BCP(事業継続計画)対策に使える補助金は国にBCP専用の制度は見当たらず、補助の中心は東京都などの自治体です。国が用意しているのは事業継続力強化計画の認定を受けた会社への税制の優遇と、補助金の審査での加点です。
東京都のBCP実践促進助成金は令和8年度の上限が単独型で500万円、複数の会社で使う連携型で1,000万円です。助成率は中小企業者が1/2以内、小規模企業者が2/3以内です。発電機やポータブル電源、安否確認システム、従業員用の備蓄品の購入費が対象です。令和7年度の上限は1,500万円でした。この額のまま書いた記事は、数字が古くなっています。
この記事では、先に仕組みと東京都の制度を整理しました。そのあとに国の認定と税制、県や市の制度、発電機や蓄電池の扱い、介護施設のBCPを説明しています。金額の表と締切の暦、全国の一覧は制度の最新の状態から自動で並べています。
BCP補助金の概要
BCPと事業継続力強化計画は別のもの
BCPは地震や感染症などの不測の事態が起きても中核の事業を続けるか、早く戻すために、平常時に決めておく計画です。会社が自分で作る書類で、様式に決まりはありません。
事業継続力強化計画は、このBCPの簡易版にあたる国の認定制度です。中小企業庁は「中小企業のための取り組みやすいBCP」と説明しています。会社が防災や減災の事前対策を計画に書いて国に出し、経済産業大臣が認定します。
補助金の記事では、二つが混ざって書かれがちです。東京都のBCP実践促進助成金は公社のBCP策定講座を受けて作ったBCPでも事業継続力強化計画の認定でも、申請の前提になります。宮城県のように、認定そのものを条件にしている県もあります。自社がどちらを持っているかで、使える制度が変わります。
補助金・助成金・支援金の呼び名
東京都は「助成金」、県や市は「補助金」「支援金」「事業費補助金」と呼んでいて、名前から中身の違いは読み取れません。この記事ではまとめて補助金と書き、制度名は正式な名前で書きます。
どの制度にも共通するのは、先に自分で払ってあとから費用の一部が戻ることです。もう一つは、交付決定の前に買った物が対象外になりやすいことです。交付決定とは、補助や助成を出すと決める通知を指します。この日より前の発注や契約は、多くの制度で対象になりません。検索するときは、補助金と助成金の両方の語で探します。
国・都道府県・市区町村の3層
BCPにかかる費用の補助は、実施する行政で3つに分かれます。
- 国:中小企業向けにBCPの費用そのものを出す補助金は、確認できた範囲では見当たりません。国の仕組みは事業継続力強化計画の認定で、税制・金融・補助金の加点が受けられます
- 都道府県:東京都、宮城県、佐賀県、岩手県、岡山県などが、BCPの実践に必要な設備や備蓄品の購入費を出しています
- 市区町村:大分市、阿南市、四国中央市、常陸太田市などが、BCPを作る費用を中心に補助しています
国の補助金のなかには、物流施設の非常用電源のように、分野を限った制度が一覧に出ることがあります。対象の事業者が決まっているので、自社の業種が合うかを公募要領で確かめます。
国の補助金に「BCP」の名前がないのは、中小企業庁がBCPの支援を認定と税制の形にしているためです。補助金は自治体ごとに決めているので、同じ設備でも東京都にあって隣の県にない例があります。自社がある都道府県と市区町村の両方を調べるのが、いちばん確実です。
東京都のBCP実践促進助成金(令和8年度)
東京都と東京都中小企業振興公社(以下、公社)が出している制度です。BCP補助金のなかで額が大きい制度です。令和8年度の内容は、東京都が2026年4月15日に出した報道発表と公社のページで確かめました。詳しい要件と申請の手順は、BCP実践促進助成金の制度記事にまとめています。
上限と助成率は単独型と連携型で違う
単独型は1つの会社が自社で使う設備、連携型は複数の会社が共用する設備を買うときの申請です。二つは別の申請になります。
| 項目 | 単独型 | 連携型 |
|---|---|---|
| 助成限度額 | 500万円(申請下限額10万円) | 1,000万円(申請下限額10万円) |
| 助成率 | 中小企業者は1/2以内、小規模企業者は2/3以内 | 中小企業者は1/2以内 |
| クラウドの上限 | 基幹システムのクラウド化は150万円まで(限度額の内数) | 基幹システムのクラウド化は300万円まで(限度額の内数) |
| 申請の前提 | 公社のBCP策定講座などを受けて作ったBCP、または事業継続力強化計画の認定 | 連携事業継続力強化計画の認定 |
中小企業者とは業種ごとに資本金と従業員数の上限が決まっていて、どちらか一方を満たせば該当する会社です。製造業などは資本金3億円以下または従業員300人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下が目安になります。ただし大企業が実質的に経営に参画している会社は、数字に合っていても対象外です。募集要項は、大企業が単独で株式の2分の1以上を持つ場合などを挙げています。金融業・保険業と農林水産業の会社も対象になりません。
小規模企業者は常時使う従業員が製造業などで20人以下、卸売業・小売業・サービス業で5人以下の事業者です。助成率が2/3以内に上がります。
上限を1,500万円と書いた記事を見かけますが、東京都の令和7年度の報道発表にある数字です。令和8年度の公式の数字は、報道発表の500万円と1,000万円です。古い記事の金額を信じて資金計画を立てると、申請の段階で足りなくなります。
募集は年3回
令和8年度は電子申請の期間が3回に分かれています。助成の対象になる期間は回ごとに決まっていて、発注と購入と支払いをその期間のうちに済ませます。
| 回 | 電子申請の期間 | 交付決定の予定 | 助成対象期間 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | 2026年5月13日9時〜19日17時 | 2026年7月下旬 | 2026年8月1日〜11月30日 |
| 第2回 | 2026年9月9日9時〜15日17時 | 2026年11月下旬 | 2026年12月1日〜2027年3月31日 |
| 第3回 | 2027年1月8日9時〜15日17時 | 2027年3月下旬 | 2027年4月1日〜7月31日 |
日程は予定で、変わることがあります。予算の執行の状況によっては、受付が早く終わります。申請は国の電子申請システム「Jグランツ」で受け付けていて、持参や郵送やメールでは出せません。
Jグランツに入るには、GビズIDプライムというIDが要ります。GビズIDプライムは国の行政手続きで共通に使うIDで、公社のページは発行に2〜3週間かかるとしています。申請を考えた時点で先に取っておく方が、日程に間に合います。
受けられるのは1回だけで、BCPが前提
この助成金は、要件を満たすBCPを提出できることが前提です。BCPをまだ作っていない会社は、公社のBCP策定講座とコンサルティングを受ける道があります。東京都は初めてBCPを作る都内の中小企業を対象に、最短1.5日で作る支援をしていると案内しています。
もう一つの条件は、以前にこの助成金の交付を受けていないことです。受けられるのは1回だけなので、BCPに書く物資は、最初の申請で漏れなく入れます。初めての会社は、助成金の締切から逆算して講座の日程を先に押さえる順番を勧めます。
対象になる経費とならない経費
公社が案内している対象経費は従業員用の備蓄品、発電機とポータブル電源、安否確認システム、感染症対策の物品、土のうと止水板、転倒防止装置、データのバックアップ用のNASとクラウド、基幹システムのクラウド化、耐震診断などです。
対象外になるのはパソコンやタブレットのように日常でも使える物、中古品、リースや割賦で買う物、車両などです。線引きは、被災したあとに通常の事業へ早く戻るための物かどうかです。細かい品目と上限は、制度記事の「何に使える?」で確かめられます。
計算の例
助成金は経費の一部が戻る仕組みで、助成金の額が10万円に届かないと申請できません。税抜の対象経費でいうと、中小企業者は20万円、小規模企業者は15万円が最低ラインです。例を3つ挙げます。
- 中小企業者が発電機と安否確認システムに200万円を使う:200万円 × 1/2 = 100万円
- 小規模企業者が同じ200万円を使う:200万円 × 2/3 = 133万3千円(千円未満は切り捨て)
- 中小企業者の経費が1,200万円:1,200万円 × 1/2 = 600万円ですが、上限の500万円までです
備蓄品は別の上限があります。募集要項の備蓄品リスト(28品目)は、助成対象の場所で働く従業員(役員を含む)1人につき3万円までです。従業員が20人なら、助成の対象にできる備蓄品の経費は60万円までです。物品・設備の品目数は、すべて合わせて20品目が上限です。
事業継続力強化計画の認定で何が変わるか
認定の中身と、税制・金融・加点
事業継続力強化計画の認定を受けると、税制措置・金融支援・補助金の加点などの支援が受けられると中小企業庁は案内しています。計画は電子申請で出し、単独で出す型と複数の会社で出す連携型があります。
策定に迷う会社には、中小企業基盤整備機構が専門家を派遣する策定支援を用意しています。
税制:中小企業防災・減災投資促進税制
認定を受けた会社が、計画に書いた設備を買って事業に使い始めると特別償却16%の税制の措置が受けられます。特別償却は通常の減価償却に上乗せして、取得した年に経費にできる額を増やす仕組みです。
中小企業庁によると、対象になるのは令和元年7月16日から令和9年3月31日までに認定を受けた会社で、認定を受けた日から1年以内に設備を取得して使い始めることが条件です。税の軽減は、補助金のようにお金が入るものではありません。軽くなる額は、その年の利益で変わります。
宮城県の補助金は、補助金で導入した設備にこの税制を使えないと明記しています。補助金と税制の両方を狙うときは、先に補助金側の併用の決まりを見ます。
補助金の加点の見方
国の補助金のなかには、審査の加点項目に事業継続力強化計画の認定を入れているものがあります。加点があるかどうか、何点かは公募回ごとの公募要領で変わります。ものづくり補助金のような大きな補助金を狙うときは、公募要領の加点の章に「事業継続力強化計画」と書かれているかを、その回ごとに確認します。
加点の中身は今回、個別の公募回の要領までは確かめていません。点数や要件を決めつけず、募集のたびに要領を開いてください。
融資などの金融支援
認定を受けた会社には金融支援もあります。内容は中小企業庁の「認定制度の概要」に載っています。融資の窓口は金融機関ごとに違うので、借りる予定の銀行や公庫に、認定の有無で条件が変わるかを先に聞いておきます。
都道府県・市区町村のBCP補助金
自治体のBCP補助金は、大きく2つの型に分かれます。設備や備蓄品を買う費用を出す型と、BCPを作る費用を出す型です。
設備や備蓄品を買う型
東京都のほか、宮城県と佐賀県が代表です。
宮城県の令和8年度の補助金は、事業継続力強化計画の認定を受けていることが条件です。申請の時点で認定を受けていなくても経済産業省に申請中であることが確認できれば、申請できます。ほかに、災害時に地域と連携する「地域協力計画」を持つこと、設立または開業から3年が経っていることなどが要件です。枠は2つあります。備蓄品・少額設備枠は50万円以上の事業で補助率1/2、補助額は25万円から最大50万円です。設備枠は対象経費が200万円以上で上限500万円で、募集は5月22日から7月31日でした。県は、この設備枠の追加募集は行わないと案内しています。詳しくは宮城県の制度記事にあります。
佐賀県の事業継続力強化支援事業費補助金は止水板、排水ポンプ、自家発電機、防火シャッターなどの防災・減災の設備が対象で、補助率は2/3、上限は100万円です。最寄りの商工会議所か商工会に出す形で、交付決定の前に発注した設備は原則として対象外です。中古品、リース、修理も対象になりません。佐賀県の制度記事で対象設備の線引きを確かめられます。
岩手県の小規模事業者事業継続力強化補助金は、国の認定を受けた計画に載せた防災・減災の設備が対象です。補助率は2/3以内で上限は単独の申請で50万円、共同申請で最大250万円です。令和8年度は2回に分けて公募されました。岩手県の制度記事で条件を確かめられます。
BCPを作る費用を出す型
市区町村は、BCPを作る費用や専門家への謝金を補助する制度が多く、額は小さめです。
- 大分市:BCPの策定に上限30万円、机上訓練と実動訓練にそれぞれ上限15万円、補助率2/3(大分市)
- 阿南市(徳島県):BCP策定・更新に上限10万円、補助率1/2以内(阿南市)
- 四国中央市(愛媛県):BCPの策定や改定に上限10万円、補助率1/2(四国中央市)
- 常陸太田市(茨城県):BCPの策定と、計画を設備に落とし込む費用で最大100万円(常陸太田市)
商工業の補助金のメニューのなかに、BCPが入っている市もあります。豊田市(愛知県)は展示会、BCP策定、サイバーセキュリティ診断を同じ補助金に入れていて、補助率は1/2です。八尾市(大阪府)と糸島市(福岡県)、日立市(茨城県)にも似た形があります。市の補助金は名前に「BCP」がなくても、メニューの一つとして入っていることがあるので、市の商工課のページで確かめます。
年度の中で終わる県の補助金
県の補助金には、年度の初めに公募して数か月で締め切る例があります。岡山県の小規模事業者事業継続力強化補助金は令和6年度が6月14日から7月31日、令和7年度が6月16日から7月31日の公募で、上限は50万円、補助率は2/3以内でした。令和8年度の岡山県の公募は、確認できた範囲では見当たりません。県は年度ごとに予算を組み直すので、前の年度に出ていた制度が今年度も出るとは限りません。
愛知県・大阪府・広島県・埼玉県・千葉県・福岡県は検索で調べられることの多い県ですが、BCPを名指しにした県の補助金は今回の調べでは確認できませんでした。市区町村の制度が見つかる可能性があるので、一覧の県の欄と県庁の商工労働の担当課のページを両方見ます。
自分の県の制度が見つからないときは、県の商工会連合会や地元の商工会議所に電話で聞く方法もあります。
発電機・蓄電池はBCP補助金の対象になるか
停電に備えて電源を買いたい会社にとって、発電機や蓄電池が補助の対象になるかは最初の関心事です。結論は、制度ごとに対象になる設備が違います。
東京都は公社の対象経費に「発電機、ポータブル電源」と書いています。非常時に設置して使う可搬式であることと、平常時の売電や節電に使わないことが条件です。公社の対象経費の資料は、対象になる例にポータブル電源、発電機、無停電電源装置(UPS)、ポータブル太陽光パネルを挙げ、対象にならない例に設置型蓄電池と設置型ソーラーパネルを挙げています。家に据え付ける蓄電池は、東京都では使えません。
宮城県は設備の例として、非常用発電機・備蓄倉庫・蓄電池・止水板を挙げています。常陸太田市も、計画実践事業の設備に蓄電池を入れています。佐賀県は自家発電機を対象設備に入れています。蓄電池を名指しで対象にしている制度は、少数派です。
発電機そのものの購入と、税制や自治体の支援の全体像は発電機の補助金の記事で整理しています。この記事は、BCPの助成金の側から見た対象経費を扱います。
介護施設・病院・福祉のBCP
介護の事業者は、BCPを作ることが運営の決まりになっています。大阪府によると、令和3年度の介護報酬改定で全ての介護サービス事業者に業務継続計画の策定が求められ、令和6年3月31日に経過措置が終わりました。令和6年度の改定により、感染症か災害のどちらか、または両方のBCPが未策定だと基本報酬が減算されます。
策定の費用に使える補助金は、事業者の種類で変わります。東京都のBCP実践促進助成金は社会福祉法人・医療法人・NPO法人などを対象にしていません。宮城県の補助金も、社会福祉法人・医療法人・NPO法人は補助の対象になりません。
介護施設や病院は、中小企業向けのBCP補助金が使えない場合が多い点に注意してください。福祉や医療の施設には、福祉の担当部署が別の補助金や研修を用意していることがあります。大阪府は、介護施設向けにBCPの研修や個別相談会を案内しています。
営利法人の訪問介護や通所介護の事業所は、会社として東京都などの助成金の対象になることがあります。法人の種類は自社の登記で分かるので、申請の前に募集要項の対象者の項目と照らします。
BCP補助金の代表的な金額
一覧に載っている制度を、上限額で比べた表です(制度名を押すと下の全国一覧のその制度へ移ります)。
