正社員を雇うときに使う国の助成金の中心は、厚生労働省の「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」です。社内のパートや契約社員などの有期雇用の人を正社員にすると、中小企業は1人あたり最大80万円(40万円×2期)を受け取れます。無期雇用の人を正社員にした場合は最大40万円です。大企業は有期からが最大60万円、無期からが最大30万円になります。
この額は令和8年度のパンフレット(令和8年4月8日版)にある額で、80万円になるのは「重点支援対象者」に当たる人だけです。それ以外の人は有期からで40万円、無期からで20万円の1期分になります。転換の制度を就業規則に新しく作ったときなどは、1事業所あたり20万〜40万円の加算もあります。
正社員の求人で外から採用した人は、正社員化コースの対象になりません。新しく正社員を雇うときは、雇い入れを助成する別の制度を使います。35歳から60歳未満の人を正社員で雇う特定求職者雇用開発助成金の中高年層安定雇用支援コース(中小企業で1人60万円)や60歳以上の人・母子家庭の母等を雇う同じ助成金の特定就職困難者コース、試しに雇うトライアル雇用助成金などです。
この記事では正社員化コースの金額・条件・申請の期限・不支給になりやすい点を先に詳しく書きました。そのあとに新規採用で使える助成金と正社員にしたあとに使える助成金、全国の自治体の制度の一覧を載せています。求人広告費の補助や採用活動全般の助成金は、採用の補助金・助成金の記事にまとめています。
正社員雇用の助成金の概要:社内で正社員にするか、外から採用するか
正社員雇用の助成金は、正社員にする人がどこから来るかで使う制度が分かれます。社内でパート・契約社員・派遣社員として働いている人を正社員にするならキャリアアップ助成金、外から新しく正社員として雇うなら特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用助成金です。どちらも国の雇用関係助成金で、窓口は都道府県労働局とハローワークです。
正社員を雇っただけでは助成金は出ない
どの助成金も、正社員を1人雇ったという事実だけでは支給されません。キャリアアップ助成金なら転換の前日までの計画の提出と就業規則への転換制度の規定が要り、転換後6か月の賃金を3%以上増やすことも条件です。特定求職者雇用開発助成金とトライアル雇用助成金は、ハローワークや一定の職業紹介事業者の紹介で雇い入れることが条件です。求人サイトの応募から直接雇った人は、原則としてこの2つの対象になりません。
どの制度も、取り組む前にしておく手続きがあります。正社員化コースのキャリアアップ計画は転換の前日まで、中途採用拡大コースの中途採用計画は取組の前に出します。雇ってから、あるいは正社員にしてから助成金を知った場合はその人について間に合わないことが多いです。正社員化を考え始めた段階で、先に制度の条件を読んでおくことを勧めます。
場面ごとの早見表
国の主な助成金を、正社員にする場面ごとに並べました。額は中小企業の場合です。
| 場面 | 制度 | 中小企業の額(1人あたり) | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| 社内の有期雇用の人を正社員にする | キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 重点支援対象者80万円(40万円×2期)、それ以外40万円 | 計画を転換の前日までに提出、転換制度を就業規則に規定、賃金3%以上増額 |
| 社内の無期雇用の人を正社員にする | 同上 | 重点支援対象者40万円(20万円×2期)、それ以外20万円 | 同上 |
| 受け入れている派遣社員を正社員として直接雇う | 同上 | 有期の派遣労働者なら80万円(40万円×2期) | 同じ組織単位で6か月以上受け入れ、直接雇用の制度を規定 |
| 35歳から60歳未満で正社員の経験が少ない人を正社員で雇う | 特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース) | 60万円(30万円×2期) | ハローワーク等の紹介、正規雇用労働者として雇い入れ |
| 60歳以上の人・母子家庭の母等を雇う | 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 60万円(30万円×2期。週30時間以上の場合) | ハローワーク等の紹介、65歳以上になるまで、かつ2年以上継続して雇う見込み |
| 就職が難しい人を試しに雇ってから無期雇用にする | トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) | 月最大4万円×最長3か月 | ハローワーク等の紹介、原則3か月の試行雇用 |
| 中途採用を増やして期間の定めのない社員で雇う | 早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース) | 20万円(成長性の加算で10万円上乗せ) | 中途採用計画の届出、中途採用率の上昇、賃金5%以上上昇 |
派遣社員を直接雇う場合は派遣労働者が重点支援対象者のcに当たるので、有期の派遣労働者なら有期からと同じ80万円の区分になります。派遣元に雇われた期間が5年を超える人は、無期の派遣労働者として扱われます。表の額は1人あたりで、正社員化コースの加算は1事業所あたりで別に付きます。
「正社員雇用拡大助成金」という名前の国の制度は無い
「正社員雇用拡大助成金」で調べる人がいますが、厚生労働省の雇用関係助成金一覧にこの名前の制度は載っていません。一覧にある名前で近いのは正社員化を助成する「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」と、中途採用者を増やす「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」です。自治体が独自の名前で正社員化の支援をしている例もあるので、地域の制度名で見かけたときはその自治体の公式ページで制度の中身を確かめます。
助成金は後払いで、要件の審査がある
雇用関係助成金は取り組みを終えたあとに支給申請をして、労働局の審査を経て支給されます。正社員化コースなら正社員にした人に6か月分の賃金を払い終えてから申請するので、入金は転換の日から半年以上たったあとです。それまでは会社の資金で給与を払うことになります。転換後の賃金を3%以上上げた分も、まず会社が負担します。
厚生労働省のパンフレットは申請書の内容によって審査に時間がかかることがあると書いていますが、申請から入金までの日数の目安は載っていませんでした。賃上げと賞与の原資は、助成金が入る前提にせず資金繰りの表に入れておくことを勧めます。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)はいくら?有期雇用・無期雇用からの金額
正社員化コースの額は、正社員にする前の雇用形態(有期か無期か)と会社の規模、重点支援対象者に当たるかの3つで決まります。令和8年度のパンフレットにある1人あたりの額は次のとおりです。
| 対象者 | 企業規模 | 有期雇用から正社員 | 無期雇用から正社員 |
|---|---|---|---|
| 重点支援対象者 | 中小企業 | 80万円(40万円×2期) | 40万円(20万円×2期) |
| 重点支援対象者 | 大企業 | 60万円(30万円×2期) | 30万円(15万円×2期) |
| 上記以外 | 中小企業 | 40万円(40万円×1期) | 20万円(20万円×1期) |
| 上記以外 | 大企業 | 30万円(30万円×1期) | 15万円(15万円×1期) |
申請できる人数は、1年度1事業所あたり20人までです(同じ人の2回目の申請は数えません)。正社員には、勤務地限定正社員・職務限定正社員・短時間正社員の「多様な正社員」も含まれます。多様な正社員に転換する場合は、転換の日に対象の人以外に普通の正社員を雇っていることが条件です。
中小企業かどうかは、資本金か常時雇用する労働者の数のどちらかで判定します。
| 業種 | 資本金・出資の総額 | 常時雇用する労働者の数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
どちらか一方に当てはまれば中小企業です。資本金の無い事業主は労働者の数で判定し、どちらも支給申請の時点の額と人数で見ます。ここでいう常時雇用する労働者は、2か月を超えて使われていて、週の所定労働時間が普通の労働者とおおむね同じ人です。週40時間の会社なら、おおむね40時間働く人を数えます。短い時間のパートは人数に入らないので、パートの多い会社は中小企業に入りやすくなります。
重点支援対象者とは
80万円の区分になる重点支援対象者は、次のaからcのどれかに当たる人です。
- a: 雇い入れから3年以上たっている有期雇用労働者
- b: 雇い入れから3年未満の有期雇用労働者で、雇い入れの前日から数えて過去5年間に正社員だった期間が合計1年以下、かつ過去1年間に正社員として雇われていない人
- c: 派遣労働者(派遣先で正社員として直接雇う場合)、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練を修了した人
aからcのどれにも当たらない人は1期分だけの支給です。たとえば雇い入れから2年の契約社員で前の会社で3年間正社員だった人はbに当たらず、有期からでも40万円の区分になります。
bに当たるかは本人の職歴で決まるので、申請のときは本人が記入する「キャリアアップ助成金対象者確認票」(様式第3号 別添様式1-5)の原本を付けます。パンフレットには、労働局が審査のときに本人に直接問い合わせることがあると書かれています。過去に自営業やフリーランスとして正社員と同等以上の能力が要る仕事をしていた期間も、正社員だった期間に含めて数えます。
bの「過去1年間に正社員として雇われていない」には例外があり、その期間に正社員だった人でも、会社の都合や正当な理由のある自己都合で辞めた場合は満たすものとして扱われます。
新卒で入った人はbから外れます。雇い入れから1年たっていない新規学卒者は、そもそも正社員化コースの対象外です。パンフレットには、令和8年4月1日に雇われた新規学卒者は令和9年3月31日まで対象外と書かれています。ここでいう新規学卒者は、卒業年度の3月31日までに内定を得た人などです。3月15日に卒業式を迎えたあと、4月1日以降に就職先が決まって5月に入社したような人は対象になり得るとパンフレットは例を挙げています。
有期雇用から正社員への転換(正社員登用)
有期雇用から正社員に転換するときに助成の対象になるのは、正社員と賃金の額や計算方法が違う雇用区分の就業規則を通算6か月以上適用されて働いている有期雇用労働者です。契約社員の就業規則で基本給の決め方や昇給の幅が正社員と違う、という形がよくある例です。
雇われた期間が通算5年を超える有期雇用労働者は、無期雇用労働者とみなします。契約を何度も更新して5年を超えた契約社員を正社員にすると、有期からの80万円ではなく無期からの区分になり、重点支援対象者のaにも当たりません。派遣労働者や母子家庭の母等などcに当たる人は40万円、当たらない人は20万円です。5年を超える前に転換するかどうかで額が大きく変わるので、更新の時期と転換の時期を合わせて考えます。
次の人も、有期雇用契約で雇っていても無期からの区分になります。
- 転換の前日から過去3年以内に、同じ事業所で無期雇用労働者として6か月以上雇われたことがある人
- 特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コースなどを除く)や地域雇用開発助成金など、特定の助成金の支給対象になった人
- 雇用区分の就業規則に契約期間の決まりが無い人
無期雇用から正社員への転換と、その条件
無期雇用から正社員に転換する場合の額は、有期からの半分です。中小企業なら重点支援対象者で40万円(20万円×2期)、それ以外で20万円です。期間の定めの無いパートを正社員にする場合や、無期転換ルールで無期になった人を正社員にする場合がこれに当たります。
条件は有期からの場合と同じです。正社員と違う雇用区分の就業規則が通算6か月以上適用されていることと、転換制度が就業規則にあること、転換後6か月の賃金が3%以上増えていることが要ります。無期のパートでも、パートの就業規則の賃金の決め方が正社員と同じで差が規定されていなければ対象になりません。
重点支援対象者のaは「雇い入れから3年以上の有期雇用労働者」なので、無期雇用の人はaに当たりません。無期の人が2期分の40万円になるのは、cの母子家庭の母等や人材開発支援助成金の特定の訓練の修了者に当たる場合などです。
派遣社員を正社員として直接雇う場合
受け入れている派遣社員を、派遣先の会社が正社員として直接雇う場合も対象です。派遣先の同じ組織単位で6か月以上続けて同じ派遣労働者を受け入れていたこと、直接雇用の制度を就業規則などに規定していることが条件になります。直接雇用の前6か月と後6か月を比べて賃金を3%以上上げることも、社内の転換と同じです。派遣法の労働契約申込みみなし制度の対象になった人を直接雇う場合などは、助成の対象から外れます。直接雇用の契約は、派遣の受け入れ期間が終わる日までに結ぶことが条件です。受け入れ期間の終わりの翌日から1か月以内に働き始める場合も、期間内に結んだものとして扱われます。申請のときは、直接雇用の前の労働者派遣契約書と派遣先管理台帳で、同じ組織単位で6か月以上受け入れていたことを示します。
加算:転換制度の新設・多様な正社員・情報の公表
1人あたりの額とは別に、1事業所あたり1回だけの加算が3つあります。
| 取り組み | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 正社員転換制度を新たに規定し、その区分に転換した | 20万円 | 15万円 |
| 多様な正社員制度(勤務地限定・職務限定・短時間正社員のどれか1つ以上)を新たに規定し、その区分に転換した | 40万円 | 30万円 |
| 正社員への転換に関する所定の情報を、自社が管理するウェブサイトか職場情報総合サイト(しょくばらぼ)に公表した | 20万円 | 15万円 |
転換制度の新設の加算は、同じキャリアアップ計画の期間中に制度を新しく作ってその制度で転換した場合に付きます。すでに転換の規定があって、前にその制度で転換した人がいる場合は付きません。
情報の公表の加算は、令和8年4月8日以降に転換した人から申請の対象になりました。公表するのは3つです。転換制度の手続き(面接試験・筆記試験など)と要件(勤続年数・人事評価の結果・所属長の推薦など)と実施時期、直近3事業年度の転換の実績の人数、転換までにかかった平均の期間と最短の期間を載せます。新しく作った会社で実績が無い場合は「0人(実績なし)」などと書けば足ります。しょくばらぼに載せるには企業利用者の申請が要るので、支給申請の日に間に合うよう早めに手続きします。
金額の計算例
中小企業のA社が、雇い入れから4年の契約社員2人と無期雇用で2年働いているパート1人を正社員にするとします。A社には転換の規定がまだ無く、新しく就業規則に作ってから転換します。契約社員2人は契約期間が通算5年を超えていない人です。
| 対象 | 区分 | 額 |
|---|---|---|
| 契約社員Bさん(雇い入れから4年) | 重点支援対象者a・有期から | 80万円(40万円×2期) |
| 契約社員Cさん(雇い入れから4年) | 重点支援対象者a・有期から | 80万円(40万円×2期) |
| パートDさん(無期・重点支援対象者に当たらない) | 無期から | 20万円(1期) |
| 転換制度の新設の加算 | 1事業所1回 | 20万円 |
| 合計 | 200万円 |
このうち第1期の分(Bさん・Cさん各40万円とDさん20万円)は、転換後6か月分の賃金を払ったあとに申請します。第2期の分(Bさん・Cさん各40万円)は12か月分を払ったあとです。第1期で不支給になると、第2期は申請できません。加算を第1期と第2期のどちらの申請で請求するかは、パンフレットに書かれていませんでした。申請の前に労働局で確かめます。
正社員化コースの条件
正社員化コースの条件は、会社(事業主)の条件と正社員にする人(対象労働者)の条件に分かれます。どちらも1つ欠けると不支給になるので、転換の日を決める前に一つずつ照らします。
会社(事業主)の条件
キャリアアップ助成金の全コースに共通する事業主の条件は、次のとおりです。
- 雇用保険の適用事業所の事業主であること
- 適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いていること(複数の事業所や労働者代表との兼任は不可)
- 適用事業所ごとにキャリアアップ計画を作って、管轄の労働局長に出していること
- 対象労働者の労働条件・勤務状況・賃金の支払い状況が分かる書類を整え、賃金の計算方法を示せること
正社員化コースではこれに加えて、次の条件が要ります。
- 有期雇用労働者等を正社員に転換する制度を、就業規則か労働協約などに規定していること
- その規定に基づいて転換し、転換後6か月以上続けて雇い、6か月分の賃金を払ったこと
- 転換後6か月の賃金を、転換前6か月より3%以上増やしていること
- 転換の日の前日から6か月前の日から1年たつ日までの間に、その事業所で雇用保険の被保険者を解雇など会社の都合で辞めさせていないこと
- 同じ期間に、特定受給資格者(離職区分1A・3A)として辞めた人の割合が、雇用保険の被保険者数の6%を超えていないこと(3人以下の場合を除く)
- 転換した人を雇用保険に加入させ、社会保険の適用事業所なら社会保険にも加入させていること
転換制度の規定は、面接試験や筆記試験などの手続きと勤続年数や人事評価などの客観的に確かめられる要件、転換の時期を明示したものに限られます。「◯歳未満」「勤続◯年未満」のように年齢や勤続年数の上限で対象を絞っている規定は認められません。
就業規則に書く転換制度の例
パンフレットの30ページには、転換制度の規定例が載っています。要点を言い換えると次の形です。
- 勤続◯か月以上の人などで本人が希望する場合は、正規雇用に転換させることがある
- 転換の時期は原則として毎月1日とする(所属長が許可した場合は別)
- 人事評価で一定以上の評価を得た人か所属長の推薦がある人に面接と筆記試験を行い、合格した人を転換する
手続き・要件・時期の3つは必ず文書で規定し、口頭で伝えただけでは認められません。就業規則のほかに転換規則や人事課の通知などの社内規定に書いても対象になり得ますが、その規定を労働者に周知していることが条件です。
規定と違う手続き・要件・時期で転換した場合や、転換の手続きが就業規則の施行日より前に行われていた場合は、支給の対象外です。たとえば転換の時期を毎年4月1日と規定したのに10月1日に転換すると、規定どおりの転換になりません。転換の日を決めてから規定を書くか、「随時」と読める時期の決め方にしておくかを、規定を作る段階で考えておきます。
パンフレットによると、転換制度を就業規則に書くときは、労働局の事業主支援アドバイザーのサポートを受けられます。厚生労働省の「モデル就業規則」も規定の参考になります。
次のどれかに当たる事業主は、どのコースも受給できません。
- 支給申請した年度の前年度より前の労働保険料を納めていない
- 支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反がある
- 性風俗関連営業や接待を伴う飲食等営業などを行っている
- 支給申請日か支給決定日の時点で倒産している
正社員にする人(対象労働者)の条件
対象労働者は、次のすべてに当たる人です。
- 正社員と賃金の額や計算方法が違う雇用区分の就業規則を、通算6か月以上適用されて雇われている有期雇用労働者か無期雇用労働者であること(派遣労働者は、同じ組織単位で6か月以上働いていること)
- 正社員として雇う約束で雇われた人ではないこと(正社員の求人に応募して入った人は対象外)
- 転換の前日から過去3年以内に、その会社や密接な関係の会社(親会社・子会社・関連会社など)で、正社員・請負や委任の相手・取締役などだったことが無いこと
- 事業主や取締役の3親等以内の親族ではないこと
- 支給申請日に、正社員のまま働き続けていて辞めていないこと
- 正社員の雇用形態に定年がある場合、転換の日から定年まで1年以上あること
- その会社や密接な関係の会社で定年を迎えた人ではないこと
- 新規学卒者で、雇い入れから1年たっていない人ではないこと
正社員の求人に応募してきた人を試しに有期契約で雇ってから正社員にする形は、対象外になる典型です。パンフレットには、正社員の求人に応募して試用期間として有期契約を結んだ人についてはその理由を確かめる場合があると書かれています。
有期契約の空白にも決まりがあります。前の契約が終わってから次の契約が始まるまでに6か月以上の空白があると、空白の前の契約期間は通算しません。昼間の学生だった期間のアルバイトも通算しません。
同じ会社で以前に正社員だった人や、同一事業主に雇用されていた期間の扱い
正社員化コースは、同じ事業主のもとで非正規として働いてきた人を正社員にする制度です。そのため同一事業主に有期雇用として雇用されていた期間は、6か月以上という条件を満たすための期間として数えます。転換の前日から過去3年以内にその会社か密接な関係の会社で正社員だった人は、対象になりません。一度正社員を辞めてパートで戻った人を、3年以内にまた正社員にしても助成は受けられないということです。
もとから正社員だった人を非正規と偽り、新たに賞与・退職金・昇給の制度を設けて正社員にしたように見せる申請は、不正受給として厳しく扱うとパンフレットに書かれています。
「正社員」の定義:賞与または退職金と、昇給
この助成金でいう正社員(正規雇用労働者)は、同じ事業所の正社員と同じ就業規則が適用されている人で、転換の時点で「賞与または退職金の制度」と「昇給」の両方が適用されている人に限られます。期間の定めの無い契約で派遣労働者でないこと、所定労働時間が正社員と同じで長期雇用を前提とした待遇(賃金の決め方・賞与・退職金・休日・定期的な昇給や昇格)が適用されていることが前提です。
賞与の書き方で対象から外れる例が、パンフレットに載っています。
- 「賞与は支給しない。ただし、業績によっては支給することがある。」(対象外)
- 「賞与の支給は、会社業績による。」(対象外)
- 「賞与は原則として支給する。ただし、業績によっては支給しないことがある。」(この記載だけで不支給にはならない)
いわゆる決算賞与だけの場合も対象外です。
昇給は客観的な昇給の基準が就業規則にあることが要ります。対象外の例として挙がっているのは次の規定です。
- 「会社が必要と判断した場合には、会社は、賃金の昇降給その他の改定を行う。」
転換後に試用期間を設けると、試用期間が終わった日の翌日が転換の日とみなされます。賃金の比較や申請期間もそこから数え直すので、見極めは非正規の期間のうちに済ませて転換後には試用期間を置かないようにします。
賃金3%以上増額の計算
転換後6か月の賃金を、転換前6か月の賃金より3%以上増やすことが条件です。比べる賃金は、基本給と定額で払っている諸手当を含めた総額です。原則は所定労働時間1時間あたりの賃金で比べます。転換の前後で所定労働時間が変わらずどちらも月給の場合は、6か月の総額で比べます。
次のものは、名前にかかわらず賃金の総額に含められません。
- 通勤手当、住宅手当、食事手当など実費を補う手当
- 歩合給、精皆勤手当、休日手当、時間外労働手当(固定残業代を含む)など、毎月変わる見込みのもの
- 一定期間だけ払う調整手当
- 賞与
固定残業代を減らした場合は、固定残業代を含めて比べても含めずに比べてもどちらでも3%以上増えている必要があります。令和8年10月1日以降に正社員転換をする場合は、企業型確定拠出年金の事業主掛金を賃金の比較に含めない扱いにするとパンフレットとQ&Aに書かれています。転換後の手当を比べる賃金に入れるには、その手当の決め方が就業規則か労働協約に書かれていることも要ります。
計算の例を2つ挙げます。
月給制で所定労働時間が変わらない場合を考えます。転換前の月給が基本給20万円と定額の職務手当2万円で計22万円なら、6か月の総額は132万円です。3%増は135万9,600円なので、転換後は月22万6,600円以上にします。基本給を20万7,000円に上げて職務手当2万円をそのまま払えば、月22万7,000円で条件を満たします。通勤手当はどちらにも含めません。
時給制のパートから月給制の正社員にする場合は、1時間あたりで比べます。転換前が時給1,250円なら、転換後は1時間あたり1,287.5円以上が必要です。正社員の所定労働時間が月160時間なら、比べる賃金は月20万6,000円以上になります。3%をぎりぎり超える額にすると端数や手当の扱い次第で下回ることがあるので、余裕を持たせた額にしておくことを勧めます。
正社員化コースの申請の流れと期限
正社員化コースの手続きは、リーフレットに書かれた次の順番で進みます。
- キャリアアップ計画を作って、転換の前日までに管轄の労働局に出す(労働組合などの意見を聴いて作る)
- 転換の規定が無ければ、就業規則などを改めて転換制度を規定する
- 就業規則などに基づいて正社員に転換する
- 転換後6か月分の賃金を払う(転換前6か月と比べて3%以上増やす)
- 6か月分の賃金を払った日の翌日から2か月以内に支給申請をする
- 重点支援対象者は、さらに6か月分(転換後12か月分)を払った日の翌日から2か月以内に第2期の支給申請をする
キャリアアップ計画は、転換の日の前日までに労働局に届いていないと受給できません。前日が土日祝日や年末年始に当たる場合は、その次の開庁日までです。パンフレットは、実施日の1か月前など余裕を持って出すよう勧めています。計画は事業所ごとに1つ作れば足り、労働者ごとに作る必要はありません。
キャリアアップ計画の作り方
キャリアアップ計画書は、有期雇用労働者等のキャリアアップの大まかな予定を書く書類です。対象者、目標、期間、目標のために会社が行う取り組みを、使うコースに沿って書きます。作るときの決まりは4つあります。
- 雇用保険の適用事業所ごとに、必要な知識と経験を持つ人をキャリアアップ管理者として決める
- 計画の期間を3年以上5年以内で定める
- 有期雇用労働者等を含めた事業所の全ての労働者の代表から意見を聴く
- 使うコース(正社員化コースなど)の取り組みを計画に書く
計画に書いていないコースの取り組みは助成の対象になりません。あとからコースを足すときは変更届が要ります。同じコースの中で取り組みの中身だけを変えるなら、変更届は要りません。5年の期間が終わったあとも続けるなら、変更届ではなく新しい計画書を出します。記入例はパンフレットの62ページに載っています。
スケジュールの例(4月1日に転換する場合)
パンフレットの例(月末締め・翌月15日払い)に、計画と就業規則の準備を足すと、次のような日程になります。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 転換の1か月前ごろ | キャリアアップ計画を労働局に出す(前日までに受理されていれば足りるが、パンフレットは1か月前など余裕を持つよう勧めている) |
| 転換の前日まで | 転換制度を就業規則に規定し、従業員に周知する(常時10人以上の事業場の労働基準監督署への届出は、発効後すみやかに。遅くとも支給申請まで) |
| 4月1日 | 就業規則の転換制度に基づいて正社員に転換する |
| 4月から9月 | 正社員としての賃金を払う(転換前6か月より3%以上多く) |
| 10月15日 | 6か月目の賃金を払う |
| 10月16日から12月15日 | 第1期の支給申請 |
| 翌年4月16日から6月15日 | 第2期の支給申請(重点支援対象者だけ) |
申請の期限は、賃金の締め日と支払日で決まります。パンフレットの例では、月末締め・翌月15日払いの会社が4月1日に転換すると6か月目の賃金の締め日が9月30日で、支払日が10月15日です。申請できるのは10月16日から12月15日までになります。2期目は翌年3月31日締め・4月15日払いの分のあと、翌年4月16日から6月15日までです。
残業代を翌月払いにしている会社では、6か月分の残業代を払った日が起点になります。勤務した日が11日未満の月は6か月に数えません。郵送のときは期限までに労働局に届いている必要があります。
申請先は事業所の所在地を管轄する都道府県労働局で、ハローワークを通じて出せる場合もあります。持参と郵送のほか、「雇用関係助成金ポータル」から電子申請もできます。
支給申請に必要な書類(第1期・第2期)
第1期の支給申請で出す書類は、パンフレットの「支給申請に必要な書類等」にまとまっています。申請書は次の5つです。
- キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号)
- 正社員化コース内訳(様式第3号・別添様式1-1)
- 正社員化コース対象労働者詳細(様式第3号・別添様式1-2)
- 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
- 支払方法・受取人住所届(口座を登録していないときや変えるときだけ)
添付書類は次のとおりです。
- 労働局長に受理されたキャリアアップ計画書の写し(変更届を出していれば変更届も)
- 転換前後の就業規則か労働協約の写し(転換の規定を新しく設けて加算を受けるなら、規定を設ける前の就業規則も)
- 対象労働者の転換前後の雇用契約書か労働条件通知書の写し
- 対象労働者が雇われた日付が分かる雇用契約書などの写し(無期雇用の人を転換する場合などは不要)
- 転換前6か月と転換後6か月の賃金台帳の写しと、3%以上の増額を示す計算書(賃金上昇要件確認ツールなど)
- 賃金台帳で出勤日数や労働時間が分からない場合は、出勤簿かタイムカードの写し
第2期では、第2期の分の賃金台帳の写しを出して、第1期と比べて合理的な理由なく賃金を下げていないことを示します。条件によって足す書類もあります。労働者の数で中小企業であることを示すなら事業所確認票(様式第4号)、多様な正社員に転換したならその雇用区分を定めた就業規則、母子家庭の母等を転換したなら児童扶養手当の書類などです。派遣労働者を直接雇ったなら労働者派遣契約書と派遣先管理台帳、代理人が申請するなら委任状の原本が要ります。
厚生労働省はパンフレットとは別に「支給申請チェックリスト」を出していて、取り組んだ日によって使う版が違います。書類をそろえる前に、転換した日に合った版を厚生労働省のページで選びます。手順と書類の詳しい中身は、キャリアアップ助成金 正社員化コースの記事とキャリアアップ助成金の記事で書いています。
正社員化コースで不支給・差し戻しになりやすい点
正社員化コースで不支給になる理由は、順番の間違いと就業規則の書き方に集中しています。パンフレットとリーフレットの記載から、つまずきやすい点を並べます。
- キャリアアップ計画を転換の日より後に出した、または計画にそのコースの取り組みを書いていなかった
- 就業規則に「個別の雇用契約書で定める」としか書かれておらず、正社員と非正規の賃金の違いが規定で確かめられない
- 転換後の正社員に、賞与か退職金、昇給のどちらかが適用されていない(賞与が「業績によっては支給することがある」の書き方)
- 転換後に試用期間を置いたため、転換の日がずれて賃金の比較や申請の期限が変わった
- 通勤手当や残業代を含めて3%を計算していて、除いて計算すると3%に届かなかった
- 正社員の求人で採用した人を、有期契約を挟んで正社員化した
- 6か月分の賃金を払った日の翌日から2か月の期限を過ぎた
- 転換の前後に、会社の都合で雇用保険の被保険者を辞めさせた
- 出勤簿や賃金台帳を、原本ではなく転記や加工したもので出した(不支給になる)
一度出した書類は、会社の都合で差し替えや訂正ができません。労働局が追加の書類や補正を求めて、指定した期日までに出さないと不支給になります。労働局は支給の決定にあたって、予告なく実地調査をすることもあります。
就業規則は従業員に周知した日に効力を持つので、発効と施行を同じ日付にするようパンフレットに書かれています。常時10人以上の事業場は労働基準監督署に届け出た就業規則が必要で、届け出るべき変更を申請日までに届け出ていないと原則として不支給になります。
新しく正社員を採用するときの助成金
外から新しく正社員を雇う場合は、雇い入れそのものを助成する制度を使います。多くはハローワークや一定の職業紹介事業者の紹介で雇うことが条件なので、求人はハローワークにも出しておきます。採用活動の費用を補う自治体の補助や、業種別の採用支援は採用の補助金・助成金の記事で取り上げています。
特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)
35歳から60歳未満で、正社員として雇われた経験が少ない人を正社員として雇う会社への助成です。令和7年4月に、就職氷河期世代安定雇用実現コースの要件を広げて新しく設けられました。
対象になるのは、雇い入れの日に次のすべてに当たる人をハローワーク等の紹介で正規雇用労働者として新しく雇う場合です。
- 雇い入れの日に35歳から60歳未満
- 雇い入れの前日から過去5年間に正社員として雇われた期間が通算1年以下
- 過去1年間に正社員として雇われた期間が無い(会社の都合の解雇で辞めた場合を除く)
- 紹介の時点で安定した職業に就いておらず、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている
- 正社員として雇われることを希望している
支給額は中小企業で60万円(30万円×2期)、大企業で50万円(25万円×2期)です。ここでいう正社員は期間の定めが無く、所定労働時間が週30時間以上の普通の正社員と同じで長期雇用を前提とした待遇が適用されている人です。週20時間以上30時間未満の短時間労働者は対象になりません。詳しくは中高年層安定雇用支援コースの記事にあります。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース):60歳以上を雇う場合
60歳以上の高年齢者や障害者、母子家庭の母等など就職が難しい人を、ハローワーク等の紹介で雇う会社への助成です。雇用保険の一般被保険者か高年齢被保険者として雇い、65歳以上になるまでかつ2年以上続けて雇うことが確実と認められることが条件です。
| 対象労働者 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 60歳以上・母子家庭の母等(週30時間以上) | 60万円(30万円×2期) | 50万円 |
| 重度障害者等を除く身体・知的障害者(週30時間以上) | 120万円(30万円×4期) | 50万円 |
| 重度障害者等(週30時間以上) | 240万円(40万円×6期) | 100万円 |
| 60歳以上・母子家庭の母等(週20時間以上30時間未満) | 40万円(20万円×2期) | 30万円 |
| 障害者(週20時間以上30時間未満) | 80万円(20万円×4期) | 30万円 |
60歳以上の人は令和8年5月1日以降、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている人に対象が絞られました。原則として、特定求職者雇用開発助成金の対象であることを明示した職業紹介を受けた場合だけ申請できます。60歳以上の人を雇う予定なら、紹介を受ける前にハローワークにこの助成金を使いたいと伝えておきます。
支給は6か月ごとの支給対象期に分けて行われ、1期ごとの額は、その期に対象の人の労働に払った賃金の額が上限です。最低賃金の減額の特例の許可を受けている場合は、払った賃金に助成率をかけた額になります。
このコースは正社員に限らず「継続して雇用する労働者」が対象です。正社員として雇えば正社員雇用の助成として使えます。令和8年4月以降の申請からは、添付書類として賃金台帳の提出が確認できないと不支給になります。詳しくは特定就職困難者コースの記事と特定求職者雇用開発助成金の記事にあります。
50歳以上で定年年齢に達していない有期契約の社員を無期雇用にする場合や、定年を65歳以上に引き上げる場合は、65歳超雇用推進助成金のコースが対象になります。
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
職業経験が足りないなどの理由で就職が難しい人を、無期雇用に移ることを前提に原則3か月試しに雇う会社への助成です。支給額は1人につき月最大4万円で、対象の人が母子家庭の母等か父子家庭の父の場合は月5万円です。雇い入れの日から1か月単位で最長3か月を対象に、まとめて1回で支給されます。
対象になるのはハローワーク等に求職を申し込んでいる人のうち、次のような人です。
- 紹介の日の前日から過去2年以内に2回以上離職や転職を繰り返している人
- 離職している期間が1年を超えている人
- 60歳未満で安定した職業に就いておらず、ハローワーク等で担当者制の個別支援を受けている人
- 生活保護受給者や母子家庭の母等など、就職の援助に特別な配慮が要る人 週の所定労働時間は普通の労働者と同じ30時間以上が条件で、生活保護受給者などは20時間以上です。
トライアル雇用は、正社員にする前に仕事との相性を確かめたいときの制度です。対象になるのは、週30時間以上の無期雇用で雇われることを希望している人です。詳しくはトライアル雇用助成金 一般コースの記事とトライアル雇用助成金の記事にあります。
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)
中途採用者の雇用管理制度を整えたうえで中途採用を増やし、雇い入れた人の賃金を前の職場より5%以上上げた会社への助成です。支給対象者1人につき20万円で、生産指標などで一定の成長性が認められる事業所にはさらに1人10万円が加わります。どちらも1事業所1年度あたり20人までです。
このコースは、ハローワークの紹介以外で雇った人も対象です。対象になるのは、期間の定めの無い労働者(パートタイムを除く)として中途採用で雇って雇用保険の一般被保険者か高年齢被保険者にした人です。中途採用計画には、中途採用者の雇用管理制度(募集と採用を除く、労働時間・休日、雇用契約の期間、評価・処遇の制度、福利厚生など)の整備と、中途採用を増やす期間(6か月間か1年間)を書きます。条件として中途採用計画を労働局に届け出たうえで、計画期間の中途採用率を前年同期より5ポイント以上上げるか、1年間の計画で中途採用率を50%以上にすることが要ります。雇い入れ後6か月の賃金を前の職場の賃金と賃金支払日ごとに比べて、いずれも5%以上上げる必要もあります。令和8年4月8日に支給要領と支給額が見直されています。詳しくは中途採用拡大コースの記事にあります。
東京都の正規雇用転換安定化支援助成金
東京都にはキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定を受けた中小企業が、正社員にした人の定着に取り組むと上乗せで出る助成金があります。東京都の報道発表では「正規雇用転換安定化支援助成金」という名前です。東京労働局管内に雇用保険の適用事業所があり、東京労働局から正社員化コースの支給決定を受けた中小企業等が対象です。
令和8年度の額は対象の労働者1人20万円(最大5人)です。退職金制度・結婚育児支援制度・介護支援制度の整備の加算(各10万円)と時間単価を60円以上上げる賃上げの加算(1人12万円・最大5人)が付いて、最大190万円になります。対象の労働者は、キャリアアップ助成金の対象者で令和5年4月1日以降に都内の事業所で正規雇用に転換した人です。
申請の受付は回ごとに分かれているので、受付の時期は東京都の正規雇用転換安定化支援助成金の記事と東京都の公式ページで確かめます。ほかの道府県や市町村にも、正社員化や新規雇用に独自の助成を出しているところがあります。下の全国の一覧で、自分の地域の制度を探せます。
正社員にしたあとに使える助成金
正社員化の前後で、処遇の改善や人材の育成にも別の助成金があります。どれもキャリアアップ計画などの事前の手続きが要るので、正社員化コースの計画を作るときに一緒に書いておくと手続きが一度で済みます。
キャリアアップ助成金には、正社員化のほかに4つの処遇改善のコースがあります。
| コース | 内容 | 中小企業の額 |
|---|---|---|
| 賃金規定等改定コース | 有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定して適用 | 1人4万円(3%以上4%未満)〜7万円(6%以上) |
| 賃金規定等共通化コース | 有期雇用労働者等と正社員に共通の賃金規定等を新たに規定・適用 | 1事業所60万円 |
| 賞与・退職金制度導入コース | 有期雇用労働者等を対象に賞与か退職金の制度を導入し、支給か積立てを実施 | 1事業所40万円(同時に導入すると16万8,000円の加算) |
| 短時間労働者労働時間延長支援コース | 新たに社会保険の適用になるときに、労働時間の延長などで収入を増やす | 1年目の取組で1人最大40万円(小規模企業は50万円) |
障害のある有期雇用労働者等を正社員にする場合は別の障害者正社員化コースがあり、重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期から正社員にすると中小企業で120万円です。
採用した人や正社員にする人の教育訓練には、人材開発支援助成金があります。人材育成支援コース・事業展開等リスキリング支援コース・人への投資促進コースの訓練を修了した非正規の人を正社員にすると正社員化コースで重点支援対象者のcに当たり、2期分の申請ができます。人材開発支援助成金の「訓練実施計画届」を紙で出すときに裏面の追加の項目を書くと、キャリアアップ計画を出したものとみなす扱いもあります。詳しくは人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の記事にあります。
個人事業主や小さな会社でも使えるか
個人事業主も従業員を雇って雇用保険の適用事業所になっていれば、キャリアアップ助成金の対象です。社会保険の適用事業所でない個人事業主が正社員に転換した場合は、社会保険の適用要件を満たす労働条件で雇っていることが条件です。民間の会社のほか公益法人やNPO法人、医療法人と社会福祉法人なども対象の事業主に含まれます。
従業員が10人未満で就業規則を作る義務の無い事業所でも、正社員化コースは使えます。この場合は労働基準監督署に届け出た就業規則か、事業主の氏名と労働者代表の氏名を書いた申立書を付けた就業規則が必要です。転換制度と正社員と非正規の賃金の違いを規定で示す必要があるのは、大きな会社と変わりません。
家族経営の事業所では、対象になる人に注意します。事業主や取締役の3親等以内の親族は正社員化コースの対象労働者になれないので、事業主の子や配偶者などをパートから正社員にしても助成は出ません。
ほかの助成金と併用できるか
同じ行為を対象に2つ以上の助成金を申請すると、一方しか支給されないことがあり、これを併給調整といいます。1人の正社員化に対して、国の別の助成金を重ねて受けることは基本的にできないと考えておきます。併給の可否は厚生労働省のホームページで確かめられるとパンフレットに書かれています。
別の行為なら組み合わせられます。正社員化コースで正社員にしたあと、同じ事業所で非正規の人の基本給の規定を3%以上上げる賃金規定等改定コースに取り組む形です。人材開発支援助成金で訓練をしてから正社員化コースで転換する組み合わせは、パンフレットが手続きの簡素化まで用意しています。東京都の正規雇用転換安定化支援助成金のように、国の正社員化コースの支給決定を前提にした自治体の上乗せもあります。
ただし特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コースなどを除く)や地域雇用開発助成金の支給対象になった有期雇用の人をあとで正社員にすると、正社員化コースでは無期からの区分(中小企業で40万円か20万円)になります。新規採用の助成と正社員化の助成を同じ人で続けて使う予定なら、どちらの額になるかを先に確かめます。
不正受給の罰則と、助成金の勧誘への注意
偽りや不正な方法で受けた助成金は、全額を返さなければなりません。厚生労働省のキャリアアップ助成金のページには全額の返還に加えて不正受給の日の翌日からの延滞金と、不正受給した額の2割に当たる額も納めると書かれています。不正受給の決定日から5年間は、ほかの雇用関係助成金も受けられません。公表の基準に当たると、事業主名や代表者名が公表されます。
パンフレットには返還の中身がもう少し細かく書かれています。支給の決定のあとに不正が分かった場合、受給した日の翌日から返し終わる日まで年3%の延滞金が付き、返還額の20%が違約金として請求されます。不正受給は企業名の公表や刑事告訴の対象になることもあります。
不正が無くても、支給のあとに会計検査院の検査を受けることがあります。検査に協力することに同意していないと受給できず、労働局に出した支給申請書と添付書類の写しは、支給が決まってから5年間保存しておく必要があります。
申請を代理人に任せていても事業主の名前で申請している以上、不正受給なら事業主も処分の対象です。申請代理人が不正に関わったり知っていて黙認したりした場合は、代理人にも返還の連帯債務が生じるとパンフレットにあります。
キャリアアップ助成金の「無料査定」などを書いた書面をFAXで一方的に送る業者や、電話でしつこく勧誘する業者の情報が寄せられているとパンフレットにあります。厚生労働省や労働局、ハローワークはそうした勧誘に関わっていません。「100%助成金が受けられます。」といううたい文句の勧誘もあるとされ、支給要件を満たさなければ受給できないと注意しています。
申請は事業主が自分で行えます。報酬を受けて申請書類の作成や提出の代行を業として行えるのは、社会保険労務士法で社会保険労務士に限られています。疑問点は管轄の労働局かハローワークに相談できます。ただしパンフレットによると労働局はコンサルティングや事前審査までは行っていません。働き方改革推進支援センターでは、労務管理の専門家がキャリアアップ助成金について無料で相談に応じています。
全国の雇用・採用の助成金一覧
募集中の雇用・採用の助成金を、国と都道府県ごとに並べています。正社員化や新規雇用への自治体独自の助成と人材確保の補助も載っていて、各制度の記事で対象と申請の流れを確かめられます。
