人材育成の助成金で最初に調べるのは、厚生労働省の人材開発支援助成金です。従業員に研修を受けさせたとき、受講料などの訓練経費と、訓練を受けている間の賃金の一部が戻ってきます。中小企業が人材育成支援コースで外部の研修に出す場合、経費の45%と、受講時間1時間につき800円が助成の基本の額です。
この助成金は7つのコースに分かれています。研修の種類で使うコースが決まるので、先に自社がやりたい研修を決めるのが近道です。新規事業やDXのための研修ならリスキリングのコース、社員が自分で選んだ講座の費用を会社が持つなら人への投資促進コースになります。
令和8年度は改正が重なりました。eラーニングの助成の上限が下がり、受講料の価格設定を説明する書類(疎明書)の提出が求められ、中高年齢者向けの訓練が新しく加わっています。この記事では仕組みと金額、対象の条件、期限を先に整理し、そのあとに自治体を含む助成金の一覧を載せました。
人材育成の助成金とは
「人材育成 助成金」で探している人の多くは、社員の研修費を会社の負担だけにしたくない事業主です。ここでは制度の全体像を先に押さえます。
人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金は、事業主が雇っている労働者に、仕事に関連する専門的な知識や技能を身に付けさせる訓練を計画に沿って行ったとき、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。厚生労働省が所管し、窓口は事業所の所在地を管轄する都道府県労働局で、都道府県によってはハローワークでも受け付けています。
財源は雇用保険料です。パンフレットには、雇用保険料で運営されているため受給資格が定められていると書かれています。要件を満たしているかどうかは、支給申請のあとに労働局が書類で審査します。
申請するのは事業主です。従業員本人が出す制度ではありません。従業員が自分で払う講座の費用に給付を出す制度は別にあり、個人向けの教育訓練給付制度の記事で扱っています。
人材育成に使える助成金の種類
「人材育成」の言葉で調べると、性格の違う制度が並んで出てきます。まず出す側と対象で整理します。
| 種類 | 出す側 | 向く場面 | 詳しく読む記事 |
|---|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 国(厚生労働省) | 社員の研修・訓練の経費と賃金を戻したい | この記事 |
| キャリアアップ助成金 | 国(厚生労働省) | 非正規雇用の人の正社員化や処遇の改善 | キャリアアップ助成金の記事 |
| リスキリングの補助 | 国・自治体 | 新規事業やDXに向けて学び直させたい | リスキリング補助金の記事 |
| 東京しごと財団のスキルアップ助成金など | 自治体・財団 | 都内の中小企業が短い研修を何度も受けさせたい | 後の章で説明します |
| 教育訓練給付制度 | 国(雇用保険) | 個人が自分で講座を受ける | 教育訓練給付制度の記事 |
この記事の中心は人材開発支援助成金です。上位の解説記事も、ほとんどがこの助成金のうち人材育成支援コースを説明しています。自治体の制度は、この記事の下の全国の一覧から探せます。
人材開発支援助成金の7つのコースと違い
厚生労働省のページには、人材開発支援助成金に7つのコースが並んでいます。研修の目的と対象者でコースが分かれています。
| コース | 助成の対象 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 人材育成支援 | 職務に関連する10時間以上の研修(OFF-JT)、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練 | 外部研修や社内研修で社員を育てる |
| 教育訓練休暇等付与 | 有給の教育訓練休暇制度を導入して社員が休暇を取って訓練を受けた場合 | 社員が学ぶための休暇制度をつくる |
| 人への投資促進 | 高度デジタル人材の訓練、大学院、定額制の研修サービス、社員が自発的に受ける訓練、長期の教育訓練休暇 | 社員に自分で学ばせて費用を会社が持つ |
| 事業展開等リスキリング支援 | 新規事業やDX・GXに伴って必要になる知識の訓練 | 事業の転換に合わせて人を育てる |
| 建設労働者認定訓練 | 認定職業訓練など建設関連の訓練 | 建設業で認定訓練を使う |
| 建設労働者技能実習 | 建設労働者に有給で受けさせる技能向上の実習 | 建設業で実習を行う |
| 障害者職業能力開発 | 障害者の能力開発のための教育訓練施設の設置・運営 | 令和6年4月から高齢・障害・求職者雇用支援機構が支給業務を担う |
厚生労働省のページは、このうち障害者職業能力開発コースを、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が支給業務を行う障害者雇用納付金制度の助成金へ移管したと説明しています。
人材育成支援コースと人への投資促進コースの違い
名前が似ていて迷いやすい2つのコースです。分かれ目は、訓練の中身と、誰が受講を決めるかにあります。
人材育成支援コースは、会社が業務命令で受けさせる職務関連の訓練が中心です。受講時間は10時間以上必要で、通学制や同時双方向のオンライン研修に加え、eラーニングと通信制も対象になります。
人への投資促進コースは、高度デジタル人材のための訓練や大学院、定額制(サブスクリプション型)の研修サービス、社員が自発的に受ける訓練、長期の教育訓練休暇制度が対象です。情報技術分野の実習併用職業訓練もこのコースに入ります。
パンフレットのフローチャートでは、業務命令で受けさせる訓練なら人材育成支援コース、定額受け放題の研修サービスなら人への投資促進コースの定額制訓練、事業展開やDXに伴う訓練なら事業展開等リスキリング支援コースという順に分かれます。迷ったら、研修の目的と受講を決める人を紙に書き出して、フローチャートに当てはめます。
コースごとの詳しい条件は、制度ごとの記事にまとめています。人材開発支援助成金の全体の記事、人材育成支援コースの記事、人への投資促進コースの記事、教育訓練休暇等付与コースの記事から進めます。
リスキリング・DXの研修は事業展開等リスキリング支援コース
新規事業の立ち上げやDX・GXのための研修は、事業展開等リスキリング支援コースが専用の窓口です。助成率は中小企業で経費の75%、賃金助成は1人1時間1,000円で、人材育成支援コースより厚くなっています。
注意するのは、令和8年8月3日からの変更です。DX化・GX化の訓練のうち、職業や職務に間接的に必要な知識を身に付ける内容や、職種を問わず職業人として共通して必要になる内容は助成の対象外になりました。厚生労働省のリーフレットには、生成AIで営業の提案書を作る方法を学ぶ営業担当者向けの訓練は特定の業務に直結するので対象になり、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練は対象外になる例が載っています。
このコースの詳細は事業展開等リスキリング支援コースの記事に、リスキリングの補助全体はリスキリング補助金の記事にあります。
建設業の人材育成
建設業には、専用の2つのコースがあります。建設労働者認定訓練コースは、認定職業訓練など建設関連の訓練の経費の一部と、有給で受けさせた間の賃金の一部が対象です。建設労働者技能実習コースは、雇っている建設労働者に技能向上の実習を有給で受けさせた場合の訓練経費と賃金の一部が対象です。
建設業の事業主でも、研修の内容によっては人材育成支援コースを使えます。コースによって助成の額と手続きが違うので、建設業の制度の記事で比べます。建設労働者技能実習コースの記事と建設労働者認定訓練コースの記事が入口です。
人材育成支援コースの金額はいくら
人材育成支援コースは4つの訓練メニューに分かれ、それぞれ助成の率と額が違います。厚生労働省の令和8年度版パンフレット(令和8年8月3日版)にある額は次のとおりです。括弧内は中小企業以外(大企業)の額で、中小企業かどうかは支給申請の時点の企業規模で判定します。
| 訓練メニュー | 経費助成率 | 賃金助成(1人1時間) | OJT実施助成(1人1コース) |
|---|---|---|---|
| 人材育成訓練(正規雇用労働者等) | 45%(30%) | 800円(400円) | なし |
| 人材育成訓練(有期契約労働者等) | 70% | 800円(400円) | なし |
| 認定実習併用職業訓練 | 45%(30%) | 800円(400円) | 20万円(11万円) |
| 有期実習型訓練(正社員化した場合) | 75% | 800円(400円) | 10万円(9万円) |
| 中高年齢者実習型訓練 | 60%(45%) | 800円(400円) | 10万円(9万円) |
賃金要件または資格等手当要件を満たすと、率と額が上乗せされます。人材育成訓練は経費助成率が15ポイント、賃金助成が1時間200円(大企業は100円)加わります。要件の中身は次の章で説明します。
eラーニングと通信制の訓練は、経費助成だけが対象で賃金助成は出ません。
経費助成の限度額と、年間の上限
経費助成には、1人が1つの訓練を受けたときの限度額があります。限度額は実際に訓練を受けた時間で決まります。
| 実訓練時間数 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 15万円 | 10万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
通常分と上乗せ分を合わせた額に、この限度額がかかります。専門実践教育訓練の指定講座の訓練は、一律で200時間以上の区分になります。
賃金助成の対象は、所定労働時間内に受講した時間だけです。1人1つの訓練あたり、通常は1,200時間、専門実践教育訓練は1,600時間が上限です。1人が1年度(4月から翌年3月)に支給申請できるのは3回までで、有期実習型訓練は同じ事業主が同じ労働者に対して1回までです。1事業所が1年度に受けられる助成の合計は1,000万円が限度です。
金額の計算例
中小企業が、正規雇用の社員3人に外部の研修を受けさせる場合を考えます。研修は受講料が1人20万円で、40時間、すべて所定労働時間内に受講するとします。
- 経費助成は20万円の45%で9万円です。40時間は「10時間以上100時間未満」の区分で限度額が15万円なので、9万円がそのまま出ます
- 賃金助成は800円×40時間で3万2,000円です
- 1人あたり12万2,000円、3人で36万6,000円になります
研修のあとに社員の賃金を5%以上上げる(賃金要件)と、経費助成率は60%に上がり、賃金助成は1時間1,000円になります。同じ研修では、経費助成が12万円、賃金助成が4万円で、1人あたり16万円です。経費助成の12万円は限度額の15万円以下なので、上乗せ分もそのまま出ます。上乗せ分は賃上げのあとに追加で申請して受け取るので、先に出る額は通常分の12万2,000円です。
限度額に当たる例も見ておきます。受講料が1人80万円で120時間の研修では、45%を掛けると36万円ですが、100時間以上200時間未満の限度額が30万円なので、経費助成は30万円で止まります。賃金助成は800円×120時間で9万6,000円です。賃金要件を満たして60%の48万円になっても、限度額の30万円を超える分は出ません。
大企業が同じ研修を受けさせると、経費助成率は30%、賃金助成は1時間400円です。受講料20万円・40時間なら、経費助成が6万円、賃金助成が1万6,000円で、1人あたり7万6,000円です。
有期契約の社員を対象にした人材育成訓練では、中小企業の経費助成率が70%です。受講料20万円・40時間なら、経費助成が14万円、賃金助成が3万2,000円で、1人あたり17万2,000円になります。
これらの例は、パンフレットの率と限度額から計算した目安です。実際の額は、研修の時間数や支払った経費、受講した社員の雇用区分で変わります。申請の前に、管轄の労働局に確かめます。
賃金要件・資格等手当要件とは
率と額が上がる条件が2つあります。どちらか一方を満たせば上乗せされます。
賃金要件は、訓練終了日の翌日から1年以内に、毎月決まって支払われる賃金を5%以上増やすことです。賃金を改める前の3か月と後の3か月の賃金総額を比べ、訓練を受けた全員が5%以上増えている必要があります。資格等手当要件は、資格手当などの支払いを就業規則等に決めたうえで、訓練終了日の翌日から1年以内に全員へ手当を払い、払う前後の3か月を比べて全員の賃金が3%以上増えていることです。毎月決まって支払われる賃金は、基本給と、役職手当など労働と直接関係する諸手当をいいます。時間外手当は含みません。
上乗せ分は、通常の支給申請とは別に、あとから追加で申請します。要件を満たす賃金を3か月続けて払った日の翌日から5か月以内に、上乗せ分だけを出します。労働局から申請時期の案内はないので、賃上げの時期は研修の計画と一緒に決め、期限の日付を控えておきます。
他のコースの金額
人材育成支援コース以外の主なコースの額を、令和8年度版パンフレットから整理します。
| コース・メニュー | 経費助成率 | 賃金助成(1人1時間) | その他 |
|---|---|---|---|
| 教育訓練休暇等付与 | なし | なし | 制度導入に30万円(賃金要件等を満たすと36万円) |
| 人への投資促進(高度デジタル人材訓練) | 75%(60%) | 1,000円(500円) | |
| 人への投資促進(成長分野等人材訓練) | 75% | 1,000円(国内の大学院を利用した場合) | |
| 人への投資促進(情報技術分野認定実習併用職業訓練) | 60%(45%) | 800円(400円) | OJT実施助成 20万円(11万円) |
| 人への投資促進(定額制訓練) | 60%(45%) | なし | |
| 人への投資促進(自発的職業能力開発訓練) | 45% | なし | |
| 人への投資促進(長期教育訓練休暇制度) | なし | 有給の休暇に1,000円(800円) | 制度導入に20万円 |
| 人への投資促進(教育訓練短時間勤務等制度) | なし | なし | 制度導入に20万円 |
| 事業展開等リスキリング支援 | 75%(60%) | 1,000円(500円) | 設備投資加算 導入費用の50% |
事業展開等リスキリング支援コースの設備投資加算は、中小企業のみが対象です。支給対象の労働者1人につき15万円が限度で、10人以上の場合は人数にかかわらず150万円までです。この加算は令和8年4月8日に新設されました。人への投資促進コースの長期教育訓練休暇制度には、令和8年4月8日から新規採用助成と職務代行助成が加わっています。リスキリング支援コースでは1事業所が1年度に受けられる助成の合計は1億円が限度です。
教育訓練休暇等付与コースは、制度を導入して実際に使った事業主に出す助成です。休暇制度は、3年間で5日以上取れる有給の休暇を設ける必要があります。
制度の金額が一目で分かる額は、コースの記事で確かめるのが確実です。最終的な支給額は、パンフレットに書かれた計算の規則に沿って労働局が決めます。
対象になる事業主と社員
どのコースにも共通する前提と、人材育成支援コースの主な条件です。細かい要件はコースごとに違うので、申請するコースのパンフレットで確かめます。
事業主の条件
人材育成支援コースの支給対象事業主には、次の条件があります。
- 雇用保険の適用事業所(雇用保険に入っている従業員がいる事業所)の事業主であること
- 職業能力開発推進者(研修や人事の担当課長などから選ぶ、従業員の能力開発を進める担当者)を選任していること
- 労働組合等の意見を聴いて事業内職業能力開発計画(会社の人材育成の方針や目標を書いた計画)を作り、従業員に周知していること
- 計画に基づいた職業訓練実施計画届を作り、従業員に周知していること
- 従業員に定期的なキャリアコンサルティングを行うことを、労働協約・就業規則・事業内職業能力開発計画のいずれかに、対象の時期を示して定めていること
- 訓練期間中も、受講する従業員に賃金を適正に支払っていること
職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定は、職業訓練実施計画届を出すまでに済ませます。キャリアコンサルティングを行う人は国家資格者に限らず、労務・人事の担当部課長でもかまいません。費用は事業主が全額負担します。有期実習型訓練には、事業内職業能力開発計画の要件も、キャリアコンサルティングの定めの要件もありません。厚生労働省のパンフレットには計画の記載例があり、人材育成の基本方針の例として、全社員に管理職がキャリアコンサルティングを入社から3年ごとに行う、といった内容が載っています。
雇用保険料の納付と離職の状況にも条件があります。基準期間(計画届を出す日の前日から6か月前の日から、支給申請書を出す日まで)に、事業所で雇う被保険者を解雇など事業主の都合で離職させた事業主は対象外です。基準期間に特定受給資格者(倒産や解雇などで離職した人)として受給資格が決まった人の数が、支給申請の日の被保険者数の6%を超える事業主も対象外です。ただし、その人数が3人以下なら除かれます。
中小企業の範囲
助成率と額は、中小企業かどうかで変わります。判断は主たる事業ごとに、資本金か常時雇用する労働者数のどちらか一方で行います。
| 主たる事業 | 資本金の額または出資の総額 | 企業全体で常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
個人事業主や医療法人、社会福祉法人のように資本金を持たない事業主は、労働者数で判断します。判断は支給申請の時点の内容で行います。
対象になる社員
訓練を受ける人は、雇用保険の被保険者である必要があります。正社員に限らず、パートやアルバイトでも雇用保険に入っていれば対象になります。受講する社員は、職業訓練実施計画届に添える「対象労働者一覧」に載せた人だけです。
通学制や同時双方向型の通信訓練の場合は、実際の訓練時間の8割以上を受講した人が対象になります。eラーニングと通信制では、訓練期間中に訓練を修了した人です。
中高年齢者実習型訓練の対象は、訓練開始日に45歳以上の被保険者です。認定実習併用職業訓練では、訓練開始日に15歳以上45歳未満の人が対象になります。有期実習型訓練は、有期契約労働者等を正社員に転換するための訓練です。
対象になる訓練と、ならない訓練
人材育成訓練として認められるのは、職務に関連した専門的な知識や技能を身に付けさせる訓練です。10時間以上のOFF-JT(通常の業務とは別に行う研修)が必要です。
OJT(実際の業務を通じた訓練)と区別して考えます。厚生労働省のパンフレットは、パソコン操作で顧客への礼状を作るのはOJT、練習用の文書を作るのはOFF-JTという例を出しています。美容室では、お客様に施術するのがOJT、モデル用のウイッグに施術するのがOFF-JTです。
訓練の実施方法は、通学制、同時双方向型の通信訓練、eラーニング、通信制のどれかです。通学制と同時双方向型は、1コースの実訓練時間数が計画届を出す時点と支給申請の時点でどちらも10時間以上必要です。eラーニングと通信制は、1コースの標準学習時間が10時間以上か、標準学習期間が1か月以上であることが要件です。
訓練は、事業主が自分で運営する事業内訓練か、教育訓練機関に任せる事業外訓練のどちらかです。
対象になる経費
事業外訓練では、受講に必要な入学料、受講料、教科書代で、あらかじめ受講案内に定められているものが対象です。そのほか、パンフレットの「その他対象となる経費」に、消費税、技能検定などの職業能力検定に要した経費、キャリアコンサルタントが実施するキャリアコンサルティングの費用が載っています。これらは対象になります。
対象にならない経費の例は次のとおりです。
- 受講する人の旅費や宿泊費など、訓練に直接かからないもの
- 申請事業主と密接な関係にある教育訓練機関への受講料(代表者や従業員が代表を務める機関、親会社・子会社など)
- 官庁が主催する訓練や、都道府県の職業能力開発施設が行う訓練の受講料
事業内訓練では、部外講師の旅費・宿泊費のうち上限を超えるもの、車代、食費、コンサルタント料に当たるものが対象外です。eラーニングによる訓練の経費も、事業内訓練では対象になりません。繰り返し使える教材(ソフトウェアや学習ビデオ)と、生産ラインなどで汎用的に使うもの(パソコンなど)も対象外です。
受講料が高すぎると差額が出ない
令和8年度に特に注意が必要なのは、受講料の設定です。助成の対象になる経費でも、受講料が他の講座と比べて著しく高く、合理的な理由がない場合、差額は支給対象になりません。
厚生労働省のパンフレットには、助成金を申請する事業主の受講料は30万円で、申請しない事業主は10万円という価格設定をしていれば、差額の20万円分は対象外になる例が載っています。通常30万円の受講料で、助成金が不支給になった場合に訓練機関が20万円を返金する約束をしている場合も同じです。
実質的な負担が減る返金やクーポンも同様です。申請事業主が教育訓練機関から、訓練経費の全部または一部について、実質的に負担が減る金銭の支払いを受けた場合や受ける予定がある場合は、経費を全額負担したことにならず、助成の対象外になります。
令和8年度の改正点
厚生労働省のページは、令和8年度に何回か制度を改めています。人材育成の助成金で押さえるのは次の点です。
| 時期 | 改正の内容 |
|---|---|
| 令和8年4月8日 | 人材育成支援コースに中高年齢者実習型訓練を新設(訓練開始日に45歳以上の被保険者が対象) |
| 令和8年4月8日 | 人への投資促進コースに新規採用助成と職務代行助成を追加 |
| 令和8年4月8日 | 事業展開等リスキリング支援コースに設備投資加算を新設 |
| 令和8年4月8日 | eラーニングと通信制の訓練の、1人1訓練あたりの経費助成の上限を中小企業15万円・大企業10万円に見直し(見直し前は30万円・20万円) |
| 令和8年5月14日 | 受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)の提出が必要に(支給要領の改正) |
| 令和8年8月3日 | リスキリング支援コースで、eラーニングの訓練は同じ労働者について1年度に1回まで |
| 令和8年8月3日 | 令和8年8月3日以降の支給申請で、様式第8-3号(eラーニング訓練実施結果報告書)は改正後の様式を使用 |
| 令和8年8月3日 | 不正受給の公表に関する特例を新設(令和8年8月3日以降の支給申請から適用) |
受講料等の価格設定に関する疎明書
令和8年5月14日の支給要領の改正で、計画届を出した時期にかかわらず、次のどちらかに当たる訓練は、疎明書(様式第28号)の提出が必要になりました。令和8年5月14日の時点でまだ支給申請をしていないものと、支給申請は済んでいるが支給決定も不支給決定もされていないものです。
これから支給申請をする事業主は、疎明書を支給申請書と一緒に出します。すでに支給申請を済ませた事業主には、対象になる場合に管轄の労働局が追加提出の案内をします。疎明書の様式は厚生労働省のページから取れます。
疎明書で何を説明するのか、様式の記載例はこの記事では扱いません。パンフレットの価格設定の注意書き(前の章の説明)に当たる内容を、訓練機関と一緒に整理しておくのが先です。
経過措置と、自主申告のこと
事業展開等リスキリング支援コースで、令和8年4月1日以降の様式の計画届を令和8年8月3日以降に出した場合でも、経過措置が適用されるなら従前の支給要領が使われます。事業内訓練で経過措置を受けるときは、契約や発注の日が分かる書類を、電子申請の計画届の画面の「その他管轄労働局長が必要と認める書類」の欄に添付します。
不正受給の特例も押さえます。令和8年8月3日以降の支給申請で不正が認められた場合、支給決定の前でも、自主申告をしていなければ原則として事業主名が公表されます。パンフレットには、支給決定取消や不支給決定に係る申請額の合計が100万円未満の場合について、事業主が不正受給に関与していないことが明らかなときを除く、という注記があります。例外に当たるかどうかは、労働局に確かめます。
期限の目安
申請の詳しい手順は、コースごとの記事にあります。ここでは外せない期限だけを3つ書きます。
- 職業訓練実施計画届は、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に、労働局へ出します
- 訓練に係る費用は、支給申請までに支払い終えます
- 支給申請は、訓練の実施期間の最終日の翌日から2か月以内に、労働局へ出します
計画届の提出期間は、訓練開始日が7月1日なら1月1日から6月1日まで、9月30日なら3月30日から8月30日までのように、開始日から数えて決まります。提出期限が土日や休日にあたる場合は、翌開庁日が期限です。窓口への持参、郵送、電子申請のどれでも出せますが、郵送は書類が労働局に届いた日が提出日で、消印有効ではありません。電子申請を使うにはGビズIDが必要です。
訓練の途中で従業員が自己都合で辞めて訓練を中止したときは、中止した日の翌日から申請できます。その場合も、最終的な期限は訓練終了日の翌日から2か月以内で変わりません。訓練期間が6か月を超える通学制の訓練は、6か月ごとに区切って分割して申請する方法もあります。
支給が決まるまでの日数は、パンフレットに書かれていませんでした。審査には時間を要する、という説明のみです。入金の時期を決めて資金繰りを組む場合は、訓練経費と賃金を先に会社が払う前提で考えます。
人材育成の助成金の代表的な金額
国の制度と、上限の大きい都道府県の制度を上限額で比べた表です(制度名を押すと下の全国一覧のその制度へ移ります)。
