通常枠の条件は、申請額150万円の線で入れ替わります。公募要領が賃上げ計画を必須にするのも、原則としてその線から上だけです。
申請額が150万円以上になると、4プロセス以上のITツールと、賃上げ計画の従業員への表明が必要になります。この記事は6次締切分(2026年10月30日17時)です。旧称は「IT導入補助金」で、2026年度から名前が変わりました。
デジタル化・AI導入補助金 通常枠の要点まとめ
正式名:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠(6次締切分)
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・個人事業主)
- 対象業種
- 業種の指定なし(中小企業・小規模事業者等)
- 利用目的
- 登録されたITツール(ソフト・クラウド)の導入
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 業種ごとの上限あり(資本金か従業員数のどちらか)
いくら
- 補助上限額
- 450万円(150万円以上は4プロセス以上が必要)
- 補助率
- 1/2以内(最低賃金近傍の事業者は2/3以内)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年3月30日〜2026年10月30日17時(6次締切)
- 事業の完了
- 交付決定〜2027年5月31日17時(予定)
うちの会社は対象になる?
次の6つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
法人は日本国内で法人登記された会社、個人事業主は日本国内に事業場があることが条件です。資本金と従業員数は、どちらか一方が上限以内なら足ります。SECURITY ACTIONは「一つ星」か「二つ星」を宣言します。
最低賃金は申請の直近月で比べます。労働生産性の計画は、3年間の事業計画で年平均3%以上伸ばす形で立てます。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ みなし大企業にあたる
- ✕ 直近3年の課税所得の平均が15億円超
- ✕ IT導入支援事業者に登録している
- ✕ 宗教法人・法人格のない任意団体
- ✕ 決算を一度も終えていない
みなし大企業は、大企業が株式の2分の1以上を持つ会社などです。IT導入支援事業者は、登録しようとしている事業者も対象外です。任意団体は同窓会・PTAなどです。事務局のよくあるご質問は、決算を行っておらず実績値を確認できない事業者を対象外としています。開業したばかりでも、決算書などの必要書類がそろえば申請できます。
資本金と従業員数の上限は業種で違います。製造業・建設業・運輸業は資本金3億円以下か従業員300人以下です。卸売業は1億円以下か100人以下、サービス業は5,000万円以下か100人以下、小売業は5,000万円以下か50人以下です。ソフトウェア業は3億円以下か300人以下、旅館業は5,000万円以下か200人以下です。
GビズIDプライムは、国の電子申請に共通で使うIDです。公募要領には、発行までおおむね2週間と書かれています。
労働生産性は、(営業利益+人件費+減価償却費)÷年間の総労働時間で計算します。
IT導入補助金2025の通常枠か複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、交付決定日から12か月以内は通常枠に申請できません。2022年から2025年までに交付決定を受けた事業者は、申請できる場合でも要件が重くなります。
いくらもらえる?
補助額は、申請額で2つに分かれます。
| 申請額 | 必要なITツール | 賃上げ計画 |
|---|---|---|
| 5万円以上150万円未満 | 1プロセス以上 | 出すと審査で加点 |
| 150万円以上450万円以下 | 4プロセス以上 | 必須 |
2022年から2025年のIT導入補助金で交付決定を受けた事業者は、150万円未満でも賃上げ計画が必須で、給与の目標も重くなります。
プロセスとは、ソフトウェアが受け持つ業務のまとまりのことです。公募要領では、顧客対応・販売支援、決済・債権債務・資金回収、供給・在庫・物流、会計・財務・経営、総務・人事・給与・労務などに分けています。どのツールがいくつ数えられるかは、登録内容で決まります。申込前に、事務局のITツール検索で確かめてください。
補助率は原則として1/2以内です。次の条件に当てはまると、2/3以内に上がります。
- 2024年10月から2025年9月までの間に、「その期間の地域別最低賃金以上、2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇っている従業員が、全従業員の30%以上いる月が3か月以上ある
最低賃金すれすれで雇っている人が多い事業者を、手厚く支える仕組みです。基準の期間は公募要領で固定されています。今から賃金を動かしても、2/3にはなりません。
計算例は次のとおりです。
- 会計ソフトとクラウド利用料で経費が100万円:100万円 × 1/2 = 50万円
- 2/3の条件に当たる事業者で経費が90万円:90万円 × 2/3 = 60万円
- 経費が299万円(1/2のまま):299万円 × 1/2 = 149.5万円 → 150万円未満なので、過去に採択歴がなければ1プロセスで足り、賃上げ計画は加点になる
- 経費が300万円:300万円 × 1/2 = 150万円 → 4プロセスと賃上げ計画が必須になる
- 経費が900万円:900万円 × 1/2 = 450万円 → 上限に届く(2/3なら経費675万円で届く)
経費が300万円前後の事業者は、150万円の線で迷います。公募要領には、150万円以上を申請できる条件を満たしていても、交付申請の補助額を5万円以上150万円未満に抑えることは可能と書かれています。賃上げ計画を約束できない会社は、この道を選べます。編集部としては、賃上げ計画の見通しが立たないなら、この選択を先に検討することを勧めます。
何に使える?
対象にならないもの
- 交付決定の前に購入・契約したITツール
- 中古品、リースやレンタルで使うITツール(サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)
- 無償で提供されているもの、申請時に利用金額が決まらないもの
- 交通費・宿泊費・申請代行費・消費税
- ホームページやECサイトの制作費
- パソコンやタブレットなどのハードウェア(通常枠の対象経費は、ソフトウェア購入費・クラウド利用費・導入関連費です)
対象になるもの
- ソフトウェア本体とクラウド利用料(買取もサブスクも最大2年分)
- 機能拡張・データ連携ツール・セキュリティ対策のオプション(最大1年分)
- 導入コンサルティング・導入設定・研修・保守サポートなどの役務(合計200万円まで。保守サポートは最大2年分)
大前提があります。対象は、IT導入支援事業者が事務局に登録したITツールだけです。自社で選んだ未登録のツールは、補助の対象になりません。
IT導入支援事業者とは、ITツールを売り、申請の手伝いまでする事業者です。事務局への登録が審査で認められた事業者だけが名乗れます。
申請の流れ
- IT導入支援事業者に相談して、ITツールを選ぶ(事業者→IT導入支援事業者。契約はまだしません)
- GビズIDプライムを取り、SECURITY ACTIONを宣言する(事業者→GビズID・IPA。IDの発行におおむね2週間かかります)
- 申請マイページの招待を受けて、開設する(IT導入支援事業者→事業者。招待のあと、事業者が事務局のページで開設します)
- 事業計画とITツールの情報を入力して、交付申請を出す(事業者とIT導入支援事業者→事務局。2026年10月30日17時まで)
- 交付決定を待つ(事務局→事業者。2026年12月10日の予定です)
- ITツールを契約・導入して、代金を払う(事業者とIT導入支援事業者。2027年5月31日17時までの予定)
- 実績報告を出す(事業者とIT導入支援事業者→事務局)
交付決定の前にITツールを契約・発注すると、補助の対象外になります。順番は、契約と発注が先で、納品と支払いはそのあとです。請求書が届く前に支払うのも認められません。
締切日の17時を過ぎると、事務局は理由を問わず受け付けません。直前はアクセスが集中するので、余裕を持って出してください。
必要な書類
準備できた 0 / 9
法人は履歴事項全部証明書・法人税の納税証明書・直近の貸借対照表と損益計算書を出します。履歴事項全部証明書は発行から3か月以内のものです。納税証明書は法人も個人事業主も「その1」か「その2」です。
個人事業主は本人確認書類・所得税の納税証明書・令和7年分の確定申告書の控え・青色申告決算書か収支内訳書を出します。本人確認書類は運転免許証か運転経歴証明書か住民票で、住民票は発行から3か月以内です。確定申告書の控えは受付日時が分かるものを使います。
賃金状況報告シートは、補助率2/3や賃金に関する加点を受けるときに出します。IT戦略マップのPDFは、IT戦略ナビwithの加点を受けるときに出します。
納税証明書は、納めた領収書ではありません。税務署が発行する証明書を使います。マイナンバーや保険者番号が写っている書類は、その部分を黒塗りして出します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に契約・発注した:補助の対象外です。納品や支払いが先になっていた場合も、補助金が出ないことや交付決定の取消しになることがあります。
- 支払いが決まった方法ではない:支払いは、銀行振込かクレジットカードの1回払いだけです。支払元は補助事業者の名義の口座にします。現金払いや分割払いは認められません。
- 賃上げの目標に届かなかった:賃上げ計画が必須の事業者が対象です。150万円以上を申請した事業者と、2022年から2025年に交付決定を受けた事業者がそうです。事業場内の最低賃金の目標を外した年で、返還額が決まります。1年目なら全額、2年目なら3分の2、3年目なら3分の1です。付加価値額の伸びが年平均1.5%に届かない場合や、天災などの事情がある場合は返還を求められません。給与支給総額の年平均3%の目標を外した場合は、全額の返還を求められることがあります。効果報告より前に辞退した場合も、目標の未達とみなされて全額の返還です。
- 加点を受けたのに達成しなかった:効果報告で未達が報告されてから18か月は、中小企業庁が所管する補助金の審査で大幅に減点されます。
- 過去のソフトとプロセスが完全に重なる:IT導入補助金2024・2025で交付決定を受けたソフトと、今回のソフトのプロセス(業務の範囲)が完全に一致すると不採択です。一部が重なるだけなら減点です。
- 値引きやキャッシュバックを受けた、ツールを解約した:実質的な還元は不正な申請とみなされます。解約や廃業の場合は、辞退の手続きが必要です。補助金の返還を求められることがあります。
6次の変更点と、ほかの回・ほかの枠との違い
通常枠は、2026年3月30日から受付を始めました。締切は何回かに分かれています。6次締切分は次のとおりです。
- 締切:2026年10月30日(金)17時
- 交付決定:2026年12月10日(木)の予定
- 事業の実施と実績報告:2027年5月31日(月)17時までの予定
7次締切分の項目は事務局のスケジュールページにありますが、日程は載っていません。事務局は、確定した回の日程だけを公表しています。7次があるのか、日程がいつになるのかは、公式ページの更新を待つことになります。
6次では、加点項目が1つ増えました。2026年8月28日の公募要領の改訂で、中小機構の「IT経営サポートセンター」の利用が加点になりました。第6回公募回(6次締切分)から使われる加点です。
条件は、2026年8月1日以降に利用を申し込んでいることです。交付申請の締切日の前月末日までに、利用が確認できる必要があります。6次なら2026年9月30日です。この日を過ぎている場合、6次でこの加点は取れません。
同じ改訂で、審査事項に「セキュリティ対策を進めているか」が加わりました。
枠ごとの違いも、先に押さえておきます。
| 枠 | 補助額 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 5万円〜450万円 | ソフト・クラウドで業務全体を見直す |
| インボイス枠 | 最大350万円 | 会計・受発注・決済を、インボイス制度に合わせる |
| セキュリティ対策推進枠 | 5万円〜150万円 | お助け隊サービスでサイバー攻撃に備える |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 最大3,000万円 | 商店街など複数の事業者がそろって導入する |
通常枠は、1つの事業者につき1申請です。同じ期間にインボイス枠とセキュリティ対策推進枠にも申請して、交付を受けることは認められています。ただし、複数者連携デジタル化・AI導入枠とは同時に申請できません。インボイス枠に申請している事業者は、通常枠の審査で減点されます。お助け隊サービスをこの枠のオプションに入れて申請する場合は、セキュリティ対策推進枠と重ねて申請できません。同じ経費を2つの枠に重ねて申請すると、全額の返還を求められることがあります。特にオプションと役務は重なりやすいので、IT導入支援事業者と一緒に切り分けてください。
この記事は通常枠だけを扱います。5つの枠をまとめた記事と、複数者連携枠の記事は、次のとおりです。
よくある質問
通常枠で450万円をもらうには何が必要ですか?
申請額が150万円以上450万円以下になる必要があります。条件は3つです。1つ目は、ITツールに4プロセス以上が含まれていることです。2つ目は、賃上げ計画を従業員に表明済みであることです。3つ目は、3年間の事業計画で、事業場内の最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすることです。補助率が1/2なら経費900万円、2/3なら経費675万円で上限に届きます。加点を狙うなら、最低賃金は+50円以上にします。
申請額が150万円未満なら、賃上げ計画は要りませんか?
2022年から2025年のIT導入補助金で交付決定を受けていない事業者は、要りません。出せば審査で加点されます。加点を受けるには、3年間の事業計画を立て、賃上げ計画を交付申請の時点で従業員に表明しておく必要があります。ただし2022年から2025年に交付決定を受けた事業者は、150万円未満でも賃上げ計画が必須です。給与支給総額の年平均成長率は3.5%以上になります。医療機関・介護事業者・社会福祉事業・学校などは、この賃上げ要件の適用外です。
補助率2/3になるのはどんな事業者ですか?
2024年10月から2025年9月の間に、最低賃金すれすれで雇う人が多い事業者です。具体的には、地域別最低賃金以上で2025年度改定の最低賃金未満の従業員が、全従業員の30%以上いる月が3か月以上あることが条件です。2/3を使うには、「賃金状況報告シート」を出します。当てはまらない事業者の補助率は1/2以内です。この期間は固定なので、申請の直前に賃金を動かしても条件は変わりません。
過去にIT導入補助金を受けた会社は不利になりますか?
不利になる点が3つあります。1つ目は、賃上げ計画の給与の目標が、年平均3.5%以上に上がることです。2つ目は、審査で減点されることです。3つ目は、2023年から2025年の通常枠か複数社連携枠などで交付決定を受けた場合、労働生産性の目標が1年後4%以上・年平均4%以上に上がることです。2025年の通常枠か複数社連携枠で交付決定を受けた事業者は、交付決定日から12か月は申請できません。
個人事業主でも申請できますか?
申請できます。日本国内に補助事業の実施場所があれば対象です。GビズIDプライムの取得とSECURITY ACTIONの宣言は、個人事業主にも必要です。法人の書類のかわりに、運転免許証など本人確認の書類(住民票は発行から3か月以内)、所得税の納税証明書、確定申告書の控え、青色申告決算書か収支内訳書を出します。法人の場合は、法人税の納税証明書と決算書です。従業員を雇っていない法人は、1人当たり給与支給総額の計算を、役員報酬と役員数で行います。
ITツールは自分で選んでもよいですか?
自由には選べません。事務局に登録されたITツールの中から選びます。公募要領は、登録されたIT導入支援事業者に相談してから、自社に合うツールを選ぶよう求めています。ツールの機能や、AIが載っているかどうかは、事務局のITツール検索で確かめられます。申請は、IT導入支援事業者と事業者が共同で進める形です。IT導入支援事業者は、ITツールを売り、申請の手伝いまでする事業者で、事務局への登録が認められています。
パソコンやタブレットは補助の対象になりますか?
通常枠では対象になりません。通常枠の対象経費は、ソフトウェア購入費、クラウド利用費、導入関連費だけです。公募要領の枠の一覧では、パソコンやタブレットなどのハードウェア関連費は、インボイス枠の対象経費に入っています。パソコンを買う予定がある場合は、通常枠の補助額には含められないので、その分の費用は別に見込んでください。導入コンサルティングや設定、研修、保守サポートなどの役務は、導入関連費として合計200万円まで対象です。
支払いは現金でもよいですか?
現金は認められません。銀行振込か、クレジットカードの1回払いです。口座は補助事業者の名義で、振込先はIT導入支援事業者の口座にします。ATMや窓口で現金を使って振り込む方法も認められません。クレジットカードは、法人なら法人名義、個人事業主なら代表者本人の名義です。分割払いやリボ払いも不可で、請求書が届いてから払います。値引きやキャッシュバックなどの実質的な還元を受けた場合も、不正な申請とみなされます。
交付決定より前に契約しても補助されますか?
補助されません。交付決定の前の契約・発注・納品・支払いは、公募要領が補助対象外としています。順番も決まっています。契約・発注が最初で、その後に納品・導入と代金の支払いをします。契約より先に納品や支払いをした場合は、交付決定の取消しになることがあります。6次の交付決定は、2026年12月10日の予定です。それまで契約は待ちます。ITツールの相談や選定は、交付決定の前でも進められます。
国のほかの補助金と併用できますか?
国や中小機構のほかの補助金・助成金とは、同じ事業内容・同じ経費では併用できません。ソフトやサービス、経費が重ならなければ申請できます。申請要件にも、ほかの補助金と重複する事業を補助事業に含めないことが入っています。同じ会社が通常枠とインボイス枠、セキュリティ対策推進枠に申請するときも、経費の二重計上にならないよう、IT導入支援事業者と切り分けてください。
不採択になったら、次の締切に出し直せますか?
出し直せます。各締切回の結果で不採択になった場合は、次回以降の締切までに交付申請できます。交付決定のあと、実績報告を経て補助金を受け取るまでの間に取り下げた場合も同じです。ただし、一度出した交付申請は、事務局から再提出を指示された場合を除き、結果が公表されるまで取り下げられません。内容に不足がないか、出す前に確かめてください。7次締切分の日程は、事務局のスケジュールページに、まだ載っていません。
採択の理由は教えてもらえますか?
事務局から通知される事項のほかは、開示されません。採択でも不採択でも、審査の内容は教えてもらえません。公募要領の2026年8月28日の改訂で、この点が書き分けられました。審査内容は開示しない、不採択の理由は事務局から通知する事項以外は開示しない、という扱いです。不備があった場合は、事務局から訂正を求められることがあります。連絡が来たら、すみやかに再提出します。
補助金を受けたあとに報告は必要ですか?
必要です。事業が終わったあと、実績報告を出します。その後も、効果報告を出します。事業計画の期間前、1年度目、2年度目、3年度目の順に、営業利益・人件費・総労働時間・給与支給総額などを報告します。ITツールを使い続けている証明も求められます。報告を怠ると、補助金の返還を求められることがあります。加点を受けたのに要件を達成できなかった場合は、未達の報告から18か月、中小企業庁が所管する補助金の審査で大幅に減点されます。
