研究開発の費用に使える国の補助金の代表は中小企業庁の成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)です。大学や公設試験研究機関と連携して研究開発をする中小企業が対象で、令和8年度は補助率が2/3以内、上限は通常枠で3年間合計9,750万円、大型研究開発枠で3億円でした。中小企業庁の公募ページには通常枠120件程度、大型研究開発枠5件程度の採択を想定していると書かれています。
研究開発の補助金は制度ごとに「何に使えるか」がかなり違います。試験や試作の費用を出す制度、研究の成果を製品にするための設備投資を出す制度、スタートアップの量産化を支える制度が別々に走っています。自分の会社がどの段階にいるかを先に決めると、探す範囲が狭まります。
この記事では研究開発に使える補助金と税制の全体像を先に整理しました。続けて、代表的な補助金の金額と締切の暦、多くの制度に共通する注意点、都道府県ごとの一覧を載せています。会計処理や消費税のように補助金を受けたあとの扱いも途中の章で取り上げます。自分の県の制度は一覧から各制度の記事へ進めます。
研究開発の補助金の概要
研究開発の補助金は国が出すもの、都道府県と市区町村が出すもの、民間の財団が出す助成金に分かれます。補助金や助成金とは別に税金から差し引ける研究開発税制もあります。返済が要らない点は補助金・助成金で共通ですが、お金が入る時期と手続きは種類ごとに違います。
国・自治体・民間財団の違いと、使い分けの考え方
国の制度は経済産業省と中小企業庁、経済産業省所管の国立研究開発法人であるNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、各省庁の研究開発テーマに応じた公募などに分かれます。額は自治体の制度より大きいものが多くあります。自治体の制度は県内や市内に事業所があることが前提で、地域の産業を伸ばすための分野が指定されることが多くあります。
使い分けの考え方は次のとおりです。まず研究が基礎の段階か、製品化に近い段階かを決めます。基礎に近ければ大学との共同研究が前提のGo-Techや、スタートアップ向けのNEDOの事業が候補です。製品化に近ければ設備投資と一緒に新製品・新サービスの開発を支える新事業進出・ものづくり商業サービス補助金や、自治体の製品開発の補助金が候補になります。
国の制度に応募する前に自分の県と市の制度も調べておきます。国と自治体は窓口が別で並べて検討できます。ただし同じ経費を二つの補助金に重ねて出すことはできないので、経費を制度ごとに分けて計画します。
民間財団の助成金は補助金とは別の選択肢です。三菱UFJ技術育成財団のように中小企業の新技術・新製品の研究開発に助成金を出す財団があります。国や自治体の補助金とは窓口が別なので同時に調べられます。
| 制度 | 向く場面 | 補助率・上限(公式で確認できたもの) | 申請の窓口 |
|---|---|---|---|
| 成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業) | 大学・公設試と連携する研究開発 | 中小企業2/3以内。通常枠は3年間合計9,750万円以下、大型研究開発枠は3億円以下(令和8年度) | e-Rad(所管の経済産業局に問い合わせ) |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠 | 自社の技術を生かした新製品・新サービスの開発と設備投資 | 補助率1/2(最低賃金の特例で2/3)。基本の上限は従業員51人以上で2,500万円、賃上げ特例で3,500万円 | 事務局の電子申請 |
| ディープテック・スタートアップ支援事業(NEDO) | 実用化の研究開発から量産化の実証までを進めるスタートアップ | 補助率2/3以内(量産化実証は1/2の場合あり)。フェーズごとの上限は3億〜25億円、フェーズをまたいで最大30億円 | NEDO |
| SBIR制度のフェーズ1・フェーズ2 | 各省庁が決めた研究開発テーマに沿う概念実証と実用化開発 | フェーズ1は300万〜3,000万円程度、フェーズ2は1,000万円〜数億円程度(他省庁のプログラムを含む目安) | 各省庁・JSTなど |
| 新あいち創造研究開発補助金 | 愛知県内の次世代成長分野の研究開発 | 中小企業2/3以内。一般枠の限度額は1億円(2026年度) | 愛知県 |
| 中小企業技術基盤強化税制 | 試験研究費を法人税から差し引く | 税額控除割合12〜17%、控除額は原則として法人税額の25%まで | 法人税の確定申告 |
研究開発の補助金の対象になる人
中小企業が対象の制度が多く、Go-Techは「中小企業者等を中心とした共同体」を構成して申請します。申請書の提出は府省共通研究開発管理システムのe-Radだけで受け付けています。e-Radへの登録には日数がかかることがあると中小企業庁が注意しているので、公募が始まる前に登録を済ませておきます。
大企業や個人事業主が対象になるかは制度ごとの公募要領で決まります。愛知県の新あいち創造研究開発補助金は大企業も補助率1/3以内で対象に含めています。一方でスタートアップ向けのDTSUは未上場の中小企業が対象です。同じ「研究開発の補助金」でも大企業が出せる制度とそうでない制度があるので、先に対象者の欄を読みます。
個人事業主が使えるかは制度の名前だけでは分かりません。Go-Techは中小企業者等を中心とした共同体での申請が前提です。個人で申請できるかどうかは公募要領の対象者の欄で確かめます。
対象経費と、補助金が使えない場面
研究開発の対象経費には研究に使う原材料費、研究員の人件費、機械装置の費用、外部への委託費などが含まれます。ただし制度ごとに範囲が違います。Go-Techは人件費の計算に「健保等級ルール」と呼ぶ細かい決まりを設けていて、中小企業庁が実施細目を公表しています。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の革新的新製品・サービス枠について、中小企業庁の担当者は「古い設備を新しくするだけの設備更新は補助対象となりません」と説明しています。対象になるのは機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費です。
補助金が使えない典型は研究開発と呼べない通常の設備更新、すでに発注や契約を済ませてしまった経費、他の補助金と同じ経費を重ねる場合です。交付が決まる前に発注した経費を対象外にする制度は多いため、日程は公募要領の「対象となる期間」の欄で確かめます。
後払いの資金繰りと、採択率の見方
補助金は先に自社で費用を払い、事業を終えて実績を報告してから入金される形が基本です。入金までの期間の資金は自己資金か借入で回す前提で計画を立てます。概算払いに対応する制度もあるので公募要領で払い方の欄を確かめます。
採択率について公式の応募件数と採択件数を確認できたものは、この記事を書く時点でありませんでした。ほかのサイトには採択率を数割と書くものがありますが、根拠は確かめられなかったので載せていません。Go-Techは採択想定件数が通常枠120件程度、大型研究開発枠5件程度と公表されています。応募数が分からない以上、倍率は計算できません。
研究開発に使える国の主な制度
ここからは国の主な制度を一つずつ見ていきます。額は制度ごとの公募要領で決まり、毎年度変わるので、この記事の数字は「公式で確かめた年度の例」として読みます。
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)
旧サポイン事業を引き継いだ制度で中小企業庁が「中小企業者等が大学・公設試等と連携して行う、研究開発及びその事業化に向けた取組を最大3年間支援する」と説明しています。対象は「中小企業の特定ものづくり基盤技術及びサービスの高度化等に関する指針」を踏まえた研究開発です。
令和8年度の条件は次のとおりでした。補助事業期間は2年度または3年度です。補助率は中小企業者等が2/3以内、大学・公設試等は定額で、中小企業者等が受け取る額が共同体全体の補助金総額の2/3以上であることが必要です。上限は通常枠が単年度4,500万円以下・2年間で7,500万円以下・3年間で9,750万円以下、大型研究開発枠が単年度1億円以下・2年間で2億円以下・3年間で3億円以下です。令和8年度の公募期間は2月16日から4月17日の17時まででした。
担当窓口は主たる研究開発の実施場所を所管する経済産業局です。例えば愛知県と岐阜県、三重県、富山県、石川県は中部経済産業局です。大学や公設試との共同が前提なので補助金を探す前に、連携先に声をかけておくことが申請の入口になります。個別の条件と書き方はGo-Tech事業の記事にまとめています。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
2026年度からものづくり補助金と新事業進出補助金が一体で運用されています。中小企業庁の総合支援サイト「ミラサポplus」には、補助率が1/2と2/3、補助上限額が9,000万円と書かれています(枠ごとの金額は同サイトの中小企業庁担当者へのインタビューによります)。9,000万円は新事業進出枠などで賃上げ特例を使ったときの最高額で、枠と従業員数で上限は変わります。
三つの枠のうち、研究開発から製品づくりに近いのは「革新的新製品・サービス枠」です。自社の技術やノウハウを生かした新しい製品・サービスの開発を支える枠で、基本の補助上限額は従業員1〜5人で750万円、6〜20人で1,000万円、21〜50人で1,500万円、51人以上で2,500万円です。賃上げ特例を使うと、それぞれ850万円、1,250万円、2,500万円、3,500万円になります。補助下限額は100万円です。
補助事業が終わってからの3〜5年の事業計画で、付加価値額の年平均成長率+4.0%以上、1人あたり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高くすることの3つをすべて満たす必要があります。目標に届かないと、補助金の一部または全額を返す義務が生じることがあります。研究開発そのものの費用ではなく、開発した製品を作るための設備投資と合わせて申請する場合に向く制度です。大学と共同で研究するなら、研究の部分にGo-Tech、試作と量産の準備にこちらを使う組み立ても考えられます。ただし同じ経費を二つの補助金に重ねて出すことはできません。旧制度との違いは新事業進出補助金の記事で整理しています。
スタートアップ向けの制度:NEDOのDTSUとSBIR
深い技術を持つスタートアップが研究開発から量産化の実証へ進む費用には、NEDOのディープテック・スタートアップ支援事業(DTSU)があります。補助率は2/3以内で、量産化実証は1/2の場合があります。上限はフェーズごとに3億〜25億円(条件を満たすと5億円・10億円に上がる枠もあります)で、フェーズをまたいで実施しても最大30億円です。応募の入口は、実用化研究開発の2つのフェーズで、補助対象費用の1/3以上をベンチャーキャピタル(VC)などの出資や金融機関の融資で得ることです。株式投資型クラウドファンディングとエンジェルからの出資は数えられません。詳しくはディープテック・スタートアップ支援事業の記事にあります。
SBIR(中小企業技術革新制度)は補助金そのものというより、各省庁が出す研究開発の補助金や委託事業の多段階の仕組みです。JSTの説明ではフェーズ1が概念実証と実現可能性調査で1年以内・300万〜3,000万円程度、フェーズ2がその成果を前提にした研究開発で1〜2年程度・1,000万円〜数億円程度、その先が事業化・政府調達のフェーズです。指定された補助金の交付を受けると、日本政策金融公庫の低利融資や、公共調達の入札参加の機会拡大、特許料と審査請求手数料の半額軽減などを使えると、中小企業庁が説明しています。制度の入口はSBIR制度の記事にあります。
NEDOにはこのほかにも研究開発の公募が複数あります。太陽光発電の技術開発を募る太陽光発電導入拡大等技術開発事業のように、分野ごとに事業が分かれます。応募資格が「企業」「大学」「スタートアップ」のどれか、公募要領で確かめます。
実用化・事業化の段階の補助金
「実用化」を名前に持つ補助金は研究の成果を製品やサービスとして使える形にする段階を支えます。国の制度ではNEDOのDTSUが実用化の研究開発から量産化の実証までを分けて支援します。SBIRのフェーズ2も実用化を目指す研究開発の段階です。
自治体にも製品化を目指す事業者向けの制度があります。例えば県内の中小企業が新製品や新技術を開発する高知県戦略的製品開発推進事業費補助金や、大学や高等専門学校と組む研究開発を支える大分県の先端技術挑戦プロジェクト産学連携創出支援事業費補助金があります。受付の状況と上限額は、下の一覧の表で確かめられます。
経済産業省の研究開発の補助金
経済産業省の研究開発の補助金は中小企業庁の制度、NEDOの制度、経済産業省の事務局が募集する制度の三つに分かれます。中小企業庁の制度はGo-Techと新事業進出・ものづくり商業サービス補助金です。NEDOの制度は上で見たDTSUなどで窓口がNEDOになります。この二つは問い合わせ先が違うので公募ページの「お問い合わせ先」を先に見ます。
経済産業省以外にも環境省や厚生労働省など、研究テーマに近い省庁が研究開発を公募しています。省庁をまたいで探すときは分野名(脱炭素、医療機器、宇宙など)で検索するのが近道です。
自治体の研究開発の補助金
自治体の制度は県内や市内に事業所がある企業を対象に、地域の重点分野で募集することが多くあります。愛知県の新あいち創造研究開発補助金はその代表です。愛知県の公式ページによると、対象分野は次世代成長分野等(次世代自動車、航空宇宙、環境・新エネルギー、健康長寿、情報通信、ロボット等)、デジタル(AI)分野、カーボンニュートラル分野の三つです。
補助率は中小企業が2/3以内、大企業が原則1/3以内、中堅企業と市町村が原則1/2以内です。限度額は研究開発の一般枠とデジタル(AI)・カーボンニュートラル枠、実証実験で1億円、スタートアップ・トライアル枠で1,000万円です。申請は年度の春に募集を行ってきた制度で2026年度は3月25日から4月7日の募集でした。次の年度の日程は愛知県の公式ページで確かめます。内容は新あいち創造研究開発補助金の記事にまとめました。
愛知県以外の県と市区町村にも研究開発や技術開発、産学連携、製品開発の補助があります。制度の名前と募集時期は年度ごとに変わるので、県の名前に「研究開発」「産学連携」「製品開発」を足して検索するか、下の全国一覧で県を選びます。
医療・脱炭素など分野を指定した制度
研究開発の補助金は分野を絞った公募が多くあります。医療・ヘルスケア機器の開発、宇宙・航空、脱炭素・省エネ、ロボットなどです。分野を指定した制度はその分野の技術的な要件が公募要領に細かく書かれています。
例えば脱炭素の分野では宮崎県の脱炭素化技術研究開発支援事業や栃木県の脱炭素化技術育成支援事業、資源循環分野の脱炭素化促進事業があります。航空宇宙では長野県の次世代成長産業技術開発等支援事業補助金や福島県の航空宇宙関連産業基盤強化事業費補助金のように、県が分野を決めて公募します。自分の研究テーマが分野に当てはまるときは分野名で絞ると見つけやすくなります。
研究開発の税制:補助金と別に使える制度
研究開発税制は補助金とは別の制度で試験研究費の一定割合を法人税額から差し引けます。中小企業は「中小企業技術基盤強化税制」が使え、国税庁によると対象は青色申告書を出す中小企業者で、基本は資本金1億円以下の法人です。
税額控除割合は試験研究費の増減に応じて12%から17%です。控除できる額は原則として法人税額の25%までで、試験研究費が増えた場合や売上高に対する試験研究費の割合が10%を超える場合は上限が加算されます。控除しきれなかった額は3年間繰り越せます。ただし繰り越した額を使えるのは、その年度の試験研究費が比較試験研究費(過去の試験研究費をもとに計算する基準額)を超える年度に限られると、国税庁は説明しています。中小企業庁には試験研究費1億2千万円・控除率12%・法人税額4,000万円の企業で、法人税額が1,000万円軽くなった事例が載っています。
大学や他の企業との共同研究・委託研究に使う「オープンイノベーション型」を併用すると、法人税額の10%を上限に別枠で控除できます。三つの制度をすべて使うと、控除の上限は法人税額の最大45%と、中小企業庁は説明しています。
補助金と税制を重ねたいときは試験研究費の計算に注意します。国税庁の説明では、試験研究費に充てるため他の者から支払を受ける金額があるときは、その金額を差し引いた額が試験研究費になります。補助金がこの「支払を受ける金額」に当たるかは、編集部では確認できませんでした。税理士か所轄の税務署に聞いてから申告します。
補助金の会計処理と税金の扱い
研究開発の補助金を受け取ったあとの会計処理と税金の扱いは、公募要領だけでは読み切れません。ここでは公式の資料で確認できた範囲だけを書きます。
補助金は圧縮記帳の対象になるか
補助金で固定資産を買った場合、法人税法第42条の「国庫補助金等」に当たれば、圧縮記帳で税金の負担を先送りできます。中小企業庁はGo-Tech事業について「国からの補助金を原資として、補助事業者から間接補助事業者に対して交付される」ため、国庫補助金等に該当し他の要件も満たす場合には圧縮記帳等の適用が認められると、令和8年6月26日付の資料で説明しています。
注意点は、経費を補填するための補助金は圧縮記帳の対象外ということです。同じ資料に、「経費を補填するための補助金」は法人税法第42条などの対象外で、圧縮記帳等の適用は認められないと明記されています。人件費や原材料費に使った分は圧縮記帳の対象にならないと読めます。設備を買った額と経費に使った額は、補助金の使い道ごとに分けて経理します。
補助金を受けたときの消費税
消費税が補助対象経費に含まれるかは制度ごとに公募要領が決めます。この記事では特定の制度の公式な記載を確認できていません。応募する制度の公募要領で補助対象経費が税込か税抜か、仕入税額控除との関係をどう書いているかを読みます。分からない部分は税理士に質問します。
研究開発費の会計処理は税理士に聞く
補助金を収益に計上する時期、研究開発費としての費用処理、圧縮記帳をするかどうかは、会社の状況で最適な処理が変わります。補助金の入金時期と、設備の取得時期、事業年度の区切りが絡むため、公募に出す前に顧問の税理士に流れを共有しておくと、後から慌てずに済みます。
研究開発の代表的な補助金の金額
国の制度と、上限の大きい都道府県の制度を上限額で比べた表です(制度名を押すと下の全国一覧のその制度へ移ります)。
