。
併用・公表・保存のきまり
他の補助金との併用は、同じ経費でなければ可能です。同じ経費は、国・市その他の自治体どれからも二重に受けられません。
交付を受けた事業は、AI・IT・IoTツールの活用を広めるための事例として、市のホームページなどに載ることがあります。事業者名、所在地、業種、導入したツール、取組内容、導入効果、写真が予定されています。掲載前には、市が内容を確認します。
収入と支出の書類や帳簿は、事業完了の年度の翌年度の初日から5年間、保存します。市が現地調査に入ることもあります。
よくある質問
個人事業主でも申請できますか?
申請できます。対象は中小企業等経営強化法の中小企業者で、個人事業主も入ります。ただし個人の場合は、和歌山市内に住所と事業所の両方がなければなりません。書類は法人と少し違い、住民票の写しや直近の確定申告書控え、青色申告決算書か収支内訳書を出します。市税の完納証明書も、発行日から3か月以内のものが要ります。
ChatGPTのような文章生成AIは対象になりますか?
主な目的が一般的な文章生成・情報検索・対話の汎用AIは、対象外です。ただし、特定の業務への導入やシステム連携を伴うものは、この除外に当たらないと募集要項に書かれています。たとえば問い合わせ対応の業務に組み込む、社内の販売管理と連携させる、といった形です。自社の使い方が除外に当たるかは、申請前に商工振興課へ確認すると安心です。
支援機関とは、どこのことですか?
中小企業の支援をする機関です。募集要項には、和歌山県よろず支援拠点と和歌山商工会議所が例に挙がっています。事業計画書は、これらの支援を受けながら作り、確認欄に確認をもらう必要があります。ほかにどの機関が当たるかは、公式ページに一覧がありません。申請を考えたら、まず商工会議所かよろず支援拠点に相談すると進めやすくなります。
労働生産性が2%上がる見込みは、どう示すのですか?
事業計画書の「事業の達成目標」に、計画期間の終わりの労働生産性が申請時の直近決算期より2%以上伸びる見込みを書きます。労働生産性は、売上総利益を、従業員数と1人あたりの年間平均勤務時間をかけた労働投入量で割った値です。ツールで減る作業時間や増える売上を具体的に置いて、支援機関と一緒に数字を組むのが基本です。
申請はいつからいつまでですか?
受付は2026年10月1日からです。締切日は決まっておらず、予算枠に達し次第終わります。市の案内ページに申請受付状況が出ているので、動く前に見ておくと安心です。導入と支払いは2027年2月26日までに終える必要があるため、申請が遅いと工事や設定に使える期間が短くなります。書類づくりは早めに始めておきましょう。
交付決定の前にツールを契約してもいいですか?
避けてください。補助の対象になるのは、市の交付決定通知を受けたあとに発注・契約し、支払った経費だけです。決定より前に支払った経費は、認められません。見積書を取ること自体は問題ありません。契約や支払いの時期を、交付決定のあとにずらせるかをツール業者と話しておくと、手戻りが減ります。
月額課金のツールは、何か月分が対象になりますか?
公式ページに、何か月分まで対象という記載はありません。分かっているのは、クラウド利用費が対象経費に入ること、支払いを交付決定のあとに行い、同年度の2月末までに終えた分に限ることです。契約期間が2月26日をまたぐ場合の扱いは、商工振興課に確認してください。年額払いにすると、その年度の支払いで済ませやすくなる場合があります。
他の補助金と一緒に使えますか?
同じ経費でなければ、別の補助金と並行できます。同じ経費について、国、和歌山市その他の自治体の補助金を受けている、または受ける予定がある場合は、対象になりません。たとえばツールの利用料は市の補助で、別の機器の購入費は別の補助で、と経費を分ける形です。他制度を考えているなら、経費の線引きを先に決めてから申請します。
去年も別の市の補助金でツールを入れました。今年も申請できますか?
和歌山市のこの補助金に限れば、他の自治体や国の補助金を受けた事実は条件に入っていません。見るのは経費の重なりで、同じ経費で受けていなければ申請できます。去年すでに入れたツールの費用は、交付決定の前に支払った経費なので対象になりません。ただし令和7年度の和歌山市デジタルツール導入支援補助金を受けた場合は、令和8年度のこの補助金は対象外です。当年度か前年度に同じ要綱で受けた場合も同様です。
申請書類はどこへ出しますか?
和歌山市役所の商工振興課(本庁舎10階)へ、郵送か窓口への持参で出します。宛先は〒640-8511 和歌山市七番丁23、電話は073-435-1233です。様式は市のホームページから取れます。提出書類一式のzipファイルも案内ページにあります。実績報告や請求も、同じ課に出します。
