林業の補助金は国が決めた事業を都道府県や市町村を通して届ける形が中心で、事業者が林野庁へ直接申請する場面は多くありません。種類は大きく5つで、森林を育てる「造林・間伐」と機械や施設を入れる「機械・施設」、人を育てる「担い手・就業」とお金を借りる「融資と税」、そして自治体が独自に出す「地域の支援」に分かれます。令和8年度の国の予算は「森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策」という大きな枠の下に、5つの対策が並んでいます。
林業の補助金を探すと事業承継やものづくりなど、業種を問わない補助金が大量に並ぶ一覧に当たります。この記事では林業の現場で実際に使われる制度に絞り、種類ごとの違いと仕組みを先に整理しました。金額と締切の一覧、全国の都道府県ごとの制度は後半に載せています。個人の森林所有者や自伐林家の使い方も書いています。
林業の補助金の概要
林業の補助金の種類は5つ
林業の補助金は、何にお金を出すかで種類が分かれます。種類によって、窓口も申請できる人も違います。
| 種類 | 何に出るか | 主な窓口 | 例 |
|---|---|---|---|
| 造林・間伐 | 植栽、下刈り、間伐、作業道の整備 | 都道府県・市町村(森林組合を通す例が多い) | 森林環境保全直接支援事業、自治体の造林補助 |
| 機械・施設 | 高性能林業機械、路網、木材加工流通施設 | 都道府県・市町村 | 林業・木材産業循環成長対策交付金、市の機械導入補助 |
| 担い手・就業 | 新規就業者の研修、林業大学校の学生への給付、担い手の確保 | 都道府県・林業労働力確保支援センター・市町村 | 緑の雇用、緑の青年就業準備給付金 |
| 融資と税 | 無利子の貸付、利子助成、所得税の控除 | 都道府県・日本政策金融公庫・税務署 | 林業・木材産業改善資金、森林計画特別控除 |
| 地域の支援 | 自伐型林業、燃料高騰、災害、安全装備、県産材の利用 | 市町村・都道府県 | 自治体ごとの独自の補助 |
補助金と融資は違います。補助金は返さなくてよく、融資は返す必要があります。林業の制度は両方がセットで案内されることが多いので「補助金・融資・保険」と一緒に書かれたページを読むときは、どれが返さなくてよいお金かを見分けます。
国から都道府県・市町村を通って届く仕組み
林業の補助金の多くは国の予算を都道府県がまとめて、市町村や森林組合を通して事業者に届けます。林野庁の林業・木材産業成長産業化促進対策交付金のページにはこの交付金は都道府県が事業の取りまとめを実施しているので、各都道府県の森林・林業関係部局に相談するよう書かれています。令和8年度から「林業・木材産業循環成長対策交付金」を案内している神奈川県のページでも、県の事業構想と事業計画が公開されています。
2つの交付金の名前は違いますが、どちらも「森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策補助金等交付等要綱」が関係資料に挙がっています。2つの交付金の関係は林野庁の原文で確かめる必要があり、今回は確認できませんでした。現行の事業の名前と要件は林野庁の「令和8年度林野庁予算の概要」のページと、申請する都道府県の案内の両方で確かめてください。
国の補助率に自治体が上乗せする形もあります。和歌山県の造林補助は森林環境保全直接支援事業にあたる事業について県が毎年定める標準単価に面積などの事業量をかけ、査定係数と補助率(40%)をかけて補助金額を決めます。森林経営計画を作っている場合の査定係数は1.7で、作っていない人工造林や下刈りは0.9です。標準単価で計算するので、実際にかかった費用とは一致しません。
令和8年度の国の事業
令和8年度の林野庁関係当初予算は非公共事業費が約1,120億円、公共事業費が約1,992億円です。「森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策」の下に、次の5つの対策があります。
- 森林集約・循環成長対策:森林の集積・集約化や、林業・木材産業の生産基盤の強化を川上から川下まで支援する
- 木材等の付加価値向上・需要拡大対策:木造化や合理的な木材価格の形成、森業の推進などを支援する
- 森林・林業担い手育成総合対策:新規就業者の育成・定着や、これからの林業経営を担う人材の育成を支援する
- スマート林業・DX推進総合対策:スマート林業技術の導入環境の整備や、機械・機器の開発・実証を支援する
- 森林・山村地域活性化振興対策:森林の多面的機能の発揮と、山村集落の維持・活性化を図る取組を推進する
このほかに、間伐や主伐後の再造林、林道の開設・改良、花粉発生源対策としてのスギ人工林の伐採・植替えなどを進める「森林整備事業」(公共事業)と、花粉の少ない森林への転換を促す対策があります。林野庁の「補助事業一覧」のページは現行の事業に更新が追い付いていないことがあるので、現行の事業名は予算の概要のページで確かめます。
造林・間伐の補助
造林・間伐は、林業の補助金でもっとも歴史が長い種類です。山に木を植え、下刈りや間伐で育て不要な木を除く作業に出ます。和歌山県の案内では森林所有者等が植栽や間伐などの手入れをした場合に、一定の条件を満たせば補助金が交付されます。森林組合等に作業を委託した場合も同じです。
和歌山県の要件の例は次のとおりです。
- 原則として森林経営計画等の認定を受けた人か、特定間伐等促進計画の実施主体になっている人が対象
- 人工造林・樹下植栽・下刈りは、森林経営計画の認定がなくても対象になる(補助金額は減る)
- 一施行地の面積が0.1ヘクタール以上
- 間伐と更新伐は、1ヘクタールあたり10立方メートル以上の搬出が必要
- 作業の内容ごとに、補助対象の林齢が決まっている
対象になる作業は、人工造林・樹下植栽・下刈り・枝打ち・除伐・保育間伐・間伐・更新伐・一貫作業・獣害防止施設・森林作業道の整備などです。県によって細部は違うので、申請の前に県庁の森林整備課や振興局の林務課に相談します。和歌山県も、補助金の交付を受ける前に事前の問い合わせを求めています。
山梨県の造林補助事業は山梨県の造林補助の記事、市単位の例は伊賀市の緊急間伐・搬出間伐補助金や豊田市の森林保全・林業振興対策事業補助金で確かめられます。
機械・施設の補助
林業機械や施設の補助は国の交付金の対象と、市町村や県の独自の補助の2通りがあります。林野庁の交付金のページには持続的林業確立対策として出荷ロットの大規模化・路網整備・高性能林業機械等の導入・間伐材生産・主伐時の全木集材と再造林の一貫作業・コンテナ苗生産基盤施設の整備・森林境界の明確化・自伐林家等への支援が挙がっています。木材産業等競争力強化対策では、木材加工流通施設・木造公共建築物・木質バイオマス利用促進施設・特用林産振興施設の整備が対象です。
自治体の独自の補助では、山口県岩国市が高性能林業機械の導入を支援しています。個人事業主を含む林業経営体が対象で、民間のレンタル会社から借りる場合は経費の50%(上限は同一年度で1林業経営体あたり100万円)、販売店から買う場合は経費の3分の1(中古機械を含み、上限は500万円)です。対象になるのは市内に事業所があり、森林経営計画の認定を受けているか、伐採届を出して適法に1ヘクタール程度の間伐等を行う林業経営体です。くわしくは岩国市の高性能林業機械導入支援事業費補助金の記事にあります。
福井県の「大きな林業」生産力強化事業は素材生産の機械や設備(補助率1/3・上限200万円)、再造林の植栽器具(1/3・上限30万円)、就業環境の設備(1/3・上限15万円)の3コースです。県から改善計画の認定を受けた事業体などが対象で、事業計画は農林総合事務所に相談します。福井県の「大きな林業」の記事で条件を確かめられます。
機械の補助は国の交付金は都道府県が取りまとめる事業なので事業者が自分で国に申請するのではなく、県の枠に入るかどうかが入口です。県や市の独自の補助は、予算の枠がその年度で決まっています。購入の前に申請するのが基本なので、見積もりをとる段階で窓口に確かめます。
担い手・就業の補助
林業に新しく就く人を増やす制度は事業体に出るものと、就業を目指す個人に出るものがあります。
「緑の雇用」事業は林業労働力の確保の促進に関する法律にもとづき都道府県知事の認定を受けた林業事業体に、新規就業者を雇用して行う研修等に必要な経費を支援する制度です。林野庁のページによると新規就業者は「緑の雇用」の開始前に年間2,000人程度だったのが開始後は年間3,200人程度に増え、令和7年度までに約2万4千人がこの事業を使って就業しました。研修は、トライアル雇用と林業作業士(フォレストワーカー)研修、現場管理責任者(フォレストリーダー)研修などで構成されます。
個人に出る制度には、「緑の青年就業準備給付金事業」があります。林業大学校等で林業に必要な知識や技術を学ぶ青年に、研修に専念できるよう給付金を支給する制度です。新規就業者や認定事業主が研修や就業準備に使う資金を、林業労働力確保支援センターが貸し付ける林業就業促進資金もあります。
自治体の担い手向けの制度は、各県・各市で違います。長野県の林業就業支援事業、奈良市の林業担い手確保・育成事業補助金、八代市の林業新規就業者支援事業補助金、山梨県の林業従事者就業環境改善事業費補助金が例です。
融資・利子助成・税の優遇
補助金だけでなく、融資と税の優遇も林業の資金繰りの手段です。
林業・木材産業改善資金は、都道府県が貸し付ける無利子の資金です。長野県の案内では新たな林業部門の経営の開始や、高性能林業機械・木質バイオマス利用施設・安全衛生施設・福利厚生施設の導入などが対象です。償還期間は最長10年で、償還期間内で最長3年の据置ができます。貸付限度額は、林業で個人が1,500万円、会社が3,000万円、団体が5,000万円です。補助金の残額に対する貸付(補助残融資)は使えません。愛知県の案内によると貸付時期は6月・9月・12月・3月で、申し込みの目安は各時期の約2か月前です。
令和8年度の施策では、改善資金の貸付計画額は36億円です。日本政策金融公庫の林業関係資金は、造林等に必要な長期低利資金の貸付計画額が249億円とされています。森林の取得・木材の加工流通施設の整備・災害からの復旧を行う林業者等に対する利子助成もあります。
税の優遇は令和8年度税制改正で、山林所得に係る森林計画特別控除(収入金額の20%の控除等)が2年延長されました。農林漁業用軽油に対する石油石炭税の還付措置も3年延長されています。控除の適用を受けられるかどうかは、税務署や税理士に確かめてください。
森林環境譲与税と森林経営管理制度
森林環境税は2024年度から1人年額1,000円が課される国税で、税の規模はおよそ600億円です。島根県の案内ではこれに先立ち2019年度から、森林経営管理制度の導入に合わせて「森林環境譲与税」が市町村と都道府県に譲与されています。市町村に譲与された税は、間伐などの森林整備・人材育成と確保・木材利用の促進・普及啓発などに使われます。
森林経営管理制度は経営管理が行われていない森林を、市町村が所有者の委託を受けて管理するか、林業経営者に再委託する仕組みです。令和8年4月には改正森林経営管理法が施行されています。この財源は事業者が直接申請する補助金ではないので森林所有者は自分の市町村の担当課に、林業事業者は市町村から再委託を受ける形かどうかを確かめます。
個人の森林所有者・自伐林家・個人事業主
林業の補助金は法人や森林組合のほかに、個人の森林所有者や個人事業主も使える制度があります。林野庁の交付金の対象に「自伐林家等への支援」があり、岩国市の機械の補助は個人事業主を含む林業経営体が対象です。林業・木材産業改善資金にも個人の枠(林業は1,500万円まで)があります。
自伐型林業は森林所有の有無や規模に関わらず、森林の経営や管理を自らが行う自立自営的な林業です。兵庫県豊岡市の自伐型林業推進事業補助金は搬出間伐では1ヘクタールあたりの搬出材積に応じた額(10立方メートル未満は141,000円、70立方メートル以上は686,000円)、作業道の開設は幅員に応じて1メートルあたり1,500円か2,000円、林業機械の借上は経費の2分の1以内(上限30万円)です。対象の森林は、市内にあって森林経営計画が策定されていない森林などの条件があります。市の予算がなくなり次第終了し、申請の前に事前相談が要ります。
編集部は個人の森林所有者が最初にすることとして、自分の森林が森林経営計画の対象かどうかを森林組合か県の林務課で確かめることを勧めます。補助の対象かどうか、補助率が何%になるかはこの計画の有無で大きく変わるためです。豊岡市の自伐型林業推進事業補助金と信濃町の自伐型林業推進事業補助金、福井県の自伐型林業移住支援金で、自治体ごとの違いを比べられます。
農業と一緒に書かれた補助金、全業種の補助金との違い
補助金のデータベースでは、林業が「農業・林業」とまとめて載ることがあります。農業と林業をまとめた制度は農業の機械や施設が中心のことがあり、林業の事業者が使えるとは限りません。事業承継やものづくり、持続化のような業種を問わない補助金は林業の事業者も使える場合がありますが対象になる経費や要件は公募要領で確かめます。この記事の一覧は、林業のタグが付いた制度に絞っています。
「林業 補助金 一覧」で上位に出るデータベースの件数は、全業種向けの補助金を数に入れていることがあります。件数の多さは、林業で実際に申請できる制度の数ではありません。
林業の補助金の代表的な金額
国の制度と、上限の大きい都道府県・市町村の制度を上限額で比べた表です(制度名を押すと下の全国一覧のその制度へ移ります)。上限が「事業ごとに異なる」「面積あたり」などの制度は、金額の表に載らないことがあります。
