静岡市の「中小企業DX人材等育成支援事業補助金」は、市内の中小企業が社員に受けさせるDX・デジタル関連の研修や、技能向上のための研修にかかる受講料等を最大10万円まで補助する制度です。「DXの研修を受けさせたいが費用がネック」「現場の技能を底上げしたいが予算がない」という中小企業の悩みに対して、静岡市が独自に用意している支援策です。
この補助金は静岡市独自の制度です(国の人材開発支援助成金とは別)
研修費用を補助する制度としては、国の「人材開発支援助成金」が有名です。しかし今回紹介する中小企業DX人材等育成支援事業補助金は、静岡市が独自に実施している市の補助金であり、国の人材開発支援助成金とは実施主体も申請窓口もまったくの別制度です。両方の対象になる研修であれば、どちらか一方、あるいは条件を満たせば両方の活用を検討する余地もあります(併用可否は各制度の窓口に確認が必要です)。
国にも研修費用を支援する制度があります。あわせてこちらの記事で解説しています。
対象になる事業者は?
補助対象になるのは、次のいずれかに該当する事業者です。
- 中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者で、静岡市内に本社または工場を保有するもの
- 中小企業等協同組合法に規定する事業協同組合・事業協同小組合・企業組合で、市内に主たる事業所を保有するもの(構成員の3分の2以上が中小企業者である団体を含む)
一方で、大企業が実質的に支配する「みなし大企業」(大企業が株式の一定割合を保有している場合や、大企業出身の役員が役員総数の過半を占める場合など)は対象外です。判断の基準となる本社・工場の所在地は「静岡市内」である点が最初のチェックポイントになります。
対象になる研修・対象経費を具体例で見る
補助対象事業は次の2種類に分かれ、目的とする研修の内容によってどちらに該当するかが変わります。
- DX・デジタル人材育成事業: デジタル技術を活用した業務効率化や生産性向上による業務改善、ビジネスモデルの変革等を目的とした、ソフトウェア技能を習得する研修
- 技能・生産性向上人材育成事業: 在職者の技術力向上による付加価値の向上、多能工化等による生産性向上を目的とした、工業製品等の加工技能等が向上する研修
対象研修の実施機関としては、静岡県立工科短期大学校、ポリテクセンター静岡、ポリテクカレッジ浜松、静岡県立大学、公益財団法人静岡県産業振興財団のほか、その他の民間教育事業者による研修も対象になり得ます(民間事業者の研修を申請する場合は、その研修を選んだ理由と得られる効果を具体的に記載する必要があります)。
補助対象経費は次のとおりです。
- 研修の受講料
- 研修の主催者の指示により購入した書籍代・教材費
一方で、次のものは補助対象外です。
- 公租公課・消費税および地方消費税
- 資格取得を目的とする研修
- 受講料を受講者本人が負担する研修
- 国や地方公共団体等から別途補助金を受けている研修
- 申請者や受講者が任意に購入した教材費・機器代金等
補助額のシミュレーション:業種別に3パターンで見る
補助率・補助上限額は事業区分によって異なります。
| 事業区分 | 補助率 | 補助限度額 |
|---|---|---|
| DX・デジタル人材育成事業 | 3分の2 | 10万円 |
| 技能・生産性向上人材育成事業 | 2分の1 | 5万円 |
| 両事業を同時に申請する場合 | 各事業ごとに算出し合算 | 10万円 |
補助を受けられるのは年度内1回で、複数の研修を受講させる場合はまとめて交付申請する仕組みです。業種の異なる3つのケースで試算してみます。
- 製造業(金属加工業)が技能研修を受けさせるケース: ポリテクセンター静岡の加工技術研修(受講料6万円)を社員に受けさせた場合、技能・生産性向上人材育成事業として補助率2分の1が適用され、補助額は3万円
- IT・情報サービス業がDX研修を受けさせるケース: 民間教育事業者のRPA・データ分析研修(受講料9万円)を受けさせた場合、DX・デジタル人材育成事業として補助率3分の2が適用され、6万円が補助額(上限10万円の範囲内でそのまま支給)
- 卸売業が両方の研修をまとめて申請するケース: DX研修(受講料6万円・補助額4万円)と技能研修(受講料4万円・補助額2万円)を同時に申請すると、合算した補助額は6万円(上限10万円の範囲内)
DX研修の受講料が高額になるケース(例: 受講料20万円のクラウド活用研修)でも、3分の2を計算すると13.3万円になりますが、補助限度額の10万円で頭打ちになります。研修費用を検討する際は、この上限を踏まえて研修の規模感を決めるのが現実的です。
申請の流れと必要な手続き
手続きは「交付申請」→「(変更申請)」→「実績報告」→「補助金請求」の順に進みます。原則オンライン申請(24時間受付)で、オンライン申請が難しい場合のみ清水庁舎の産業振興課経営支援係の窓口でも受け付けています。
- 交付申請: 必要書類チェックリストで確認のうえ、申請様式(様式第1号〜第5号)・補助金額算出補助様式を提出。研修を複数受講させる場合は、この時点でまとめて申請する
- (内容に変更が生じた場合)変更申請: 研修内容や経費に変更があれば、変更申請様式で届け出る
- 実績報告: 研修受講後、実績報告様式・受講料の支払を証する書類等を提出
- 補助金請求: 実績報告の確定後、補助金請求書様式を提出して補助金を受け取る
重要なのは、研修を申し込む前の段階で交付申請の準備を進めておくことです。公式ページでは受講開始と交付決定の前後関係についての明記はありませんが、多くの市区町村の同種補助金では交付決定を受ける前に研修を開始すると対象外になる運用が一般的なため、研修機関に申し込む前に産業振興課へ相談しておくと安全です。
似た名前の「デジタル活用事業補助金」との違いに注意
静岡市には、名前が似ている「中小企業等デジタル活用事業補助金」という別の制度もあります。本記事で紹介している人材等育成支援事業補助金は"研修費用"が対象、デジタル活用事業補助金は"ソフトウェア・機器導入等の設備投資"が対象という違いがあります。
| 制度名 | 対象になる経費 | 補助率・上限額 |
|---|---|---|
| 中小企業DX人材等育成支援事業補助金(本記事) | 研修受講料・書籍代・教材費 | 補助率2分の1〜3分の2・上限10万円 |
| 中小企業等デジタル活用事業補助金 | 電子商取引導入・業務効率化・テレワーク環境整備等に使う備品・ソフトウェア・委託費等 | 補助率3分の2・上限50万円 |
「社員教育」なのか「ツール導入」なのかで使う制度が変わるため、申請前にどちらの経費に当てはまるかを整理しておくと窓口相談がスムーズです。
社員研修だけでなく、業務効率化のためのITツール導入も同時に検討している場合は、この2つの制度をあわせて使えないか産業振興課に相談してみるのも一つの手です。研修費用でカバーしきれない設備投資については、静岡市以外にも使える補助金がないか探しておくと選択肢が広がります。
DX研修・技能研修のどの区分に該当するか迷う場合や、複数研修をまとめて申請する際の書類準備は、専門家に相談するのも一つの手です。
よくある質問
静岡市中小企業DX人材等育成支援事業補助金はいくらもらえますか?
DX・デジタル人材育成事業は補助率3分の2・補助限度額10万円、技能・生産性向上人材育成事業は補助率2分の1・補助限度額5万円です。両方を同時に申請する場合は、各事業ごとに算出した金額を合算して上限10万円までとなります。
資格取得のための研修も対象になりますか?
対象になりません。公式ページでは「資格取得を目的とする研修」は補助対象外と明記されています。デジタル技術の活用や技能・生産性向上を目的とした研修が対象です。
国の人材開発支援助成金と併用できますか?
本補助金は静岡市独自の制度で、国の人材開発支援助成金とは別制度です。対象外経費の条件として「国や地方公共団体等から補助金を受けている研修」は本補助金の対象外とされているため、同一の研修費用について両制度を重複して受け取ることはできないと考えられます。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助率・補助上限額・対象経費・対象研修・申請要件は変更される場合があるため、申請前に必ず静岡市の公式ページおよび最新の交付要綱で内容をご確認ください。
出典:
