研修の費用だけでなく、社員が研修を受けている間の賃金も助成されます。ただし研修を始める1か月前までに「計画届」を労働局へ出していないと、助成の対象になりません。
主なコースは3つあります。人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースです。後ろの2つは令和8年度末までの時限措置です。
人材開発支援助成金の要点まとめ
正式名:人材開発支援助成金(人材育成支援コースほか)
だれが
- 申請者
- 事業者(雇用保険適用事業所の事業主)
- 対象業種
- 全業種
- 利用目的
- 社員研修・人材育成(人材確保・雇用)
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 制限なし(助成率は中小企業かどうかで変わる)
いくら
- 補助上限額
- 最大1億円(1事業所・年度。人材育成支援コースは1,000万円)
- 補助率
- 人材育成支援は経費の45〜75%+賃金800円/時(中小企業の基本額)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 通年(計画届は訓練開始日の6か月前〜1か月前)
- 公式サイト
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」
助成は大きく2つです。研修にかかった経費への助成と、研修中の賃金への助成です。助成率は、中小企業かどうかと、研修のあとに賃金を上げたかどうかで変わります。
うちの会社は対象になる?
次の5つがそろえば、申請できる見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
職業能力開発推進者は、研修や人事を担当する課長などが務めます。事業内職業能力開発計画は、社内の人材育成の方針をまとめた計画です。どちらも計画届を出す日までに整えれば足ります。有期実習型訓練では、この2つは不要です。
人材育成訓練、認定実習併用職業訓練、中高年齢者実習型訓練では、定期的なキャリアコンサルティングの機会を、就業規則か事業内職業能力開発計画に書いておくことも要ります。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 研修を始めてから計画届を出す
- ✕ 研修会社から費用が返金される
- ✕ 趣味教養・接遇マナーの講習
- ✕ 会社都合で従業員を解雇した
- ✕ 労働保険料を滞納している
解雇は、計画届を出す日の6か月前から支給申請までの間のものが見られます。会社都合の離職者が被保険者数の6%を超える場合(3人以下を除く)も対象外です。支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反があった場合も、対象になりません。
中小企業かどうかは、業種ごとの資本金か従業員数のどちらか一方で決まります。小売業は5,000万円以下または50人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下、卸売業は1億円以下または100人以下です。製造業などその他の業種は、3億円以下または300人以下です。
どのコースを使う?
使えるコースは、育てたい人と研修の中身で決まります。
- 職務に関わる研修を10時間以上受けさせたい:人材育成支援コース(人材育成訓練)
- 新卒などに仕事と座学を組み合わせて教えたい:人材育成支援コース(認定実習併用職業訓練)
- 契約社員を正社員にする前提で育てたい:人材育成支援コース(有期実習型訓練)
- 45歳以上の社員に実践的なスキルを教えたい:人材育成支援コース(中高年齢者実習型訓練)
- 高度なデジタル人材を育てたい:人への投資促進コース
- 新規事業やDXに伴う新しい分野を学ばせたい:事業展開等リスキリング支援コース
OFF-JTは、職場の外や業務を離れて受ける研修です。OJTは、仕事をしながら教わる訓練を指します。
人への投資促進コースと事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年度末までの時限措置です。計画届から支給申請までが、その期限に収まるかを逆算してください。
いくらもらえる?
助成額は、経費助成と賃金助成の合計です。表は人材育成支援コースの数字で、括弧内は大企業の値です。
| 訓練メニュー | 経費助成率 | 賃金助成(1人1時間) |
|---|---|---|
| 人材育成訓練(正規雇用) | 45%(30%) | 800円(400円) |
| 人材育成訓練(有期契約) | 70% | 800円(400円) |
| 認定実習併用職業訓練 | 45%(30%) | 800円(400円) |
| 有期実習型訓練 | 75% | 800円(400円) |
| 中高年齢者実習型訓練 | 60%(45%) | 800円(400円) |
研修のあとに賃金を5%以上上げると、助成が加算されます。資格手当を就業規則に定めて支払い、賃金が3%以上上がった場合も同じです。経費助成は15%分(有期実習型は25%分)、賃金助成は1時間200円分が上乗せされます。
経費助成には、研修時間に応じた1人1訓練あたりの上限があります。
| 研修時間 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 15万円 | 10万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
1事業所・年度あたりの支給の上限は、コースで違います。人材育成支援コースは1,000万円、人への投資促進コースは2,500万円(成長分野等人材訓練は1,000万円、自発的職業能力開発訓練は300万円)、事業展開等リスキリング支援コースは1億円です。賃金助成の対象になる時間は、人材育成支援コースで1人1訓練につき1,200時間までです。
事業展開等リスキリング支援コースの経費助成率は75%(大企業60%)、賃金助成は1時間1,000円(大企業500円)です。人への投資促進コースは、メニューごとに率が違います。
中小企業が人材育成訓練(正規雇用)を使う場合の計算例です。研修費は仮の金額です。
- 60時間の外部研修を1人が受ける。受講料は20万円:20万円 × 45% = 9万円、賃金は800円 × 60時間 = 4.8万円、合計13.8万円
- 同じ研修のあとで賃金が5%上がった:20万円 × 60% = 12万円、賃金は1,000円 × 60時間 = 6万円、合計18万円
- 150時間の研修で受講料が80万円:80万円 × 45% = 36万円だが、上限の30万円で止まる。賃金は800円 × 150時間 = 12万円、合計42万円
賃金助成の対象は、所定労働時間内に受けた研修の時間です。eラーニングと通信制の研修は、経費助成だけで賃金助成はありません。
何に使える?
対象にならない研修
- 普通自動車の運転免許の取得講習など、職務に間接的に必要なもの
- 接遇・マナー講習など、職業人としての基礎的なもの
- 日常会話程度の語学など、趣味教養を目的とするもの
- コンサルタントの経営指導、社内の業績報告会や制度の説明
事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日以降に出す計画届から、DXやGXの研修でも、職務に間接的に必要な内容や、職業人として共通の内容(概念の理解、マナーなど)にとどまるものは対象外です。
対象になる研修
- 職務に直接関連する専門的な知識・技能を学ぶ10時間以上の研修
- 事業内で行う研修と、教育訓練機関で受ける研修の両方
- 研修会社などが開くeラーニングや通信制の研修(経費助成のみ。自社で行う研修と、認定実習併用・有期実習型・中高年齢者実習型の座学は対象外)
研修会社から返金や協賛金を受け取ると、経費の全額が助成の対象外になります。「実質無料で受けられる」とうたう提案には、特に注意してください。不正受給と判断されると、事業主名が公表されることがあります。
申請の流れ
- 職業能力開発推進者を選び、事業内職業能力開発計画を作る(事業主。計画届を出す日までに)
- 職業訓練実施計画届を出す(事業主→管轄の労働局。訓練開始日の6か月前から1か月前まで)
- 計画どおりに研修を実施する(事業主。経費は支給申請までに全額払う)
- 支給申請書を出す(事業主→労働局。訓練終了日の翌日から2か月以内)
- 支給決定を待つ(労働局。審査は支給申請のあとにまとめて行われる)
計画届を出しても助成が確実に支給されるわけではありません。新しく雇った労働者だけが対象で、雇入れから訓練開始まで1か月以内の場合は、訓練開始日の前日までに出せます。
提出は窓口、郵送、電子申請のどれかです。郵送は消印ではなく、労働局に届いた日が提出日になります。電子申請にはGビズIDが要ります。
認定実習併用職業訓練を使うなら、別に厚生労働大臣の認定が要ります。認定の申請は、訓練開始日の30日前までです。
必要な書類
準備できた 0 / 15
計画届のときに出すのは、上から事前確認書までと、研修会社の資料(事業外訓練の場合)です。残りは支給申請のときに出します。賃金台帳と出勤簿、賃金助成の内訳、OFF-JT実施状況報告書は、通学制の研修で賃金助成を受けるときの書類です。支給申請承諾書(様式第12号)は研修会社に記入を頼みます。価格設定の疎明書(様式第28号)は、経費助成を申請するときに、計画届の提出日に関わらず出します。実際の書類は、使うコースの様式で確かめてください。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 計画届の期限に遅れた:研修を始める1か月前を過ぎると、原則として助成の対象になりません。
- 経費の返金を受けた:研修会社から金銭や便益を受けると、負担したことになりません。
- 有期実習型で正社員に転換しなかった:支給申請までに転換していないと助成されません。
- 変更届を出さずに内容を変えた:日時や場所を変えて実施しても、その部分は対象外になります。
よくある質問
研修を始めたあとで申請しても間に合いますか?
間に合いません。職業訓練実施計画届は、訓練開始日の6か月前から1か月前までに出す決まりです。期間を過ぎた計画は、原則として助成の対象になりません。例外は、新しく雇った労働者だけを対象にして、雇入れから訓練開始まで1か月以内の場合です。その場合は訓練開始日の前日まで出せます。
計画届を出せば助成金は必ずもらえますか?
もらえるとは限りません。令和7年度以降は、助成金を出すかどうかの審査が、支給申請のあとにまとめて行われます。計画届を出しても、支給が約束されるわけではありません。研修の中身や経費の負担や賃金の支払いなどの要件を支給申請の時点で満たしているかを見られます。
受講料を研修会社が値引きや返金してくれる場合はどうなりますか?
助成の対象外になります。助成を受けるには、研修にかかった経費を、支給申請までに事業主が全額負担する必要があります。返金や協賛金、クーポンなどを受け取ると、実質的な減額とみなされて全額が対象外です。悪質な場合は、事業主名の公表や刑事告訴にもつながります。受講料が通常より高い場合も、差額は対象になりません。
中小企業かどうかはどう決まりますか?
業種ごとに決まった資本金か従業員数のどちらか一方を満たせば、中小企業です。小売業は5,000万円以下または50人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、その他の業種は3億円以下または300人以下です。判定は支給申請の時点で行われます。法人格のない事業主などは、従業員数で判断します。
パートや契約社員も研修の対象になりますか?
雇用保険の被保険者であれば対象になり得ます。人材育成訓練では、有期契約労働者などの経費助成率が70%で、正規雇用の45%より高くなっています。正社員にする前提の研修なら、有期実習型訓練が使えます。ただし有期実習型は支給申請までに正規雇用へ転換していることが条件です。同じ労働者には1回までです。
eラーニングの研修でも助成されますか?
研修会社などが開く研修なら、経費助成の対象になります。賃金助成は対象外です。標準学習時間が定められていないeラーニングの経費助成の上限は、「10時間以上100時間未満」の区分で扱われ、中小企業なら1人1訓練で15万円までです。計画届には、契約期間や標準学習時間、進捗を管理できる仕組みが分かる資料を添えます。
研修中の賃金はいくら助成されますか?
人材育成支援コースでは、中小企業で1人1時間800円、大企業で400円です。研修後に賃金が5%以上上がると、中小企業は1,000円、大企業は500円になります。対象は所定労働時間内に受けた時間で、1人1訓練につき1,200時間までです。専門実践教育訓練の指定講座は1,600時間までになります。
助成金はどこに申請しますか?
事業所を管轄する都道府県労働局です。窓口への持参、郵送、電子申請のどれでも出せます。都道府県によっては、ハローワークで受け付ける場合もあります。電子申請を使うなら、GビズIDの取得が先に要ります。IDの発行には日数がかかるので、計画届の期限から逆算して早めに取っておくと安心です。
人への投資促進コースは、いつまで使えますか?
令和8年度末までの時限措置です。事業展開等リスキリング支援コースも同じです。計画届を出して研修を実施し、支給申請をするまでの全体が、期限に収まるかを逆算してください。人材育成支援コースには、終了の予定は示されていません。延長や終了は変わることがあるので、厚生労働省のページで確かめてください。
研修を途中で変更したいときはどうしますか?
変更届を出します。実施日時、場所、研修の内容などを変える場合は、変更前の実施日の前日までに出すのが原則です。出さずに変更後の研修を実施すると、その部分は助成の対象になりません。対象労働者を増やす場合は、訓練開始日の前日までです。やむを得ない理由の変更は、変更後の実施日の翌日から7日以内になります。
認定実習併用職業訓練の「大臣認定」とは何ですか?
仕事での実習と座学を組み合わせた訓練が、厚生労働大臣の認定を受ける手続きです。訓練開始日の30日前までに、労働局かハローワークへ書類を出します。対象は15歳以上45歳未満で、訓練期間は6か月以上2年以下です。大臣認定を受けても、助成の要件を満たさない場合があるので、両方の条件を確かめてください。
問い合わせ先はどこですか?
事業所を管轄する都道府県労働局です。窓口の一覧は、厚生労働省の助成金のページに載っています。どのコースを使うか、大臣認定が要るかで迷うときは、計画届を出す前に相談しておくと、出し直しを防げます。パンフレットはコースごとに分かれていて、使うコースの詳細版で支給要件を確かめられます。
