この補助金は、1つの制度ではありません。再開支援、近隣地域の体制整備、人材確保など、事業ごとに対象者・補助率・基準額が違う制度の集まりです。まず自院がどの事業に当たるかを決めるのが最初の作業です。
施設・設備・運営費を支える主な事業は、警戒区域等医療施設再開支援事業と近隣地域医療提供体制整備事業の2つです。看護職員の研修・住宅や認定看護師の養成など人材確保の補助は、県の医療人材対策室が窓口で、この記事では扱いません。再開支援の施設や設備の整備は、先に設計と積算を県へ協議し、了承された内容だけが対象になります。
福島県 地域医療復興事業補助金の要点まとめ
正式名:福島県地域医療復興事業補助金
だれが
- 申請者
- 事業者(医療機関等の法人・個人、市町村など)
- 対象業種
- 医療業(病院・診療所・歯科診療所・薬局・訪問看護ステーション等)
- 利用目的
- 医療機関の再開・開設、機能強化、運営、高齢者への送迎
- 対象地域
- 福島県(事業により警戒区域等・避難地域・浜通り)
- 従業員数
- 公式ページに記載なし(地域医療課へお問い合わせください)
いくら
- 補助上限額
- 事業ごとに異なる(再開の施設整備は実費に補助率)
- 補助率
- 事業ごとに異なる。再開の施設・設備は4/5以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年10月27日〜2026年11月27日
- 事業の完了
- 申請する年度の末日まで
再開・開設の施設整備と、再開後の機能強化は、上の受付期間に限らず随時相談できます。人材確保に関する補助は、県の医療人材対策室のページが窓口です。
自院は対象になる?
事業ごとに対象が違います。次のどれかに当てはまれば、対象の見込みがあります。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
警戒区域等とは、原子力災害対策特別措置法による指示・公示があった2012年3月31日時点の警戒区域と計画的避難区域のことです。双葉郡の町村は全域が入ります。避難地域は、双葉郡8町村、南相馬市(小高区)、田村市(都路地区)、川俣町(山木屋地区)、飯舘村を指します。
次のどちらかに当たると対象外です。
- ✕ 医療機関等でない事業者
- ✕ 土地や宿舎の整備だけ
いくら補助される?
再開支援の施設・設備の整備は、対象経費の実費に補助率をかけます。そのほかの多くの事業は、「基準額と実際に払った額の少ないほう」に補助率をかけて決まります。千円未満は切り捨てで、県の予算の範囲内で知事が額を決めます。
主な事業の補助率は次のとおりです。
| 事業 | 内容 | 補助率 |
|---|---|---|
| 再開支援 Ⅰ | 警戒区域等の再開・開設の施設・設備整備 | 4/5以内 |
| 再開支援 Ⅰ | 再開後の運営 | 10/10以内 |
| 再開支援 Ⅲ | 警戒区域等の医療機関の機能強化 | 4/5以内 |
| 近隣地域整備 | 透析機器などの施設・設備 | 1/2以内 |
| 近隣地域整備 | 透析患者の受入拡大に伴う人件費 | 2/3以内 |
再開支援のⅡ(市町村・医療関係団体)、Ⅳ(送迎)、Ⅴ(在宅医療・健康増進)は区分ごとに率が違います。事業の概要(PDF)で確認してください。
計算例です。金額は説明のための仮の数字です。
- 警戒区域等の診療所が内装工事と医療機器で再開する:1,000万円 × 4/5 = 800万円
- 相馬地域などの病院が透析機器を1台入れる(実費700万円):700万円 × 1/2 = 350万円。基準額7,020千円に届かないため、実費の700万円が基準になります
- 浜通りの病院が周産期医療の設備に2,000万円かける:基準額1,000万円 × 1/2 = 500万円。基準額を超えた1,000万円分は補助されません
運営費の補助は計算が違います。人件費は職種ごとの月額基準(医師1,698千円、看護師520千円など)と実際に払った額の少ないほうをとり、そこから診療収入を引きます。診療収入が増えて補助対象から外れた年度のあとは、原則として運営費補助を再び申請できません。
何に使える?
対象にならないものを先に挙げます。
- 土地、土地の造成、看板・門などの工作物、宿舎
- 医療行為に直接必要でない設備
- 医療材料、医薬品、医療用廃棄物の処理費、事務用品、広告宣伝費(再開後の運営費としては対象)
- 1品10万円未満の医療備品
- 一般事務備品(事務机、パソコン、テレビなど)
- 開設許可や補助金の申請を代行してもらう手数料
- 借入の返済金、租税公課
- 医療機器の保守契約の費用(近隣地域整備)
対象になるものは、事業ごとに決まっています。
- 再開・開設の施設整備:医療行為に直接必要な工事費、旅費、修繕料、通信運搬費、委託料、備品購入費
- 再開後の運営:人件費、報償費、旅費、医療材料費・消耗品費・光熱水費、委託料、賃借料
- 近隣地域の体制整備:透析・周産期・救急の施設・設備、透析の技術指導料、受入拡大のための臨床工学技士などの人件費
- 送迎・在宅医療:送迎車両の購入費(基準額2,829千円)、在宅医療に必要な経費(在宅医療では10万円以上の機器は対象外)
再開・開設の旅費・需用費・役務費は、再開または開設の前2か月の分が対象です。施設や設備の整備では、入札か見積合せを必ず行います。
申請の流れ
事業によって細部は違いますが、施設・設備を整える場合の流れは次のとおりです。
- 整備内容を県に協議する(医療機関→地域医療課。設計・整備内容・積算を示して了承を得る)
- 交付申請書と添付書類を出す(医療機関→県保健福祉部 地域医療課など。2026年11月27日まで)
- 交付決定を待つ(県→医療機関。決定通知を受けてから着手するのが原則)
- 事業を行い、完了報告を出す(医療機関→県。完了後に速やかに)
- 実績報告と請求を出す(医療機関→県。完了から30日後か、年度末のいずれか早い日まで。県が認めれば概算払も受けられる)
交付決定は、県が補助額を正式に決めて通知することです。ここより前に着手した分は、原則として対象外です。内示のあとでやむを得ない事情がある場合だけ、事前着手届(第13号様式)を出して着手できます。この場合、交付されなくても自己責任で事業を終える条件を承諾することになります。
交付申請の窓口は、福島県保健福祉部の地域医療課、医療人材対策室、薬務課です。事業ごとの担当課は、公式ページの担当課室一覧(PDF)にあります。提出方法(持参か郵送か)は公式ページに記載がないため、担当課に確かめてください。
必要な書類
準備できた 0 / 8
事業計画書の様式は事業によって違います。人件費等明細書と決算書は、運営費を申請するときだけ要ります。再開支援のⅡの施設整備とⅢの診療科拡充では、市町村意見書(様式第7号)も出します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 協議前に整備を決めた:再開支援の施設・設備の整備は、事前に県へ協議して了承された内容だけが対象です。
- 交付決定前に着手した:事前着手届を出していない着手は、対象外になります。
- 対象外の経費を混ぜた:10万円未満の備品や事務備品を入れると、その分が外れます。
- 損害賠償金と重ねて受け取った:運営費は、損害賠償金と対象が重ならないようにします。
- 財産を無断で処分した:50万円以上(地方公共団体以外は30万円以上)の機器は、耐用年数の間、県の承認なしに処分できません。
令和8年度の変更点
令和8年度の交付要綱の改正は、2026年10月16日に施行されました。主な変更は次のとおりです。
- 救急医療従事者資質向上支援事業の補助率を、2/3から1/2に変更
- 認定看護師等養成事業のうち、認定看護師(感染管理)の補助基準額を変更し、補助対象経費を整理
- 初期救急医療確保支援事業の補助率を、1/2から1/3に変更し、上限額も変更
- 双葉地域中核的医療体制確保事業の対象経費に、医療従事者の確保に要する経費を追加
2つ目と3つ目は、南相馬市・いわき市や県の病院事業管理者が対象です。一般の医療機関に関わるのは、救急研修の補助率の変更です。
よくある質問
どの事業に申し込めばよいか分かりません
自院の場所と目的で決まります。警戒区域等で再開・運営する医療機関は再開支援のⅠ、機能強化はⅢです。避難地域で送迎や在宅医療をするならⅣ・Ⅴ、浜通りで透析・周産期・救急を強めるなら近隣地域医療提供体制整備事業です。迷うときは、公式ページの担当課室一覧にある課へ、申請前に電話で相談してください。
申請の締切はいつですか?
交付申請書の受付は、2026年10月27日から11月27日までです。ただし、再開・開設の施設整備と再開後の機能強化は、この期間に限らず随時相談を受け付けています。年度をまたぐ事業は、4月1日以降の分を翌年度に改めて申請する決まりです。提出が間際になると協議の時間が足りなくなるため、早めに担当課へ連絡してください。
すでに工事を始めてしまいました。対象になりますか?
事業によって扱いが違います。再開支援Ⅰ・Ⅲなどの施設整備は、交付決定に基づいて着手するのが原則で、内示後の事前着手届がなければ対象外になるおそれがあります。実施要領には、申請する年度内なら着手済みの事業も対象に含めるとの記載もありますが、整備内容を県に協議して了承を得ていることが前提です。まず担当課に確かめてください。
運営費はいつまで受けられますか?
再開または開設の後、5年以内が支援期間です。5年を超えても、経営の安定に必要と知事が認める期間は続けられます。診療収入などが増えて運営費補助の対象外になった年度のあとは、やむを得ない事情を除き、再び申請できません。毎年、決算書と人件費の実績で補助額が決まるため、診療収入の見込みも合わせて確認します。
人件費はいくらまで補助されますか?
常勤の場合、職種ごとの月額給与の基準額に勤務月数をかけた額と、実際に払った額の少ないほうが基準になります。再開支援では医師が月1,698千円、看護師・准看護師が520千円、事務が534千円などです。月の診療日が12日に満たない常勤は、日額単価で計算します。この基準額から診療収入を引いて補助率をかけます。
医療機器の購入は対象になりますか?
医療行為に直接必要な機器は対象です。ただし1品10万円未満の医療備品は対象外で、ホールボディカウンターなど放射性物質の測定機器も対象外です。補助対象にする機器の内容は、休止前の整備状況が基準になり、合わない場合は調整されます。購入前に、設備の能力や規格が分かるカタログを添えて県に協議します。
他の補助金や賠償金と一緒に受け取れますか?
他の補助金と重なる経費は、補助額から差し引かれます。運営費を受ける事業者は、損害賠償金との二重受給にならないよう留意する決まりで、損害賠償金収入は「その他の収入」として総事業費から引かれます。送迎や在宅医療のⅣ・Ⅴは、再開支援のⅠ・Ⅱで運営費の補助を受けていると申請できません。車両の購入費だけは例外です。併用を考える場合は、先に担当課へ相談してください。
送迎用の車両も補助されますか?
避難地域で高齢者などの診療のために送迎する場合は、対象になります。車両購入費の基準額は2,829千円です。条件として、地元の了解を得ること、診療日の半分以上の稼働が見込めること、車両に医療機関名を入れることが挙げられています。運賃を取るときは、路線届出などの手続きも必要です。購入では入札か見積合せを原則実施します。
薬局や訪問看護ステーションも使えますか?
使えます。再開支援のⅠでは、警戒区域等の病院、診療所、歯科診療所、薬局が補助事業者です。実施要領では、訪問看護ステーション等も医療機関に含めています。ただし薬局が医薬品などを仕入れる費用は、施設・設備の整備では対象外で、再開後の運営費としては対象です。薬局の窓口は薬務課です。事業所の所在地が警戒区域等に当たるかは、市町村や県の担当課で確認できます。
補助金は課税されますか?
この記事の一次情報では、県の補助金の税務上の扱いは確認できませんでした。申請の前に、顧問税理士か税務署に確かめてください。事業の完了後に消費税の申告で仕入控除税額が確定したときは、その額を県へ報告します。県が返還を命じる場合があります。なお、消費税の仕入控除税額は、申請時に補助額から引くか、事業完了後に報告して返還する決まりです。
問い合わせ先はどこですか?
福島県保健福祉部の地域医療課(医療復興)です。電話は024-521-8672、住所は福島市杉妻町2-16 西庁舎7階です。薬局の補助は薬務課(電話024-521-7233)が窓口です。事業ごとの担当課と連絡先は、公式ページの担当課室一覧(PDF)に載っています。人材確保に関する補助は医療人材対策室、薬務課の事業は薬務課が窓口です。
