旅館や飲食店のような民間事業者でも、この助成金は使えるのか。使えます。ただし3つある区分のうち、民間事業者が申請できるのは「アドベンチャーツーリズム推進」と「安定集客促進」の2つで、「クルーズ船客向け」は観光協会と商工団体に限られます。
もう1つ、取り違えやすい点があります。申請の締切は令和8年12月18日ですが、助成対象期間は令和9年4月1日からで、それより前に契約・支払いをした経費は対象になりません。
多摩・島しょの新たな観光の魅力創出支援事業助成金の要点まとめ
正式名:多摩・島しょの新たな観光の魅力創出支援事業助成金(第2回募集)
だれが
- 申請者
- 観光協会・商工会・観光関連事業者など(区分で異なる)
- 対象業種
- 観光関連(宿泊・飲食・小売・旅行者向けサービスなど)
- 利用目的
- 観光コンテンツ開発・誘客促進・施設整備
- 対象地域
- 東京都(事業の実施場所は多摩・島しょ地域)
- 従業員数
- 公式ページに記載なし(東京観光財団へお問い合わせください)
いくら
- 補助上限額
- 3,000万円
- 補助率
- 助成対象経費の3分の2
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年10月15日〜2026年12月18日(必着)
- 事業の完了
- 2029年3月31日まで(最長2年間)
上限3,000万円に届くのは、「安定集客促進」のうち新たな観光施設の整備に係る取組と認められた場合だけです。ほかの枠は2,000万円で、支援予定数は全体で8件です。助成を受けられるのは、東京観光財団の審査に通った事業だけで、全員に出るわけではありません。
3つの区分の違い
どの区分で出すかで、申請できる人と上限が変わります。申請書は区分を1つ選んで出します。
| 区分 | 申請できる人 | 上限 | 狙い |
|---|---|---|---|
| アドベンチャーツーリズム推進 | 観光協会等、商工会等、NPO法人、一般社団法人など、観光関連の民間事業者 | 2,000万円 | 自然・アクティビティ・文化体験のうち2つ以上を組み合わせた旅行の推進 |
| 安定集客促進 | 同上 | 2,000万円(施設整備枠は3,000万円) | 閑散期・平日・荒天時の集客 |
| クルーズ船客向け | 観光協会等、商工会等のみ | 2,000万円 | 寄港中に楽しめる観光コンテンツの開発(実施地は島しょ地域のみ) |
民間事業者の条件は、都内に本店か支店があること、令和8年10月15日時点で1年以上事業を営んでいること、助成の成果を活用して都内で事業を続ける予定であることなどです。本店や支店が23区内にあっても、事業を多摩・島しょ地域で行うなら対象になります。
うちは対象になる?
次の4つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
多摩地域は東京都内の区部と島しょ地域を除く全域、島しょ地域は大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村、小笠原村です。民間事業者は、旅館業法の許可を受けた宿泊事業者、飲食店営業か喫茶店営業の許可を受けた飲食事業者、販売場のある小売事業者などが例に挙がっています。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 開業や運転資金が目的の事業
- ✕ 特定の顧客向けで汎用性がない事業
- ✕ 単発で地域への定着が見込めない事業
- ✕ 令和9年3月までに契約済みの経費
勘違いされやすい点
上限3,000万円は、施設整備の枠だけ
アドベンチャーツーリズム推進とクルーズ船客向けは、どちらも上限2,000万円です。3,000万円になるのは、安定集客促進のなかで、新たな観光施設の整備に係る取組と認められた場合に限られます。この枠は支援予定数が3件までです。希望する場合は、申請書(第1号様式)にその旨を書きます。審査で施設整備の取組と認められなくても、2,000万円の上限で採択される場合があります。その場合に採択を希望するかも、申請書でチェックして選びます。上限が下がっても、事業の規模を縮小したり内容を変えたりはできません。
下限額が100万円になっている
3区分とも、公式は「助成限度額2,000万円(下限額100万円)」と書いています。交付要綱の第6条は、この下限額を「助成金額」の定めの中に置いています。助成率3分の2で逆算すると、助成対象経費(税抜)が150万円以上の事業が目安です。小規模な取組は、申請前に財団へ確かめてください。
アドベンチャーツーリズムの条件は「3要素のうち2つ以上」
自然(海、川、山、温泉など)、アクティビティ(体を動かすこと自体が主目的の活動)、文化体験(その土地の風習、歴史、生業、食文化など)の3つのうち、2つ以上で構成される旅行が対象です。たとえば、川の自然とカヌーを組み合わせたツアーは条件に合います。自然だけ、体験だけの1要素で完結する取組は、このままでは条件を満たしません。
民間事業者はクルーズ区分に申請できない
クルーズ船客向けの区分は、観光協会等と商工会等だけです。 事業を行う場所も、島しょ地域に限られます。申請には立地自治体の推薦書(第1号様式別紙2)も要ります。民間事業者がクルーズ船客向けの事業をしたい場合は、観光協会などと組む形を財団に相談してください。
いくらもらえる?
いくらもらえるか計算する
補助率 助成対象経費の3分の2 / 上限 3000万円
助成率は、助成対象経費の3分の2です。1,000円未満は切り捨てます。
- 機器導入とプロモーションで助成対象経費(税抜)が合計600万円の取組:600万円 × 2/3 = 400万円
- 上限2,000万円に届く取組(アドベンチャー・安定集客・クルーズ):助成対象経費3,000万円 × 2/3 = 2,000万円
- 新たな観光施設の整備で上限に届く取組(安定集客のみ):助成対象経費4,500万円 × 2/3 = 3,000万円
助成対象経費が4,500万円を超えても、助成金は3,000万円までです。差額は自己負担になります。
事業で収入(入場料、協賛金など)が出る場合は、助成金が減ることがあります。募集要領の例では、総事業費990万円、助成対象経費900万円、事業の収入500万円の場合、助成金の予定額は600万円(900万円 × 2/3)、自主財源分は390万円です。収入のうち自主財源分を超える110万円が収益相当額となり、交付確定額は490万円(600万円 − 110万円)になります。
助成金は、事業が終わって実績を検査したあとに交付されます。 事業の途中は、全額を自分で立て替えて支払います。
何に使える?
対象にならないもの
- 土地・建物・施設の取得、造成、補償にかかる経費
- 助成事業者の人件費
- 土地の賃借料など、不動産を借りる経費
- 事務用消耗品、施設の維持管理費、光熱水費
- 消費税、地方消費税
- 車両・船舶の購入費(専ら事業に使うキャンピングトレーラーなどは可)
- 1点1万円未満の機器・備品、中古品
- 国・都・財団・東京都中小企業振興公社などの助成を受けた経費
対象になるもの
- 外注・委託費(マーケティング調査、モニターツアー、イベント、デザイン、ブランディングの委託)
- 人材育成費(ガイド研修、マニュアル作成。これだけでは申請できない)
- 産業財産権の出願費(商標権、特許権など。出願後の登録料などは対象外)
- 広告費(外部事業者に委託するパンフレット、HP、映像の制作、媒体への広告、自社開催のPRイベント)
- 専門家指導費(新たに受ける外部専門家の指導。これだけでは申請できない)
- ICT化経費(システム構築、ソフトウェア導入、クラウド利用)
- 機器・備品等の購入費(1点1万円以上)
- 施設整備費(安定集客促進とクルーズ船客向けの経費一覧に載っている)
アドベンチャーツーリズム推進の経費一覧は、機器・備品等の購入費までで、施設整備費の費目がありません。施設整備を含めたい場合は、どの区分で申請するかを財団へ確認してください。施設整備費は、申請する事業と直接関係する工事に限られます。老朽化に伴う単なる改装、自分で材料を調達して行う工事、交付決定前に発注・施工した工事は対象外です。
申請の流れ
- 募集要領と様式をダウンロードする(事業者→東京観光財団のサイト。区分に合った第1号様式を選ぶ)
- 見積書を取る(事業者→業者。1件100万円(税込)以上は2社以上から。100万円未満でも1社は必要)
- 郵送と電子データで申請する(事業者→東京観光財団 地域振興部 事業課。令和8年12月18日17時必着。持ち込み不可、メールのみも不可)
- 一次審査(書類)を受ける(令和9年1月上旬〜2月上旬)
- 二次審査(面接)を受ける(令和9年2月中旬〜3月上旬。コンサルタントは同席できない)
- 採択の通知を受ける(令和9年3月中旬〜下旬、交付決定通知書で通知)
- 令和9年4月1日以降に契約・実施・支払いをする(事業者→業者。最長令和11年3月31日まで)
- 実績報告を出し、完了検査を受ける(事業完了から30日以内)
- 請求書を出して助成金を受け取る(確定通知のあと)
必要な書類
準備できた 0 / 14
営業収支(別添2)はクルーズ区分では出しません。クルーズ区分は、そのかわりに立地自治体の推薦書が要ります。申請書は原本(実印)1部とコピー1部です。申請書類のうち資金計画(別添1)の資金調達内訳には、助成金を書けません。助成金は事業の完了検査のあとに払われるので、それまでの資金は自己資金や借入で書きます。個人事業者や観光協会などは、出す書類が一部変わります(個人事業者は開業・廃業等届出書の写しや住民税の納税証明書など)。区分ごとの別紙1(申請時必要書類一覧)で、最終の一覧を確認してください。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 助成対象期間の前に契約・支払いをした:令和9年4月1日より前の契約や支払いは対象外です。契約は期間の開始後、支払いも期間内に終えます。
- 競争の手続きを飛ばした:1件100万円(税込)以上の発注は、原則2社以上から見積を取って業者を選びます。同じ業者との契約を100万円未満に小分けする行為は不正になります。
- 支払い方法が決まりに合わない:支払いは、交付決定を受けた団体名と代表者名義の口座からの振込が原則です。現金払いは総額10万円未満で、振込が難しい場合に限られます。
- 関連会社と取引した:親会社、子会社、グループ会社、代表者の三親等以内の親族が経営する会社との取引は、原則として制限されます。
- 返還を命じられた:不正や目的外の使用があると、交付決定が取り消され、返還を求められます。年10.95%の違約加算金もかかります。
- 申請内容を無断で変えた:事業内容や実施期間の変更、1つの経費区分での20%以上の変更は、財団の承認が要ります。承認の前に進めないでください。
併用・消費税のこと
国、東京都、東京観光財団、東京都中小企業振興公社などの助成を受けた経費は、この助成金の対象になりません。ただし、申請者が観光協会等の場合は、市町村からの補助金との併用ができます。同一テーマ・内容で他の助成を受けている場合も申請できません。
本事業への申請は、1事業者につき1申請です。
消費税と地方消費税は、助成対象外経費の一覧に入っています。見積書には税込と税抜の両方の金額を書きます。
よくある質問
民間の旅館や飲食店でも申請できますか?
アドベンチャーツーリズム推進と安定集客促進の2区分なら申請できます。条件は、都内に本店か支店があること、令和8年10月15日時点で1年以上事業を営んでいること、成果を活用して都内で事業を続けることなどです。クルーズ船客向けは、観光協会等と商工会等に限られます。民間事業者は、宿泊・飲食・小売の許可や営業実績を示す書類をそろえる必要があります。
本店が23区内にある会社でも申請できますか?
申請できます。事業者の本店や支店が23区内にある場合でも、多摩・島しょ地域で対象事業を実施するなら対象です。ただし民間事業者は、都内に登記簿上の本店か支店があり、履歴事項全部証明書で確認できることが条件で、法人の場合は都税事務所発行の納税証明書も出します。事業を行う場所が多摩・島しょ地域であることは、申請書で示します。
上限3,000万円になるのはどんなときですか?
安定集客促進のなかで、新たな観光施設の整備に係る取組と審査で認められたときです。この枠は支援予定数が3件までで、希望する場合は第1号様式に書いて出します。審査で認められなくても、2,000万円の上限で採択される場合があります。アドベンチャーツーリズム推進とクルーズ船客向けは、どちらも上限が2,000万円です。
助成金はいつ受け取れますか?
事業が終わったあとです。事業を終えて実績報告書を財団へ出し、完了検査を受けます。助成金の額が確定したあと、請求書を出すと、指定した口座へ振り込まれます。事業の途中は、経費を全額自分で立て替えて支払います。助成対象期間は令和9年4月から最長2年間なので、資金繰りは申請の段階で計画しておいてください。
令和8年度中に業者へ発注してもいいですか?
避けてください。助成対象期間は令和9年4月1日から始まります。それより前に契約や支払いをした経費は、助成の対象になりません。令和8年12月に申請し、令和9年3月に採択されても、契約は4月1日以降に結びます。見積を取る、業者と仕様を相談する、といった準備は期間前にできます。
100万円以上の発注に決まりはありますか?
1件100万円(税込)以上の発注は、原則2社以上から競争で業者を選びます。申請者自身が、中立な立場で2社以上から見積書を取ります。受託予定の業者が決まっていて、他社の見積を高くするなど、価格競争が働かない行為は不正です。契約を100万円未満に小分けする行為も同じです。見積の取り方は、申請前に財団に確認すると安全です。
申請書類は、メールだけで出せますか?
出せません。簡易書留や特定記録など、配達の記録が残る方法で郵送します。持ち込みは受け付けません。あわせて、全ての申請書類の電子データも、chiiki@tcvb.or.jpへ送ります。編集できるExcelやWord形式で送り、PDFは避けます。締切は令和8年12月18日17時の必着です。
一度出した申請書は、あとから直せますか?
直せません。申請書を出したあとの修正や加筆は認められず、書類も返却されません。審査の経過や結果への問い合わせにも応じてもらえません。出す前に、区分の選択、金額、見積書、添付書類の抜けを確認してください。一次審査を通ると、二次審査(面接)に進みます。面接にコンサルタントは同席できません。
助成事業で収入が出たら、どうなりますか?
収入が自主財源分を超えると、助成金が減ります。入場料、協賛金、寄付金など、事業に係る収入は帳簿で管理して実績報告で出します。収益相当額は、事業の収入から自主財源分を引いて出し、助成金の予定額から差し引いた額が交付額になります。収入が出る事業は、申請の段階で営業収支の見通しも出します。
問い合わせ先はどこですか?
申請方法や書類は、公益財団法人東京観光財団 地域振興部事業課(電話03-5579-2682、メールchiiki@tcvb.or.jp)です。事業全般については、東京都産業労働局観光部振興課(電話03-5000-7321)です。区分の選び方、下限額の扱い、施設整備の枠への当てはめなど、公式ページで分からない点は、申請の前に財団へ確かめてください。
