移住の補助金で中心になるのは、国の枠組みで市町村が支給する「移住支援金」です。東京23区に住んでいるか、東京圏から23区へ通っていた人が地方へ移り、働く・起業する・テレワークで仕事を続けるといった条件を満たすと、単身で60万円以内、世帯で100万円以内が出ます。18歳未満の子どもを連れて移住する場合は、子ども1人につき最大100万円が上乗せされます。
地方移住や田舎移住でも、使う制度は同じです。対象になる移住先は、東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)以外の道府県と、東京圏のなかでも過疎などの条件不利地域です。大阪や名古屋など東京圏以外から移住する場合は国の枠組みの対象外ですが、市町村が独自に対象を広げている例があります。
額も期間も、制度を実施するかどうかも、決めるのは移住先の都道府県と市町村です。内閣府のページにも「本事業は、地方公共団体が主体となって実施するものです。」と書かれています。この記事では、国の移住支援金の条件を先に整理したうえで、税金・返還・タイミングの注意、仕事別(就職・テレワーク・起業・就農)の制度、住宅や家賃の自治体独自の支援、全国の一覧の順に載せました。
移住の補助金にはどんな種類がある?
移住に使えるお金は、出どころと使いみちで大きく4つに分かれます。申し込む窓口がそれぞれ違うので、最初に全体を並べます。
| 種類 | 誰が使えるか | 金額の目安 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 国の移住支援金(地方創生移住支援事業) | 東京23区に住むか通っていて、東京圏以外などへ移り、就業・テレワーク・起業などをする人 | 単身60万円以内、世帯100万円以内、18歳未満の子ども1人につき最大100万円を加算 | 移住先の市町村 |
| 起業支援金(地方創生起業支援事業) | 移住先で地域課題の解決につながる事業を起こす人 | 起業に必要な経費の2分の1、最大200万円 | 都道府県・市町村が選んだ執行団体 |
| 学生向けの地方就職学生支援事業 | 東京圏の大学などを卒業して地方に就職・移住する人 | 就職活動の交通費の最大2分の1と、移住の移転費 | 移住先の市町村 |
| 自治体独自の支援 | 住宅・家賃・空き家バンク・就農・お試し移住など、自治体ごとに違う | 数万円から数百万円まで幅がある | 移住先の市町村 |
このほかに、農業を始める人向けの国の就農準備資金・経営開始資金(農林水産省)、奨学金の返還支援といった、移住と組み合わせて使えるお金もあります。
名前が似ていて混ざりやすいのは「移住支援金」と「移住補助金」です。国の枠組みで出るお金は支援金と呼ばれ、使いみちを問われない定額の給付です。自治体が独自に出す住宅取得・改修・家賃の補助は補助金や助成金と呼ばれ、対象の費用が決まっています。国税庁の文書回答は、移住支援金を「使途を問わない定額渡し切り方式」と説明しています。
国の移住支援金とは?(地方創生移住支援事業)
国の移住支援金は、東京一極集中を和らげ、地方の担い手を増やすための事業です。お金の流れは、国が都道府県に交付金を出し、移住した人には市町村が支援金を支給する形です。内閣府の資料では、国から地方公共団体への交付金の補助率は2分の1です。
金額は単身60万円・世帯100万円・子ども1人に最大100万円
内閣府のページでは、世帯の場合は100万円以内、単身の場合は60万円以内で都道府県が設定する額とされています。18歳未満の世帯員を連れて移住するときは、18歳未満の人1人につき最大100万円が加算されます。
ここで見落としやすいのは「以内」と「最大」です。国が示すのは上限で、実際の額は都道府県が決めます。同じ県のなかでも、市町村が支給の条件や額を独自に設けている場合があります。神奈川県のページには「移住支援金の支給額、申請できる期間、支給対象者の要件は町により異なります。」と書かれています。
子どもの加算がつく世帯の計算を一つ置いておきます。夫婦と18歳未満の子ども2人で移住し、市町村が上限どおりの額を設定している場合は、世帯100万円に子ども2人分の200万円を足して最大300万円です。上限を下げている市町村、子どもの加算を設けない市町村もあるので、移住先の要項で確かめてください。神奈川県のページには、子育て世帯加算を「実施する場合があります」と書かれています。
子どもの年齢の数え方は県によって決まりがあります。神奈川県は、申請日が属する年度の4月1日時点で18歳未満の子を対象にしています。申請日が属する年度の4月2日が18歳の誕生日の子も対象に含めています。
対象になる人の3つの条件
内閣府のページは、次の3つにすべて当てはまる人を対象にしています。
- 移住元の条件:東京23区に在住しているか、東京圏から東京23区へ通勤していた
- 移住先の条件:東京圏以外の道府県、または東京圏の条件不利地域に移住し、その地域が移住支援事業を実施している
- 就業等の条件:地域の中小企業等に就業する、移住前の業務をテレワークで続ける、地域で社会的起業をする、などのどれかに当てはまる
用語を先に説明します。「東京圏」は東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の1都3県です。「条件不利地域」は、過疎地域や山村、離島、半島などの法律で指定された地域を持つ市町村(政令指定都市を除く)と、平成22年から令和2年の人口減少率が10%以上の市町村を指します。
「東京23区に5年以上」の数え方
移住元の条件は、実は日常の言葉で読むと誤解しやすい部分です。内閣府の説明は、移住直前の10年間で通算5年以上、東京23区に在住するか、東京圏(条件不利地域を除く)に在住して東京23区へ通勤していた人としています。ただし直近1年以上は、東京23区に在住か通勤していることが必要です。
数え方の細かい決まりが3つあります。
- 雇用者としての通勤は、雇用保険の被保険者としての通勤に限ります。雇用保険の被保険者とは、会社などに雇われて雇用保険に入っている人のことです
- 東京圏(条件不利地域を除く)に住みながら東京23区内の大学等に通い、23区内の企業等に就職した人は、通学期間も対象期間に足せます
- 神奈川県のページでは、東京23区内への通勤の期間は、住民票を移す3か月前までを1年の起算点にできるとしています
「通算5年」と「直近1年」は別の条件で、どちらも満たす必要があります。たとえば5年前までは23区に住み、そのあと地方で1年暮らしてから23区に戻ったばかりの人は、直近1年の条件を満たさない場合があります。個別の判断は移住先の市町村の窓口に確かめます。
移住先の条件:転入のタイミングで受け取れなくなる
移住先についても、内閣府は「申請が転入後1年以内であること」「申請後5年以上、継続して移住先市町村に居住する意思があること」を示しています。神奈川県のページには、これに加えて実務で外せない条件があります。県から町への補助金の交付決定がされたあとに転入していることです。
交付決定とは、国や県が自治体への補助を正式に決める通知のことです。自治体の側の手続きなので、移住する人からは見えにくい日付です。神奈川県の令和8年度の場合は、令和8年8月17日以降の転入が対象でした。これより前に住民票を移した人は、ほかの要件を満たしていても対象になりません。
引っ越しの日を先に決めてしまってから制度を調べると、この条件に引っかかります。移住の日程を固める前に、移住先の市町村に「令和何年度の移住支援事業はいつから対象で、どの日付以降の転入が対象か」を確かめるのが先です。
就業の条件は4つ+起業
内閣府のページで、移住先での要件は次の1から4のどれかです。
- 地域の中小企業等で就業する:道府県のマッチングサイトに移住支援金の対象として掲載されている求人に就業するか、プロフェッショナル人材事業・先導的人材マッチング事業を利用して就業する
- テレワークで業務を続ける:自己の意思によって移住し、移住前の業務を引き続き行う
- 市町村独自の要件:市町村が地域の人々と関わりのある人(関係人口)として認め、地域の担い手になる要件を満たす
- 地方創生起業支援事業を使う:1年以内に起業支援金の交付決定を受けている
マッチングサイトは、県が移住支援金の対象求人として載せる専用の求人ページです。ハローワークや一般の求人サイトで見つけた仕事は、そのままでは対象になりません。神奈川県の例では、求人への応募日が、対象として掲載された日以降であることまで条件になっています。先に応募してしまった求人は、あとから対象に載っても支援の対象にならない場合があります。
神奈川県は就業について、勤務地が県内対象地域であること、週20時間以上の無期雇用契約であること、新規の雇用であること(転勤・出向・出張・研修などによる勤務地の変更ではない)、3親等以内の親族が代表者や取締役を務める法人ではないこと、といった条件も定めています。ほかの県も同じとは限らないため、移住先の県のページで確かめます。
そのほかの条件
神奈川県のページには、次のような条件も書かれています。他の県でも似た条件があるので、チェックの材料にしてください。
- 暴力団などの反社会的勢力、またはそれと関係のある者ではないこと
- 過去10年以内に、申請者を含む世帯員として移住支援金を受給していないこと(全額を返還した場合などを除く)
- 日本人であること、または永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者・特別永住者のいずれかの在留資格を持つ外国人であること
2人以上の世帯として申請するときは、申請者を含む2人以上が移住元で同じ世帯だったこと、申請時にも同じ世帯であること、全員が交付決定後に移住したこと、全員が申請時に移住後1年以内であることが、条件として並びます。
東京圏以外(大阪・名古屋など)から移住すると対象外?
国の移住支援金は、東京23区に住んでいるか、通勤していた人だけが対象です。大阪や名古屋、福岡から移住する人は、国の枠組みでは対象になりません。厚生労働省のLO活のページにも、すでに地方に住んでいて地元やUターンで就職する場合は、移住支援金や就活費の支援は東京圏からの移住が条件のため対象外と書かれています。
地方から地方へ移るときも同じです。たとえば仙台から福岡へ移る人は、国の枠組みの移住支援金は受けられません。
ただし、市町村が国の枠組みとは別に、移住元の範囲を広げている例があります。長野県千曲市は、東京圏(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)に加えて、愛知県と大阪府から移住して長野県のマッチングサイトに掲載された企業に就業した人などに移住支援金を支給するとしています。詳しくは千曲市の移住支援事業の記事にまとめました。
東京圏以外から移住する人が確かめる順番は次のとおりです。
- 移住先の市町村のページで「移住支援金」「移住定住」の案内を探し、移住元の範囲に自分の住所が入っているかを見る
- 入っていなければ、住宅の取得や家賃、空き家バンク、お試し移住など、移住元を問わない自治体独自の支援を探す
- 地方就職の支援や奨学金返還支援は、移住元の条件が別なので、制度ごとに確かめる
移住元を問わない制度の探し方は、後ろの「住宅・家賃・空き家の支援は自治体独自」で書きます。
地方移住・田舎移住では、どの地域が対象になる?
「田舎に移住したい」というときの田舎が、国の制度でどう扱われるかを整理します。国の移住支援金で対象になる移住先は、東京圏以外の道府県のすべての市町村と、東京圏の条件不利地域です。
東京圏のなかにも、条件不利地域として対象になる市町村があります。内閣府のページに載っている一覧は次のとおりです。
| 都県 | 条件不利地域の市町村 |
|---|---|
| 東京都 | 檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ケ島村、小笠原村 |
| 埼玉県 | 秩父市、飯能市、本庄市、越生町、小川町、川島町、吉見町、鳩山町、ときがわ町、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町、東秩父村、神川町 |
| 千葉県 | 銚子市、館山市、旭市、勝浦市、鴨川市、富津市、いすみ市、南房総市、匝瑳市、香取市、山武市、栄町、多古町、東庄町、九十九里町、芝山町、横芝光町、白子町、長柄町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町 |
| 神奈川県 | 三浦市、山北町、箱根町、真鶴町、湯河原町、清川村 |
東京に近い田舎への移住でも、この一覧に入る市町村なら対象になり得ます。ただし、一覧に入っているだけでは足りず、その市町村が移住支援事業を実施している必要があります。神奈川県の例では、一覧の6市町村のうち、令和8年度に県の移住支援事業の対象になったのは真鶴町と湯河原町の2町だけです。
内閣府は、移住支援事業を実施している都道府県と市町村の一覧をPDFで出しています。令和8年4月1日時点の一覧には、市町村ごとに移住支援金(「移住」の欄)と地方就職学生支援事業(「学生」の欄)の実施の有無が○で示されています。移住先の候補が決まったら、この一覧で自分の候補の市町村が実施しているかを見るのが最初の確認です。
どの道府県で使われているか(令和元〜7年度の実績)
内閣府は、都道府県ごとの移住支援事業の交付実績を公表しています。令和元年度から令和7年度までの累計は14,378件、30,557人です。受け取った人が多い道府県を並べます。
| 順位 | 道府県 | 累計の件数 | 累計の人数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 静岡県 | 1,465件 | 3,051人 |
| 2 | 群馬県 | 1,152件 | 2,452人 |
| 3 | 長野県 | 884件 | 2,141人 |
| 4 | 栃木県 | 900件 | 2,005人 |
| 5 | 新潟県 | 779件 | 1,636人 |
| 6 | 茨城県 | 672件 | 1,512人 |
| 7 | 宮城県 | 643件 | 1,326人 |
| 8 | 北海道 | 652件 | 1,311人 |
| 9 | 山梨県 | 561件 | 1,215人 |
| 10 | 福島県 | 551件 | 1,130人 |
この表は人数の多い順で、支給額の大きさを示すものではありません。実績が多い理由は、東京圏に近い、実施する市町村が多い、予算が大きいなど、制度の使いやすさとは別の事情も混ざります。
九州では長崎県909人、熊本県747人、鹿児島県726人、宮崎県652人、福岡県352人、佐賀県324人、大分県99人、沖縄県27人でした。近畿では兵庫県374人、奈良県270人、和歌山県214人、滋賀県79人、京都府33人で、大阪府は累計がありません。東京都と神奈川県も、令和7年度までの表では実績が「ー」で、累計は0です。神奈川県は令和8年度、真鶴町と湯河原町を対象に事業を実施しています。
令和7年度の年間の件数は3,170件で、令和6年度の3,626件より減りました。人数は令和7年度が6,771人、令和6年度が7,829人です。この実績には、令和6年度に始まった地方就職学生支援事業の交付も含まれています。制度が続いていても、自治体ごとの予算や実施の有無で、使える年とそうでない年があります。
移住支援金はいつまでに申請する?いつもらえる?
移住支援金は、申請する期限が「転入から1年以内」と決まっている点が、他の補助金との大きな違いです。内閣府のページも、申請が転入後1年以内であることを条件に挙げています。制度の受付期間は市町村が決めるため、移住先の要項を確かめます。
申請のタイミングは市町村で違う
市町村ごとに、申請を受け付ける時期が違います。常陸太田市の制度は、転入後3か月が過ぎてから1年以内の申請を受け付けています。常陸太田市の記事に条件をまとめました。福井県の自伐型林業の移住支援金は、転入後1か月以上1年以内が申請できる期間です。福井県の記事で詳しく説明しています。
就業して一定期間たってから申請を受け付ける市町村もあります。就職先に5年以上勤める意思があることを条件にする県もあるため、転職や配置換えの予定がある人は、事前に窓口へ相談します。
予算がなくなると、受付は締切の前に終わる
神奈川県のページには「予算上限に達した場合、年度途中であっても申請の受付を締め切る場合があります。」と書かれています。厚生労働省のLO活のページも、予算の上限に達すると年度の途中で受付を終了する制度があると説明しています。
募集期間の最終日までに出せば間に合う、とは限りません。 申請の準備は、転入が決まった時点で始めます。
入金の時期は、公式ページで確認できませんでした
「いつもらえるのか」は、よく調べられる疑問の一つです。内閣府のページと神奈川県のページには、申請から振込までの日数や、振込日の記載がありませんでした。内閣府の資料にある流れは、移住して就業したあとに移住先の市町村へ申請し、市町村が支援金を支給する、というものです。
市町村によって、審査や交付決定の通知の時期が違います。引っ越しの費用を先に払い、そのあとで受け取ることになるため、支給日までの生活費は貯金や転職先の給料でまかなう前提で計画します。振込時期は、移住先の窓口で「申請から何日ほどで振り込まれるか」を電話で聞いてみてください。
移住支援金を返すことになるのはどんなとき?
移住支援金には返還のルールがあります。内閣府のページは、移住支援金の申請から5年以内に移住先から転出した場合と、虚偽の申請をした場合などを挙げ、詳細は移住先の市町村に確かめるよう案内しています。
神奈川県のページは、返還の範囲を次のように分けています。
| 返還の範囲 | 当てはまるとき |
|---|---|
| 全額 | 虚偽の申請などをした場合 |
| 全額 | 移住支援金の申請日から3年未満に、受給した町から転出した場合 |
| 全額 | 申請日から1年以内に、就業の要件を満たす職を辞した場合(就業を条件に受給したとき) |
| 半額 | 申請日から3年以上5年以内に、受給した町から転出した場合 |
返還の期間と割合は、県や市町村によって違う場合があります。内閣府は「申請から5年以内の転出」を挙げていて、神奈川県の細かい区分は県の定めです。移住先が決まったら、返還の条件を必ず書面で確かめます。
返還が気になる人は、次のような場面を想像してみてください。単身で60万円を受け取り、1年半後に転職先が合わず別の県へ移る場合、神奈川県のルールでは申請日から3年未満の転出なので、全額の返還の対象になります。5年住むつもりで申請する制度だと理解してから、受け取るかを決めます。
移住支援金は課税される?確定申告は必要?
移住支援金は、税金の対象になる収入として扱われます。国税庁が出している文書回答事例は、移住支援金を一時所得に当たるとしています。理由は、利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡のどの所得にも当たらず、営利を目的とする継続的行為から生じたものでも、労務などの対価でもなく、一時に支給されるものだから、という整理です。
一時所得とは、懸賞の賞金や生命保険の一時金のように、継続性がなく、働いた対価でもない一時的な収入のことです。国税庁のタックスアンサー(No.1490)によると、計算は次のとおりです。
総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最高50万円)= 一時所得の金額
そして、税額の計算では、この一時所得の金額の2分の1を、給与所得などの他の所得の金額と合計します。
仮の数字で計算してみます。世帯で100万円を受け取り、収入を得るために直接要した支出を0円とみるなら、100万円−0円−50万円=50万円で、その2分の1の25万円が他の所得に足されます。引っ越し費用などが「直接要した金額」に入ると税務署が判断すれば、その分だけ一時所得の金額は小さくなります。引っ越し費用が支出に入るかどうかは、国税庁のページに書かれていないため、申告の前に税務署か税理士に相談します。
この回答は平成31年(2019年)に示されたもので、当時の国の制度の枠組みを前提にしています。市町村が独自に設けた制度の税の扱いは、この回答には書かれていません。支給元の市町村か税務署に確かめます。
確定申告が必要かどうかは、一時所得だけでなく、他の所得を合わせた全体で決まります。給与所得者は、年末調整で処理されるのは勤務先から受ける給与です。自治体から受け取る移住支援金は勤務先の年末調整には含まれないため、申告が必要かどうかを別に確かめる必要があります。
国の起業支援金は、扱いが違います。国税庁の同じ文書回答は、起業支援金が個人に支給される場合は、事業所得、不動産所得、山林所得または雑所得の総収入金額に入れるとしています。
仕事で選ぶ:就職・テレワーク・起業・就農
国の移住支援金は、移住先での働き方で条件が分かれます。働き方ごとに、気をつける点を整理します。
地方の企業に就職する
マッチングサイトに載った求人に就業するのが基本です。神奈川県の例では、週20時間以上の無期雇用契約で、就職先に申請日から5年以上勤める意思があることが条件でした。求人の応募日は、対象として掲載された日以降でなければなりません。
専門的な経験を活かす人は、内閣府のプロフェッショナル人材事業や先導的人材マッチング事業を通じた就業でも対象になります。
テレワークで今の仕事を続ける
内閣府の説明では、自己の意思によって移住し、移住先で移住前の業務を引き続き行うことが条件です。神奈川県のページには、原則として恒常的に通勤しないこと、週20時間以上テレワークを実施することが書かれています。
会社の転勤命令で移った人は対象になりません。所属先の企業から「地域未来交付金(デジタル実装型)」などの資金提供を受けている場合も、対象から外れる条件があります。移住先の市町村に、テレワーク勤務の証明方法を確かめます。勤務先がテレワークでの勤務を認めているかも、移住前に勤務先へ確かめておく項目です。
地域で起業する:起業支援金(最大200万円)
内閣府の説明によると、起業支援金は、地域課題の解決につながる社会的事業を新たに起業する人への助成で、起業に必要な経費の2分の1が、最大200万円まで交付されます。事業の分野として、子育て支援、地域産品を使う飲食店、買い物弱者の支援、まちづくりの推進などが挙げられています。
対象者には3つの条件があります。東京圏以外の道府県・市町村、または東京圏の条件不利地域で社会的事業を起業すること。国の交付決定日以降、補助事業期間の完了日までに、個人開業届を出すか法人を設立すること。起業する都道府県内に住んでいるか、住む予定であることです。
令和8年度に事業を実施する都道府県は、東京都・神奈川県・埼玉県・大阪府以外の43道府県です。内閣府のページに書かれています。移住支援金と組み合わせると、東京圏から移住して社会的事業を起業した場合に最大300万円(単身は最大260万円)になると、内閣府は案内しています。ここで言う300万円は、子どもの加算を含まない数字です。
自治体が独自に起業を支援する制度もあります。たとえば福岡県嘉麻市の移住定住起業チャレンジ支援事業補助金は、基本の100万円に各種の加算を重ねて最大250万円です。詳しくは嘉麻市の記事で説明しています。山形県の鶴岡市は、新規創業と移住開業型の補助金を出しています。補助率は対象経費の3/4で、上限は個人30万円・法人50万円です。特定の分野で雇用の要件を満たすと100万円まで上がります。鶴岡市の記事に条件をまとめました。
農業を始める:就農準備資金・経営開始資金
農林水産省のページによると、就農準備資金は、道府県農業大学校や先進農家などで研修を受ける人に、研修期間中、月13.75万円(年間最大165万円)を最長2年間交付します。経営開始資金は、新規就農者に、経営開始から経営が安定するまでの最大3年間、月13.75万円(年間165万円)を交付する制度です。対象は、次世代を担う農業者となることを志向する49歳以下の人です。
経営開始資金の実施主体は市町村です。年齢以外の条件は、農林水産省のページに詳細がなく、交付主体に確かめるよう案内されています。
県ごとの農業移住の支援もあります。福島県の「農業でふくしまぐらし支援事業」は、移住就農者の住環境の整備や、中古の農業用機械の購入などを支援する制度です。詳しくは福島県の記事をご覧ください。福井県は、自伐型林業をするための移住に100万円(定額)を出しています。福井県の記事で条件を説明しました。
地域の担い手として関わる:関係人口
内閣府の説明にある「市町村ごとの独自要件」は、地域の人々と関わりのある人(関係人口)を、市町村が認めて対象にするものです。どんな人を関係人口と認めるかは市町村ごとに異なります。内閣府のページには、詳細は移住希望先の都道府県・市町村へ直接問い合わせるよう書かれています。
住宅・家賃・空き家の支援は自治体独自
国の移住支援金は、使いみちを問われません。国税庁の文書回答には、移住に要する引越代、交通費等と、移住先での住居費の補助を目的とした支援金と書かれています。引っ越しやリフォーム、当面の家賃に充てるのは自由ですが、住宅の取得やリフォームそのものに出る補助は、自治体が独自に用意しています。
移住の住宅関連の支援は、大きく4種類です。
- 空き家バンクに登録された物件を買う・借りる・直すときの補助
- 民間賃貸住宅の家賃の補助
- 住宅の取得(新築・中古)の補助や固定資産税の軽減
- 古い住宅のリフォームや、片づけ・解体の補助
具体例を、公式ページで確かめた範囲で挙げます。兵庫県加西市は、空き家特区内の空き家バンク登録物件の登記費用を、10万円を上限に全額補助しています。加西市の記事に条件を整理しました。福島県南相馬市の移住就農者家賃支援事業は、月額最大6万円を最長24か月、累計で144万円まで補助する制度です。令和8年度分は応募多数で予算額に達し、受付を終えたと公式ページに書かれています。南相馬市の記事で詳しく説明しています。
厚生労働省のLO活のページには、新潟県南魚沼市の「U・Iターン促進住宅支援事業補助金」が家賃補助の例として載っています。県外から市内へ移り住んで働く人の家賃を、交付決定後に最初に家賃を支払った月から12か月間補助する制度です。
空き家を直して住む人は、補助の申請の順番が大切です。解体やリフォームの補助は、契約や着手の前に申請が必要な制度があります。順番は窓口に確かめます。空き家の解体については家の解体に使える補助金の記事と空き家の解体補助金の条件の記事にまとめました。
家を買う・直す前に、自治体と業者に確かめる点
物件の売買や工事の契約を結ぶ前に、次のことを移住先の市町村の窓口と業者に聞いておくと、受け取れない失敗を避けられます。
- 補助の申請は、契約や着手の前に必要か、後でもよいか
- 補助の対象は、空き家バンクに登録された物件だけか
- 工事をする業者は、市内や町内の事業者に限るか
- 同じ工事に、移住支援金や別の補助金を重ねて受けられるか
- 補助を受けたあとに、一定期間は住み続ける・貸し出さない、といった条件があるか
- 見積書や契約書の内訳が、補助の対象経費ごとに分けて書かれているか
厚生労働省のLO活のページは、家賃補助などの住居費の補助が、移住支援金と併用できる場合もあると書いています。併用できるかどうかは制度ごとの要項で決まるので、一覧で気になる制度を見つけたら、制度の記事で併用の条件を確かめます。
お試し移住と移住相談の窓口
本格的に移住する前に、お試し移住や体験ツアーで暮らしを確かめる人も多くいます。お試し移住の滞在費や交通費を補助する自治体はありますが、補助の対象者、期間、金額は市町村ごとに違います。
注意したいのは、体験ツアーの補助には「移住したい人」ではなく、ツアーを企画する事業者や団体が受け取る制度があることです。たとえば鹿児島県の奄美群島広域事務組合の移住体験ツアー実施事業補助金は、群島内で現地体験ツアーなどを実施する個人・企業・団体向けで、移住を考えている人が自分で申請するお金ではありません。奄美群島の記事に説明があります。
移住の相談窓口は、内閣府のページから探せます。「いいかも地方暮らし」というサイトでは、各都道府県・市区町村の移住に関する総合的な窓口を検索できます。移住先の候補を絞る段階で、まず相談窓口に電話かメールで、自分の状況(今の住所・勤務先・家族構成)を伝え、使える制度を教えてもらう順番が確実です。
学生・新卒の人が地方に就職するときの支援
東京圏の大学・大学院を卒業して地方に就職する人向けの、国の支援もあります。内閣府の「地方就職学生支援事業」です。
対象者は、本部が都内にある大学・大学院の東京圏内のキャンパスに原則として4年以上在学して卒業・修了した人で、条件を満たす地域に移住・就職する人です。補助は2種類あります。
- 就職活動等にかかった交通費の最大2分の1
- 実際に地方へ移住するときの移転費
交通費は在学中(卒業・修了年次)から申請できます。移転費は、就職して1年以内かつ卒業・修了から1年以内に申請します。厚生労働省のLO活のページによると、移転費は国が定める上限113,500円以内で、移住先の自治体が額を決めます。実施するのは移住先の市町村なので、実施している市町村としていない市町村があります。
内閣府の資料では、この事業は、移住先の自治体が奨学金返還支援を実施していることが主な要件です。移住支援金と奨学金返還支援の両方を実施している自治体は、令和7年4月で1,318市町村とされています。勤務地と移住先の市町村は、同じ都道府県内であることが必要です。
市町村が独自に出す地方就職の支援金もあり、下の全国一覧に並んでいます。
移住の補助金は、どの自治体が手厚い?金額が高い制度の見方
「移住 補助金 ランキング」「手厚い」「高い」で調べる人は多くいます。この記事では、固定の順位表は作りません。理由は2つです。国の枠組みの上限は全国で同じで、差が出るのは市町村の上乗せと、住宅や家賃などの独自の支援だからです。もう一つは、額と条件が年度ごとの予算で変わり、順位表が早く古くなるためです。
代わりに、金額の大きい制度を見る目安を示します。
- 国の移住支援金の上限は、単身60万円以内、世帯100万円以内、子ども1人に最大100万円の加算です。これを超える額は、市町村の独自の上乗せです
- 金額が大きい制度は、条件が重いことが多くあります。国東市の医療従事者就業移住支援金は上限210万円ですが、対象が市内の医療従事者です。嘉麻市の起業の補助金は最大250万円ですが、起業が条件です
- 「最大」の額に届くのは、加算の条件をすべて満たしたときです。基本の額だけで比べます
国東市の制度は国東市の記事にあります。奈良県は、世帯100万円に子どもの加算がつき、単身は60万円です。奈良県の記事で詳しく説明しています。愛知県蒲郡市は、東京圏から移住する個人向けの移住支援金(単身60万円・世帯100万円、18歳未満は1人100万円加算)に加えて、東京圏の大学生向けの就職支援金があります。蒲郡市の記事に整理しました。
長野県の佐久穂町と栄村は、UIJターンによる就業・創業の移住支援金を出しています。単身60万円、世帯100万円の枠組みです。佐久穂町の記事と栄村の記事で、それぞれの条件を見られます。
「定住」や「就労」の名前がついた給付には、移住が条件ではないものや、事業者が申請するものも混ざります。長野県喬木村の定住促進就業祝金(5万円)は、卒業後3年以内に村内で就業した若者向けで、移住の条件はありません。詳しくは喬木村の記事にあります。埼玉県川口市の若年者向けの家賃補助(最大12万円)は、市内の賃貸に住んで市内の会社で働く30歳以下の人が対象で、これも移住は条件ではありません。川口市の記事で条件を確かめられます。福井県あわら市の勤労者定住促進事業補助金は、市外から来た社員に社宅を貸す企業が申請するものです。あわら市の記事に整理しました。移住する本人が使えるかどうかは、対象者の欄で確かめます。
代表的な移住の補助金の金額
国の制度と、上限の大きい自治体の制度を、上限額で比べた表です。制度名を押すと、下の全国一覧のその制度へ移ります。
