海外進出に使える補助金は、使い道ごとに別々の制度に分かれています。輸出に向けた国内の設備投資に使う中心の制度は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」のグローバル枠で、補助率は2/3です。上限は従業員数で決まり、2,500万円から7,000万円(賃上げ特例を使うと3,000万円から9,000万円)です。海外の展示会に出る費用や越境ECサイトの構築には小規模事業者持続化補助金(最大250万円)、外国での特許・商標の出願には費用の半額を助成する制度(上限300万円)があります。
名前の古い情報には気をつけてください。以前のものづくり補助金は公募が終わっていて、公式サイトは新規の受付を「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」までと案内しています。JAPANブランド育成支援事業は、令和4年度までの分がものづくり補助金のグローバル市場開拓枠に統合されました。どちらも古い記事には現行の制度として載っていることがあります。
現地法人の設立費や海外への出資金に補助が出るかを気にする方は多いのですが、国の主な制度は国内の設備、展示会、出願の費用が中心です。グローバル枠は海外販路を開くために必要な国内の製造・提供拠点の強化を対象にしていて、株式の購入費は補助の対象外と公募要領に書かれています。
この記事は使い道の早見表、ステップ別の整理、国の制度、ジェトロの無料支援、自治体の制度の順に進みます。そのあとに代表的な補助金の金額と締切の暦、共通の注意点、都道府県ごとの一覧を載せました。輸出に使える補助金を探している方も、同じ内容で足ります。自分の自治体の制度は一覧から各制度の記事へ進めます。
海外進出の補助金の概要
海外進出の補助金には、1つの制度で全部をまかなえるものはありません。設備、展示会、特許や商標、現地の調査と、経費の種類ごとに窓口が違います。最初に使い道を決めると、探す制度が3つか4つに絞れます。
海外進出の補助金は使い道で選ぶ
使い道ごとの制度を並べた早見表です。金額と補助率は、後の節で一次情報の出どころを書いています。
| 使い道 | 制度 | 補助率と上限 | 向いている事業者 |
|---|---|---|---|
| 輸出に向けた国内の設備・システム | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠 | 2/3、2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で3,000万〜9,000万円) | 新しい国・地域へ売る中小企業 |
| 海外展示会・越境EC・翻訳 | 小規模事業者持続化補助金 | 2/3、50万円(特例の上乗せで最大250万円) | 従業員の少ない小規模事業者 |
| 特許・商標・意匠の外国出願 | 特許庁の海外出願支援事業、INPIT(工業所有権情報・研修館)の外国出願補助金 | 1/2、1事業者300万円まで | 日本で出願済みの中小企業 |
| 外国での商標トラブルへの対処 | 東京都の海外商標対策支援助成事業 | 1/2、500万円 | 東京都内の中小企業 |
| 新興国のインフラ・GX・DXの調査と実証 | グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金 | 1/2(中小企業は2/3)、調査1億円・小規模実証5億円 | 新興国向けの事業を組む企業 |
| 開発途上国の課題を解決するビジネス | JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業(補助金ではなく委託事業) | 金額は募集要項で確認 | 途上国向けの事業を組む企業 |
| 海外販路の開拓全般 | 都道府県・市区町村の補助金・助成金 | 自治体ごとに違う(長野県は2/3・100万円、広島県は2/3・上限なし) | 事業所のある自治体の中小企業 |
| 補助金ではない支援 | 新規輸出1万者支援プログラム(ジェトロなど) | 無料の相談 | これから輸出を始める事業者 |
表のうち、設備を買うのがグローバル枠、展示会や越境ECの小さな費用が持続化補助金、出願費用が外国出願の制度と覚えておけば迷いません。設備投資が大きく、国内の工場やシステムを輸出向けに整えるなら、金額の大きいグローバル枠を検討します。従業員が数人の事業者が展示会に出るだけなら、持続化補助金のほうが手続きは軽くなります。
同じ経費を2つの制度で重ねて受けることは、原則できません。グローバル枠の公募要領は、国が目的を指定して支出する他の制度で受給の対象になっている経費を補助対象外としています。経費の種類が違えば別の制度を使える場合はあるので、制度ごとの公募要領で確かめます。
補助金と助成金のちがい
海外進出の国の制度は「補助金」と呼ぶものが多く、自治体には「補助金」と「助成金」の両方があります。東京都の海外商標対策は「助成事業」で、長野県の海外販路開拓は「助成金」、広島県の海外展開挑戦支援は「補助金」です。
編集部が公募要領と募集要項を読んだ範囲では、呼び名の違いで仕組みが変わる点は見つかりませんでした。どれも申請して審査を受け、交付決定(補助の対象になる経費を確定させる通知で、採択とは別です。これより前の発注や契約は対象外になります)を受けてから経費を使い、実績を報告して後から支払いを受ける流れです。探すときは「補助金」と「助成金」の両方で検索し、申請の前に公募要領を読みます。
雇用や賃上げに関する厚生労働省の助成金は、海外進出の制度とは別の仕組みです。この記事は海外進出と輸出に使う経費の制度だけを扱います。
「輸出補助金」という言葉が指すもの
「輸出補助金」で検索すると、事業者向けの制度とは別の話が混ざって出てきます。意味は3つあります。
1つ目はWTO(世界貿易機関)の補助金協定で禁止されている輸出補助金です。経済産業省の不公正貿易報告書は、法令上または事実上、輸出が行われることに基づいて交付される補助金を、あらゆる場合に禁止される補助金として説明しています。国同士の貿易ルールの話で、中小企業が申請する制度ではありません。
2つ目は消費税の輸出免税です。国税庁のタックスアンサー(No.6551)は、輸出取引にあたる販売は消費税が免除されると説明しています。これは税の仕組みで、補助金ではありません。
3つ目が、この記事の主題です。輸出体制の整備、展示会への出展、外国出願といった費用を支える国や自治体の制度を指します。この記事で扱う制度は、輸出した量や金額に応じて払うものではありません。設備や出展料などの経費の一部を、あとから補助する仕組みです。
中小企業・個人事業主は使えるか
国の主な制度は中小企業を対象にしています。グローバル枠の公募要領は、中小企業者を業種ごとの資本金か常勤従業員数の上限で定めています。製造業、建設業、運輸業は資本金3億円または300人、卸売業は1億円または100人、サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)は5,000万円または100人、小売業は5,000万円または50人が目安です。資本金と従業員数のどちらか一方が上限以下であれば当てはまります。
個人事業主も対象に入ります。グローバル枠の要件は「会社又は個人」と書かれ、持続化補助金も商工業を営む個人事業主を対象にしています。ただしグローバル枠は、申請時点で従業員が0名の事業者を対象外にしています。事業主1人だけで営む場合は、持続化補助金や自治体の制度を軸に考えます。
もう1つ、みなし大企業(大企業が株式の2分の1以上などを持っていて、中小企業でも対象外になる会社)も外れます。親会社が大企業の子会社は、資本金や人数が基準以下でも申請できない場合があります。
大企業や中堅企業向けの制度は別にあります。中堅企業の輸出体制づくりを支援した過去の事業は中堅・中小企業輸出支援エコシステム形成事業費補助金の記事にまとめています。
海外進出のステップ別に使える制度
海外進出は、調べる、整える、守る、売る、現地で動く、資金を備える、の順に進むことが多く、段階ごとに使う制度が変わります。
進出先と売り方を調べる
最初の段階では補助金より相談窓口が役に立ちます。ジェトロの新規輸出1万者支援プログラムは、ポータルサイトに登録すると専門家から折り返し連絡があり、個別にカウンセリングを受けられます。輸出先の国の選び方や現地市場の見方、現状の課題を整理してもらえます。費用はかかりません。
自治体にも、専門家による相談や市場調査の費用を助成する制度があります。浜松市の海外展開事業化可能性調査費補助金のように、海外展開の事業化の可能性を調べる調査費を助成する例もあります。詳しくは後の一覧で自分の自治体を探します。
商品と生産の体制を整える
輸出向けの商品に合わせて機械やシステムを入れる、検査や包装の体制を整える、といった国内の投資に使うのがグローバル枠です。新しい国や地域に売るために必要な国内の製造・提供拠点を強化する計画が対象になります。取引先から言われて始める取引は、自発的な取組とは言えないため対象外です。
小さな投資なら持続化補助金の機械装置等費や広報費、ウェブサイト関連費に計上できる場合があります。
知的財産を守る
日本で取った特許や商標は、外国では権利になりません。進出先ごとに出願が要ります。特許庁の海外出願支援事業とINPITの外国出願補助金は、この出願費用の半額を助成します。東京都には、進出先で他社の類似商標が障害になるときに、その取消や無効化の費用を助成する制度があります。
展示会・商談会・ECで売り込む
海外の展示会は、持続化補助金、自治体の助成金、ジェトロのジャパンブースの順に検討します。越境ECサイトの構築は、持続化補助金のウェブサイト関連費や、自治体の海外ECの登録費用を助成する制度があります。出展費用の詳しい対象経費は展示会の補助金・助成金の記事にまとめています。
現地での事業を組み立てる
新興国でインフラやGX(脱炭素に向けたエネルギー転換)、DX(デジタル技術による事業の変革)の事業を組み立てるなら、グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金の調査と小規模実証を使えます。開発途上国の課題を解決するビジネスなら、補助金ではありませんがJICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業があります。
現地法人や支店を作る費用そのものを広く補助する国の制度は、この記事の調査では見つかりませんでした。自治体の調査費助成や、後述の融資が現実的な選択肢になります。
資金とリスクに備える
補助金は後払いなので、先に資金を用意する必要があります。日本政策金融公庫は海外展開に取り組む中小企業や小規模事業者の相談を全国の支店で受けていて、事例を「海外展開ゼロイチ+」のページに載せています。取引先の倒産や輸出できなくなるリスクには、日本貿易保険(NEXI)の貿易保険があります。
国の補助金:海外進出に使える制度
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠
輸出を始める中小企業が国内の設備を整えるときの中心になる制度です。中小機構の公式サイトは、グローバル枠を「海外市場開拓(輸出)に向けた、国内の輸出体制強化の取組を支援」すると説明しています。
補助の条件は2つです。1つは、自社の製品などを使って自発的に新たな海外販路を開くために、国内の製造・提供拠点を強めることです。もう1つは、事業で作る製品などの市場が、その会社にとって新たな海外市場であることです。新たな海外市場とは、既存事業の対象でなかった国・地域の市場を指し、取引先が主導する事業は対象外とされています。すでにアメリカに輸出している会社が、新たにベトナムへ売るために設備を入れる、という計画なら当てはまります。同じアメリカへの販売を増やすだけの設備投資は、この枠には向きません。
補助率は中小企業者で2/3、補助下限額は750万円です。上限額は従業員数で変わります。
| 従業員数 | 補助上限額 | 賃上げ特例を使う場合 |
|---|---|---|
| 1〜20人 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
補助事業の実施期間は、交付決定日から14か月以内です(採択発表日から16か月以内という条件も付きます)。
申請の前に済ませておく要件が2つあります。1つは、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画(従業員の仕事と家庭の両立を支える取組の計画)を策定し、情報サイト「両立支援のひろば」に公表していることです。公表の手続きに1〜2週間かかると公募要領は書いています。もう1つは、過去の受給です。申請締切日を起点にした16か月以内に事業再構築補助金、新事業進出補助金、ものづくり補助金、この補助金のいずれかで採択された事業者は対象外で、過去3年間に事業再構築補助金、新事業進出補助金、ものづくり補助金の交付決定を合計2回以上受けた事業者も対象外です。
対象経費は、機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費に加え、グローバル枠だけが海外旅費と通訳・翻訳費を経費にできます。機械装置・システム構築費か建物費のどちらかは、必ず経費に入っていなければなりません。
海外旅費には上限の決まりがあります。補助対象経費の総額(税抜き)の5分の1までで、1回の渡航で使えるのは事業者3名までです(専門家や通訳が同行する場合はさらに2名)。1人あたりは補助金額として最大50万円です。渡航の計画は交付申請のときにあらかじめ申請します。通訳・翻訳費の上限は30万円で、翻訳は広告宣伝・販売促進に必要なものだけが対象です。事業計画に関する契約書の翻訳は対象になりません。
補助事業が終わったあとの3〜5年の事業計画では、次の3つをすべて満たす必要があります。付加価値額の年平均成長率が4.0%以上、1人あたり給与支給総額の年平均成長率が3.5%以上、事業場内の最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いことです。目標に届かないと補助金の一部または全部の返還を求められる場合があります。
賃上げ特例(上限額が上がる代わりに条件が重くなる仕組み)を使う場合は、給与支給総額の年平均成長率が合計で6.0%以上、事業場内の最低賃金が地域別最低賃金より50円以上高い水準になります。どちらか一方でも届かないと、上限が引き上がった分の補助金の全額を返還し、基本の要件の未達成率に応じた返還も加わります。展示会に出るための費用を軽くしたいだけの会社には、重い条件です。
申請は電子申請システムだけで受け付けています。GビズIDプライム(国の電子申請に共通で使うID)のアカウントが必要で、発行に1週間程度かかると公募要領に書かれています。公募は回ごとに行われ、第1回公募の応募受付は2026年10月30日18時まででした。次の回の日程は、中小機構の公式サイトの公募スケジュールで確かめます。申請の詳しい手順は、公募要領と応募申請ガイドに書かれています。
加点の制度も用意されています。新規輸出1万者支援プログラムか、日本の食輸出1万者支援プログラムのポータルサイトに登録を済ませた事業者は、グローバル枠の審査で加点されます。登録は申請者自身がそれぞれのポータルサイトで行います。編集部の判断では、申請を考えているなら登録を先に済ませます。
採択の状況は、旧ものづくり補助金の23次締切が参考になります。総合サイトの採択結果ページによると、グローバル枠は申請者106者に対して採択者が30者でした。約28%です。製品・サービス高付加価値化枠は申請者1,169者に対して採択者が418者で、約36%でした。新しい補助金の採択結果は、公式サイトに公表されたものを見ます。回ごとの採択率の推移はものづくり補助金の採択率の記事にまとめています。
ものづくり補助金とJAPANブランド育成支援事業はどうなったか
記事によって書き方がばらばらなのは、制度の名前が変わったためです。公式サイトの記述を並べると次のようになります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以前のものづくり補助金)の総合サイトは、「本補助金の公募は終了しております」「新規の受付は『新事業進出・ものづくり商業サービス補助金』まで」と掲げています。総合サイトに載っている最後の公募回は23次締切です。採択結果は、20次締切が2025年10月27日、23次締切が2026年8月7日に公表されました。
中小機構の新しい補助金のサイトは、「中小企業新事業進出補助金」と「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は異なる補助金だと書いています。つまり新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、2つの名前の補助金とは別の、新しい補助金です。編集部の整理では、ものづくり補助金の海外向けの枠にあたるのは、この補助金のグローバル枠です。終わった旧制度との違いは新事業進出補助金とは?もう申請できない旧制度と後継の違いで説明しています。
JAPANブランド育成支援事業は、中小企業庁のページで、令和4年度までの事業がものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業のグローバル市場開拓枠(海外市場開拓のJAPANブランド類型)に統合されると案内されています。単独の制度としては残っていません。「JAPANブランド育成支援事業で最大何千万円」という説明を見かけたら、古い情報です。
小規模事業者持続化補助金
従業員が少ない事業者が、海外の展示会に出る、越境ECサイトを作る、といった小さな海外展開に使いやすい制度です。第20回公募の通常枠は、補助上限が50万円です。インボイス特例の対象事業者は50万円、賃金引上げ特例の対象事業者は150万円が上乗せされ、両方に当たれば200万円が上乗せされて最大250万円になります。補助率は2/3です。
小規模事業者であることが条件で、従業員の上限は業種で違います。商業・サービス業(宿泊業と娯楽業を除く)は5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下です。
海外展開に関係する経費は次の3つです。
- 展示会等出展費:出展料に加えて関連する運搬費と通訳料・翻訳料が対象です。オンラインの展示会・商談会も含まれ、海外の展示会も対象です。海外の出展費用の証拠書類が外国語のときは、内容を日本語で要約した書類も実績報告に添えます。
- 旅費:補助事業計画に書いた販路開拓の出張だけが対象です。海外旅費も計上でき、外国語の証拠書類には日本語の要約が要ります。
- ウェブサイト関連費:ECサイトの開発や構築、更新も対象です。上限は30万円(税込)で、ウェブサイト関連費だけの申請はできません。ほかの経費と一緒に申請します。
出展の申し込み自体は交付決定の前でも構いませんが、請求書の発行日と出展料の支払日は交付決定日以後でなければ対象外です。国から出展料の一部助成を受ける展示会も対象外とされています。ジェトロが出展経費の一部を補助する見本市がこれに当たるかは、公募要領から読み取れませんでした。そうした見本市に出る場合は、申し込む前に事務局へ確かめます。申請は地域の商工会か商工会議所が出す事業支援計画書(様式4)が必要で、第20回の発行の受付締切は12月4日です。締切のあとに頼んでも発行されません。申請の全体の流れは持続化補助金の第20回公募の記事で確かめられます。
外国出願の費用を助成する制度
外国で特許、実用新案、意匠、商標の権利を取る費用の半額を助成する制度は、窓口が2つあります。
1つ目は特許庁の「中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)」です。各都道府県等中小企業支援センターが窓口になるため、公募期間と申請方法は都道府県ごとに違います。令和8年度の補助率は1/2で、1企業の上限は300万円です。案件ごとの上限は特許が150万円、実用新案・意匠・商標が60万円、抜け駆け対策の商標が30万円です。抜け駆け出願とは、悪意のある第三者に先に出願されることを指します。
2つ目はINPITの外国出願補助金で、出願手続の補助は年に複数回公募されます。審査請求や拒絶理由通知への中間応答にかかる費用を補助する中間手続の補助も、あわせて設けられています。INPITのリーフレットが令和9年度分として案内している内容は次のとおりです。
| 特許庁の事業(令和8年度) | INPIT外国出願補助金(令和9年度分の予定) | |
|---|---|---|
| 補助率 | 1/2 | 1/2 |
| 1事業者の上限 | 300万円 | 300万円 |
| 特許 | 150万円 | 200万円 |
| 実用新案・意匠・商標 | 60万円 | 80万円 |
| 抜け駆け対策の商標 | 30万円 | 40万円 |
| 中間手続の補助 | 記載なし | 1手続(各国別)につき50万円 |
INPITの令和8年度分の1出願あたりの上限は、取得できた公式資料では確かめられませんでした。リーフレットも、令和9年度の政府予算の成立状況によって金額が変わる場合があると注記しています。申請前に最新の公募要領で上限を確かめてください。
どちらも、すでに日本の特許庁に出願していて、その出願を基に優先権(日本での出願日を外国出願の基準日として使える仕組み)を主張して外国に出願する計画が基本です。商標は優先権のない外国出願も認められます。外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと、外国出願に必要な資金計画があることも条件です。対象経費は、外国特許庁への出願手数料、国内・現地の代理人費用、翻訳費用などです。交付決定の通知のあとに着手して発生した費用に限られます。
採択されると企業名と所在地が公表されます。特許庁の事業は、事業完了後5年間のフォローアップ調査にも応じる必要があります。INPITの申請はJグランツ(国の電子申請システム)で行い、GビズIDプライムのアカウントの発行に1週間程度かかるとINPITは案内しています。特許庁の事業は窓口ごとに申請方法が違い、Jグランツに加えて書類の郵送やメールでの提出が要る窓口もあります。
INPITの中間手続の補助はINPIT外国出願補助金の記事で詳しく解説しています。
グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金
東南アジア、南西アジア、中東、アフリカ、中南米などの新興国で、インフラ関連の事業を作る企業が使う制度です。経済産業省が補助します。令和7年度補正の小規模実証・FS事業は、事業の実現可能性を調べるFS事業と、技術やシステムの有効性を現地で確かめる小規模実証事業の2本立てです。
補助率は1/2以内で、中小企業は2/3以内です。上限額はFS事業が1億円、小規模実証事業が5億円です。他の国庫補助金との併用はできません。海外の現地法人は、中小企業でも大企業等の補助率(1/2以内)が適用されます。
対象の分野は、GX(化石燃料からクリーンなエネルギーへの転換)、DX(デジタル技術によるビジネスモデルの変革)、経済安全保障の3つです。事業類型は、日本のイノベーションにつながる共創型、日本の高度技術の海外展開型、サプライチェーン強靱化型のいずれかに当てはまる必要があります。研究開発や設備投資の支援ではなく、調査と実地の確認に使う制度です。
この制度には大型実証など別の公募もあり、事務局のサイトが公募ごとに分かれています。令和6年度補正の二次公募は2025年11月26日に、令和7年度補正の二次公募は2026年10月23日に、それぞれ締め切られました。公募の内容はグローバルサウス未来志向型共創等事業の記事でも確かめられます。
JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業(補助金ではない委託事業)
開発途上国の課題解決に貢献する日本の民間企業のビジネスづくりを、JICAが支援する事業です。公式ページでは「中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)」の名前で案内されています。2026年度の公示は9月1日に出て、提案の提出締切は9月30日の正午でした。
JICAの過去の募集要項(2019年度)は、この事業を「JICAから民間企業等に業務を委託する委託事業であり、助成金事業や補助金事業ではありません」と説明しています。2026年度の募集要項で同じ扱いかは、この記事では確認できていません。募集は年度ごとに公示される形で、通年で受け付ける補助金とも仕組みが違います。上限額や対象経費はJICAの募集要項に書かれています。この記事では募集要項の金額を確認できていないため、数字は載せません。JICAのページには、募集に向けた説明会の動画と資料、採択企業の事例が載っています。
農林水産物・食品の輸出に使う制度
米、日本酒、水産物、加工食品などの輸出に使える制度は、農林水産省の事業が中心で、中小企業庁の制度とは別です。関東経済産業局の海外展開支援のページも、農林水産物・食品の輸出支援を関連施策として別枠で案内しています。農林水産省の事業は公募の名前や時期が年度ごとに変わります。農林水産省の公募情報や、都道府県の農政担当で確かめるのが確実です。
食品の輸出なら、ジェトロの「日本の食輸出1万者支援プログラム」の登録が2026年4月に始まりました。グローバル枠の加点の対象にもなっています。
県や市町村にも、食品の輸出や産材の輸出に関する独自の制度があります。島根県の食品輸出展開支援事業や宮崎県の産材輸出促進事業のように、過去に募集された例は制度の記事で内容を確かめられます。募集中の制度は、下の全国の一覧で確認してください。
中堅企業・大企業が使う制度
大企業は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠の対象になりません。中堅・中小企業の輸出を後押しする事業は、これまでも年度ごとに内容が変わってきました。中堅・中小企業輸出支援エコシステム形成事業費補助金の記事で、過去の事業の内容を確認できます。
補助金以外の支援:ジェトロの無料相談・融資・貿易保険
補助金だけで海外進出は完結しません。無料の相談、展示会への出展支援、融資と保険を組み合わせると、費用のうち補助金でまかなえない部分の負担が小さくなります。
新規輸出1万者支援プログラム
経済産業省、中小企業庁、ジェトロ、中小機構が一体で、新たに輸出に取り組む企業を支援する仕組みです。「はじめて輸出」を応援するとジェトロは案内していますが、輸出経験があっても支援の対象になります。
ポータルサイトで登録すると、ジェトロの専門家が折り返し連絡し、個別にカウンセリングをします。そのうえで、輸出の準備状況に応じた支援策を提案してもらえます。中小企業庁のパンフレット(2026年2月改訂)には、次の支援が載っています。
- 専門家による伴走型の支援と、輸出向け商品の開発、ブランディング、プロモーション
- 国内の輸出商社との個別商談会。商品の海外販売と貿易実務は輸出商社が担うため、実質的に国内取引で完結します
- 海外ECサイトに設けた日本商品の特設サイト「JAPAN MALL」。ジェトロの商品買い付けを通じて、国内納品・国内買取・円建て決済で取引が完結します
- 輸出入の手続きや法規制に関する、メール・電話・面談での相談
登録がグローバル枠の加点になるので、補助金を申請する予定があるなら、登録を先にしておきます。
ジェトロの展示会・商談会
ジェトロは世界各地の見本市にジャパンブースやジャパン・パビリオンを出し、日本企業の出展を支援しています。主催者への出品申し込み、ブースのデザインと施工、出品物の通関と輸送、現地での広報といった手続きをジェトロが行うため、単独で出展するより手間とコストを抑えられます。見本市によっては、ジェトロが出展経費の一部を補助します。
出品料は展示会ごとに違い、出展案内で個別に示されます。ジェトロのメンバーズ会員は出品料が10%割引されます。出展の募集は時期ごとに変わるので、ジェトロのイベント情報で確かめます。
融資と貿易保険
日本政策金融公庫は、はじめての海外展開や、さらなる成長に取り組む中小企業・小規模事業者を、海外展開支援機関と連携して支援しています。全国の支店で相談を受け付けています。融資の制度名や金利は、公庫の公式ページで確かめます。
日本貿易保険(NEXI)の貿易保険は、輸出、投資、融資といった海外取引で、輸出できなくなったり代金を回収できなくなったりする損失をカバーします。保険料率は、リスクの対象になる国と取引先によって決まります。
自治体の海外進出補助金:東京都と道府県・市区町村
自治体の制度は、国より金額は小さいものの、海外展開の入口で使いやすいものが揃っています。事業所のある自治体にどんな制度があるかは、一覧を見て確かめます。
東京都
東京都には、海外進出と関係する制度がいくつかあります。
東京都知的財産総合センター(中小企業振興公社)の海外商標対策支援助成事業は、中小企業が自社ブランドで海外販路を広げるとき、進出予定国でビジネスの障害になる他社の類似商標を、取消または無効にする取組を助成します。助成率は1/2以内、助成限度額は500万円です。東京都内の中小企業者(会社と個人事業者)、中小企業団体、一般社団・財団法人が対象で、1年度1社1案件に限ります。
申請の前に、公社の知財相談を受けていることが要件です。相談を受けないと申請できないため、先に予約を取ります。申請はJグランツで受け付け、GビズIDプライムのアカウントの発行に約2〜3週間かかります。詳しくは東京都の海外商標対策支援助成事業の記事にあります。
展示会への出展は、東京都中小企業振興公社の展示会出展助成事業が使えます。国内外の展示会が対象で、対象経費や申請の順番は東京都の展示会出展助成事業の記事にまとめています。金融系の事業者向けには、フィンテック企業の海外進出支援もあります。フィンテック企業に対する海外進出支援事業補助金の記事を見てください。
道府県・市区町村の制度のタイプ
都道府県と市区町村の制度は、大きく5つのタイプに分かれます。
- 海外展示会・商談会の出展費の助成:長野県の中小企業海外販路開拓助成金は、県内の製造業またはソフトウェア業の中小企業者等が、海外で開かれる展示会、見本市、商談会に出るときの費用を助成します。助成率は2/3以内、上限は100万円です。申請は先着順で、予算に達すると募集が終わります。交付決定の前に支払いが終わった経費は対象外ですが、事前着手届を出せば、届出日以降に申し込みや発注をした経費が対象になります。
- 海外展開全般の費用の助成:広島県の海外展開挑戦支援事業(アニマル補助金)は、新たな海外への販路拡大に取り組む県内の中小企業等が対象です。補助率は3分の2以内で、1事業者あたりの上限はありません。対象経費は謝金、旅費、通訳・翻訳費、マーケティング調査費、産業財産権等取得等費、展示会等出展費、海外向けECサイトの登録費用など16の費目に及びます。
- 外国出願の費用の助成:特許庁の事業を各都道府県の中小企業支援センターが窓口として実施します。北海道、岩手県、島根県、徳島県、鹿児島県などが公募を出しています。
- 海外の調査・専門家の支援:事業化の可能性調査や、専門家のコンサルティング費用を助成する制度です。
- 港湾や貨物の利用を促す制度:新潟港や松山港のように、輸出コンテナを港から出す荷主向けの奨励があります。海外進出の補助金とは目的が違いますが、輸出に関わるため同じ一覧に出ることがあります。
自分の自治体の制度の探し方
自治体の制度は、自治体の公式ページと、自治体が出資する産業振興の財団のページに最初に載ります。国の電子申請システムであるJグランツにも掲載される制度がありますが、自治体のページだけで案内される制度も多くあります。
探す順番は次のとおりです。
- 事業所のある都道府県と市区町村の「商工」「産業振興」のページで、海外展開・輸出の項目を見る
- 都道府県の産業振興公社や中小企業支援センターのページで、海外ビジネス支援の項目を見る
- 地域の商工会議所や商工会に、海外展開向けの補助や助成の案内がないか聞く
- この記事の全国の一覧で、自分の県の募集中の制度を確認する
国の制度と同じ経費を、自治体の制度でも補助してもらうことはできません。自治体の制度の多くは、国や他の自治体の補助を受けた経費を対象外にしています。長野県は、国、自治体を問わず国内の他の補助・助成を受ける事業を対象外にしています。
海外進出に使える代表的な補助金の金額
国の制度と、上限の大きい都道府県の制度を上限額で比べた表です(制度名を押すと下の全国一覧のその制度へ移ります)。
